DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 9 ~ 赤錆びたガンスミス ~ 15
ウエスタン小説、第15話。
急転直下。
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15.
一同の間に安心感が漂い始めたところで、エミルが背伸びをしつつ、アデルに尋ねる。
「何だか疲れがドッと出た感じだし、サルーンにでも行ってご飯食べない?」
「ああ、そうだな。俺も何だかんだ言って、頭がフラフラしてるんだ」
「致命傷じゃないとは言え、結構血が出たものね」
「ってことだからダン、俺たちちょっとメシ食いに行ってくるけど、いいか?」
アデルにそう頼まれ、ダンは快くうなずいた。
「ああ。どっちみち、そろそろ交代で休憩って体制にしようかって考えてたところだ。
あんたたちと、それからハリー、スコット、……あと俺も行くか。先に2時間、休憩に入ろう。で、残りで順々に休憩回すって形で」
「ありがとよ」
アデルは左腕を挙げ、そのままエミルとロバート、ダン、そして名前を呼ばれた局員2人を連れて小屋を離れた。
そして、2時間後――。
「戻ったぜ、……!?」
帰って来た6人が、小屋に入るなり硬直した。
「……なんだ、こりゃ」
信じられないと言いたげな声色で、ダンがつぶやく。
小屋の中にいた、アデルやダンたちを除く局員16名が全て、血まみれの死体になって転がっていたからだ。
いや――。
「だ、……ダン、……ぶ、じ、だったか」
まだ息のある者が数名残っていることに気付き、アデルたちは慌てて手当てを試みた。
それでも生き残ったのはわずか4名だけとなっており、さらには――。
「……ローも殺されてる。それにディミトリがいない。トリスタンもだ。
一体ここで、何があったんだ?」
ダンの問いかけに、どうにか息を吹き返した局員の一人が、弱々しく答えた。
「あんたたちが、休憩に入って、1時間、くらい、後かな……。
縛ってたはずの、トリスタンの、様子を見に行った、ライアンが、叫び声、挙げてさ。何だって思って、銃持って、部屋に入ったら、トリスタンの奴が、立ってたんだ。
床にはライアンが、首折られた、状態になって、倒れてた。やばいと、思ったんだ、けど、全員で撃てば、抑えられるって、思って。
でもあいつ、俺たちに飛び掛かって、誰かの銃、奪って、その場で乱れ撃ち、しやがったんだ。それでほとんど、死んだ。俺も撃たれた。
俺たちを倒した、トリスタンは、そのまま隣の部屋、行って、その後、銃声が3、4回、したんだ。見てないけど、多分、ローを、撃ったんだ。
その時、トリスタンが、しゃべってた、って言うか、怒鳴ってた。『貴様は何の役にも立たぬ』、『生きる価値の無いゴミめ』とか何とか。返事、無かったし、もう、その時点で、多分、ローは、死んでたんだろう」
「……そうか」
ダンは帽子を深く被り、局員の肩をとん、とんと軽く叩く。
「死ぬんじゃねえぞ、フランク。死んだら許さねえからな」
「分かってる、分かってるさ、ダン。俺が、こんなところで、くたばるかってんだ」
一方、アデルたちはトリスタンがいた部屋に戻り、床に散らばった鋼線や鎖を調べていた。
「流石に引きちぎったような感じじゃない。となると、ディミトリが解いたのか?」
「あいつだって縛られてたのに、んなことできやしないっスよ」
「じゃあ、一体誰が……?」
と、エミルが鋼線を手に取り、ぐにぐにと曲げたり、伸ばしたりしつつ、忌々しげにつぶやく。
「あのクソ野郎、気絶したフリしてたのね」
「何だって?」
目を丸くしたアデルに、エミルは鋼線を見せる。
「何本か、変にたわんだ跡が付いてる。鎖にも血や、手の皮が付いてるところがあるわ。
縛られる時、隙を伺って一部を握り込んでたのよ」
「なるほどな。縛られた後で握った部分を離せば、鎖だろうが鋼線だろうが、勝手に緩むってわけか。……くそッ」
アデルは床の鎖を蹴り、苛立たしげに叫んだ。
「これで結局、俺たちはA州くんだりまで出張って、十数名も死人を出しただけで終わったってわけか、畜生!」
「ええ。『証拠品』も消えてる。トリスタンにとっては、被害は利用価値の無くなったスパイを失っただけ。
あたしたちの、完敗よ」
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急転直下。
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15.
一同の間に安心感が漂い始めたところで、エミルが背伸びをしつつ、アデルに尋ねる。
「何だか疲れがドッと出た感じだし、サルーンにでも行ってご飯食べない?」
「ああ、そうだな。俺も何だかんだ言って、頭がフラフラしてるんだ」
「致命傷じゃないとは言え、結構血が出たものね」
「ってことだからダン、俺たちちょっとメシ食いに行ってくるけど、いいか?」
アデルにそう頼まれ、ダンは快くうなずいた。
「ああ。どっちみち、そろそろ交代で休憩って体制にしようかって考えてたところだ。
あんたたちと、それからハリー、スコット、……あと俺も行くか。先に2時間、休憩に入ろう。で、残りで順々に休憩回すって形で」
「ありがとよ」
アデルは左腕を挙げ、そのままエミルとロバート、ダン、そして名前を呼ばれた局員2人を連れて小屋を離れた。
そして、2時間後――。
「戻ったぜ、……!?」
帰って来た6人が、小屋に入るなり硬直した。
「……なんだ、こりゃ」
信じられないと言いたげな声色で、ダンがつぶやく。
小屋の中にいた、アデルやダンたちを除く局員16名が全て、血まみれの死体になって転がっていたからだ。
いや――。
「だ、……ダン、……ぶ、じ、だったか」
まだ息のある者が数名残っていることに気付き、アデルたちは慌てて手当てを試みた。
それでも生き残ったのはわずか4名だけとなっており、さらには――。
「……ローも殺されてる。それにディミトリがいない。トリスタンもだ。
一体ここで、何があったんだ?」
ダンの問いかけに、どうにか息を吹き返した局員の一人が、弱々しく答えた。
「あんたたちが、休憩に入って、1時間、くらい、後かな……。
縛ってたはずの、トリスタンの、様子を見に行った、ライアンが、叫び声、挙げてさ。何だって思って、銃持って、部屋に入ったら、トリスタンの奴が、立ってたんだ。
床にはライアンが、首折られた、状態になって、倒れてた。やばいと、思ったんだ、けど、全員で撃てば、抑えられるって、思って。
でもあいつ、俺たちに飛び掛かって、誰かの銃、奪って、その場で乱れ撃ち、しやがったんだ。それでほとんど、死んだ。俺も撃たれた。
俺たちを倒した、トリスタンは、そのまま隣の部屋、行って、その後、銃声が3、4回、したんだ。見てないけど、多分、ローを、撃ったんだ。
その時、トリスタンが、しゃべってた、って言うか、怒鳴ってた。『貴様は何の役にも立たぬ』、『生きる価値の無いゴミめ』とか何とか。返事、無かったし、もう、その時点で、多分、ローは、死んでたんだろう」
「……そうか」
ダンは帽子を深く被り、局員の肩をとん、とんと軽く叩く。
「死ぬんじゃねえぞ、フランク。死んだら許さねえからな」
「分かってる、分かってるさ、ダン。俺が、こんなところで、くたばるかってんだ」
一方、アデルたちはトリスタンがいた部屋に戻り、床に散らばった鋼線や鎖を調べていた。
「流石に引きちぎったような感じじゃない。となると、ディミトリが解いたのか?」
「あいつだって縛られてたのに、んなことできやしないっスよ」
「じゃあ、一体誰が……?」
と、エミルが鋼線を手に取り、ぐにぐにと曲げたり、伸ばしたりしつつ、忌々しげにつぶやく。
「あのクソ野郎、気絶したフリしてたのね」
「何だって?」
目を丸くしたアデルに、エミルは鋼線を見せる。
「何本か、変にたわんだ跡が付いてる。鎖にも血や、手の皮が付いてるところがあるわ。
縛られる時、隙を伺って一部を握り込んでたのよ」
「なるほどな。縛られた後で握った部分を離せば、鎖だろうが鋼線だろうが、勝手に緩むってわけか。……くそッ」
アデルは床の鎖を蹴り、苛立たしげに叫んだ。
「これで結局、俺たちはA州くんだりまで出張って、十数名も死人を出しただけで終わったってわけか、畜生!」
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