「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第3部
琥珀暁・陥港伝 3
神様たちの話、第83話。
異邦人との接触。
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3.
尉官たち4人は街の外壁側まで移動し、尉官と他2人を足がかりにして、マリアに壁をよじ登らせた。
「どうだ、マリア?」
尋ねた尉官に、マリアがぴょん、と壁から離れ、慌てた顔で答えた。
「まずいっぽいですよ、尉官。街の人たち、縛られて囲まれてます」
「縛られ、……何? 縛られてる?」
「後、変な人たちがいます。いえ、短耳の人とか長耳の人たちもちょこっといるんですけど、何て言うか、うーん、変な耳の人たちがいるなーって」
「変な耳? どう言う意味だ?」
尉官に尋ねられ、マリアは自分の尻尾をぐにぐにと揉みながら、困惑した表情でしどろもどろに伝える。
「あのですね、えーと、ほら、山の南の人たちって、狐っぽいって言うか、あたしみたいな猫獣人とか狼獣人の人たちと、ちょっと違う毛並みの人、いるじゃないですか? でも『狼』の人と『狐』の人って、ほら、あの、尻尾の大きさとか、耳のふさふさ感とか、結構似てたりしますよね? でも、あの、中にいる人、あの、街の人を包囲してる人たちがですね、なーんか、そう言うのと全然違うって言うか、丸っぽかったりちょこっとひねりがある感じだったりって言うか、……うーん、尉官が自分で見た方が早いと思いますよ」
「俺もそう思う。ビート、シェロ、手を貸してくれ」
「了解」「っス」
マリアの説明が全く要領を得なかったため、今度は尉官が壁を登る。
「よっこいしょ、……っと」
慎重に壁の上へ乗り、尉官は街の様子を確認する。
(……なるほど。確かにマリアの言う通りだ。何だあれ?)
街の者たちらしき人間を、毛皮を羽織った者たちが武器を手にし、取り囲んでいるのが見える。
そしてその者たちの半分は短耳や長耳と言った、尉官たちにも馴染みのある人種だったものの、残り半分は、猫耳に丸みを持たせたようなものや、もっと丸に近い耳を有していた。
(うーん……、何だっけ? 丸い方の耳って……、例えば、……そうだな、熊? とかそう言う感じの奴だな。
後、……猫っぽい感じの耳、あれは、……そうだな、こっちは何と言うか、南で見たアレだ。そう、虎って言ってたっけか。尻尾も太いし、縞々だし、似てるな)
尉官は壁から降り、残りの2人にも見るよう促す。
2人がよじ登るのを助けつつ、尉官はマリアと意見を交わした。
「確かに見たことの無い人種だな。着てる服も妙だ」
「ですよねー……? 武器持ってましたけど、あたしたちみたいな軍人と、何か違う感じもしますし」
「軍人らしさはあると言えば、ある。茶色い熊耳の、2メートルありそうなデカい奴が上官で、囲んでる奴らが部下って具合だろう」
「でも尉官、あの人たちが軍人だとして、どうしてこの街を封鎖してるんでしょう? 軍から何か通達とかありましたっけ?」
「軍とは言ったが、『俺たちの』軍じゃ無いのかも知れない。陛下の影響下に無い、……例えば山の南とかに本拠地がある奴らなのかも」
「でもあの格好、相当ぬくぬくしてそうですよ。あたし行ったこと無いですけど、山の南って結構暑いんでしょ?」
「となると、こっち側か。……いや、それでもこの季節にあの格好は暑すぎる。もう5月だしな」
「よっぽど寒がりとか?」
「あいつら全員がか?」
話が世間話じみてきたところで、残り2人も壁から降りてくる。
「確認しました。僕の意見としては、片方は熊って感じですね」
「ビートもそう思うか。シェロは?」
「俺も同意見っス。熊獣人ってコトになるんスかね。もう片っぽは、猫っぽいような違うようなって感じっスけど。
でもあんな奴ら、初めて見たような……」
「そうだな、そこが一番の疑問だ。
お前ら、あんな人種を見たことがあるか? 俺はまったく無い」
尉官に尋ねられ、3人は揃って首を横に振った。
「同じく」「全然っス」「僕もです」
3人の反応を見て、尉官は腕を組んでうなる。
「とりあえず現状での情報を整理すると、だ。『服も毛並みも見たこと無い奴らがこの街を制圧している』、となるな。
うーん……、どうするかな」
尉官は壁に手を当て、もう一度うなった。
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異邦人との接触。
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3.
尉官たち4人は街の外壁側まで移動し、尉官と他2人を足がかりにして、マリアに壁をよじ登らせた。
「どうだ、マリア?」
尋ねた尉官に、マリアがぴょん、と壁から離れ、慌てた顔で答えた。
「まずいっぽいですよ、尉官。街の人たち、縛られて囲まれてます」
「縛られ、……何? 縛られてる?」
「後、変な人たちがいます。いえ、短耳の人とか長耳の人たちもちょこっといるんですけど、何て言うか、うーん、変な耳の人たちがいるなーって」
「変な耳? どう言う意味だ?」
尉官に尋ねられ、マリアは自分の尻尾をぐにぐにと揉みながら、困惑した表情でしどろもどろに伝える。
「あのですね、えーと、ほら、山の南の人たちって、狐っぽいって言うか、あたしみたいな猫獣人とか狼獣人の人たちと、ちょっと違う毛並みの人、いるじゃないですか? でも『狼』の人と『狐』の人って、ほら、あの、尻尾の大きさとか、耳のふさふさ感とか、結構似てたりしますよね? でも、あの、中にいる人、あの、街の人を包囲してる人たちがですね、なーんか、そう言うのと全然違うって言うか、丸っぽかったりちょこっとひねりがある感じだったりって言うか、……うーん、尉官が自分で見た方が早いと思いますよ」
「俺もそう思う。ビート、シェロ、手を貸してくれ」
「了解」「っス」
マリアの説明が全く要領を得なかったため、今度は尉官が壁を登る。
「よっこいしょ、……っと」
慎重に壁の上へ乗り、尉官は街の様子を確認する。
(……なるほど。確かにマリアの言う通りだ。何だあれ?)
街の者たちらしき人間を、毛皮を羽織った者たちが武器を手にし、取り囲んでいるのが見える。
そしてその者たちの半分は短耳や長耳と言った、尉官たちにも馴染みのある人種だったものの、残り半分は、猫耳に丸みを持たせたようなものや、もっと丸に近い耳を有していた。
(うーん……、何だっけ? 丸い方の耳って……、例えば、……そうだな、熊? とかそう言う感じの奴だな。
後、……猫っぽい感じの耳、あれは、……そうだな、こっちは何と言うか、南で見たアレだ。そう、虎って言ってたっけか。尻尾も太いし、縞々だし、似てるな)
尉官は壁から降り、残りの2人にも見るよう促す。
2人がよじ登るのを助けつつ、尉官はマリアと意見を交わした。
「確かに見たことの無い人種だな。着てる服も妙だ」
「ですよねー……? 武器持ってましたけど、あたしたちみたいな軍人と、何か違う感じもしますし」
「軍人らしさはあると言えば、ある。茶色い熊耳の、2メートルありそうなデカい奴が上官で、囲んでる奴らが部下って具合だろう」
「でも尉官、あの人たちが軍人だとして、どうしてこの街を封鎖してるんでしょう? 軍から何か通達とかありましたっけ?」
「軍とは言ったが、『俺たちの』軍じゃ無いのかも知れない。陛下の影響下に無い、……例えば山の南とかに本拠地がある奴らなのかも」
「でもあの格好、相当ぬくぬくしてそうですよ。あたし行ったこと無いですけど、山の南って結構暑いんでしょ?」
「となると、こっち側か。……いや、それでもこの季節にあの格好は暑すぎる。もう5月だしな」
「よっぽど寒がりとか?」
「あいつら全員がか?」
話が世間話じみてきたところで、残り2人も壁から降りてくる。
「確認しました。僕の意見としては、片方は熊って感じですね」
「ビートもそう思うか。シェロは?」
「俺も同意見っス。熊獣人ってコトになるんスかね。もう片っぽは、猫っぽいような違うようなって感じっスけど。
でもあんな奴ら、初めて見たような……」
「そうだな、そこが一番の疑問だ。
お前ら、あんな人種を見たことがあるか? 俺はまったく無い」
尉官に尋ねられ、3人は揃って首を横に振った。
「同じく」「全然っス」「僕もです」
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