「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第3部
琥珀暁・陥港伝 4
神様たちの話、第84話。
町民救出作戦。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
4.
マリアがびしっと手を挙げ、主張する。
「決まってます! 町の人たちを助けてあげないと!」
「それは勿論、そうだ。見捨てるなんて選択は絶対無い。だけどな、マリア」
尉官は壁にもたれ掛かり、マリアを諭す。
「壁の上からざっくり見た情報だけでも、敵の数は4~50人ってところだ。しかも全員武装してるし、明らかに俺たちよりデカい。
対する俺たちは4人。しかも持ってる武器は俺が剣1本と、ナイフ1本。ビートが魔杖1本とナイフ1本。シェロも剣だけ。お前だって槍だけだろ? さらに言えば、防具は無し。
これじゃ真っ向から行っても返り討ちだ。どう考えても勝ち目は無い」
「でも、だからって……」
反論しかけるマリアに、今度はビートが答える。
「尉官が言いたいのは、助けないってことじゃなくて、僕たちが現状でできるのは何かってことですよ。
僕たちの総力じゃ敵を全滅だとか追い払うだとか、そう言うのは絶対無理です。現状でできそうなのは、町民を救出することくらいだと」
「ビートの言う通りだ。
軍本営に連絡して応援をよこしてもらうって方法もあるが、1日や2日じゃ援軍は来られない。その間に町民が何らかの危険に晒される可能性もある。
俺たち4人で、今すぐ救出する。そのためにはまず、俺たちに何ができるのか考えよう」
尉官たちは輪になり、作戦を考える。
「正門は閉まってた。恐らく裏には敵がいるだろう」
「どーにかして倒せないっスかね?」
そう提案するシェロに、マリアが肩をすくめる。
「あの体格でしょ? 4人で不意を突けば1人くらい行けるかも知れないけど、正門守ってるってなると、多分2人か3人はいるだろーし」
「それに1人、2人なら壁を越えられるでしょうけど、4人全員でとなると、道具が必要ですね」
ビートの意見を受け、尉官がこう返す。
「まず身軽な奴2人で街の中に入って、どこかではしごなり何なり調達して、残り2人も入れる、って流れになるな」
「入ったとして、その後どうします?」
「町民を助けるとなると、正門の突破は必須だ。子供や老人もいるだろうから、全員壁を越えさせるのは無理だろうし」
「やっぱ倒さなきゃダメですかー……」
げんなりした顔をするマリアに、尉官も頭を抱える。
「かなり難易度が高いな。……まあ、でも、そうだな。町民を助ければ、突破できるかも」
「なるほど。ノースポートは100人近く住民がいると聞きますし、数で押すわけですね」
「それもあるし、軍や、その前身の自警団や討伐隊なんかに属してた人たちが結構移住してるって話も聞く。
今は囚われてるとは言え、解放すれば少なからず助けになってくれるだろう」
「でも尉官、どうやって町の人たちを助けるんですか?」
マリアにそう言われ、尉官はもう一度頭を抱える。
「……そこだよな」
「真っ向からはまず無理、ってコトは、やっぱこっちも不意を突く感じになるっスよね」
「ああ。包囲してる奴ら全員の気を引いて、その隙に町民を広場から連れ出す。後は態勢を整えて、正門を突破する。……ってのが妥当だろう」
「どうやって気を引くんです?」
「うーん……、現状じゃこれと言って、いい案は無いな。
だが街中なら何かしら、陽動に使えそうなものもあるだろう。その辺りは街に入ってから考えた方がいい」
尉官は立ち上がり、壁に目を向ける。
「じゃあ、先に街へ入るのは誰にするか、だが。1人は確定だな」
尉官の言葉に、ビートとシェロが揃ってマリアに目を向ける。
「ですよねー」
マリアも猫耳をポリポリとかきつつ、肯定する。
「後一人はどうします? 尉官たち3人の中だと、ビートが一番体重軽いですよね」
「じゃあ、僕が……」「いや」
応じかけたビートを、尉官が制する。
「身軽なのはいいが、戦力面で問題だ。あんなのに囲まれたら、魔術を使う間も無い。マリアだって槍の名手であることは百も承知だが、囲まれたらやっぱり厳しい。
2人とも戦闘力がある奴の方がいいだろう。……と言ってシェロも無しだ」
「え、何でっスか?」
憮然とした顔をするシェロに、尉官はこう返す。
「状況によっては戦うより逃げる場合が得策であることもある、……が、それをマリアが見極められるかどうか。
そしてその状況で、マリアを止められるだけの力がお前にあるか?」
「……確かに」
「と言うことは、尉官があたしと一緒に?」
尋ねたマリアに、尉官は深くうなずいた。
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町民救出作戦。
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マリアがびしっと手を挙げ、主張する。
「決まってます! 町の人たちを助けてあげないと!」
「それは勿論、そうだ。見捨てるなんて選択は絶対無い。だけどな、マリア」
尉官は壁にもたれ掛かり、マリアを諭す。
「壁の上からざっくり見た情報だけでも、敵の数は4~50人ってところだ。しかも全員武装してるし、明らかに俺たちよりデカい。
対する俺たちは4人。しかも持ってる武器は俺が剣1本と、ナイフ1本。ビートが魔杖1本とナイフ1本。シェロも剣だけ。お前だって槍だけだろ? さらに言えば、防具は無し。
これじゃ真っ向から行っても返り討ちだ。どう考えても勝ち目は無い」
「でも、だからって……」
反論しかけるマリアに、今度はビートが答える。
「尉官が言いたいのは、助けないってことじゃなくて、僕たちが現状でできるのは何かってことですよ。
僕たちの総力じゃ敵を全滅だとか追い払うだとか、そう言うのは絶対無理です。現状でできそうなのは、町民を救出することくらいだと」
「ビートの言う通りだ。
軍本営に連絡して応援をよこしてもらうって方法もあるが、1日や2日じゃ援軍は来られない。その間に町民が何らかの危険に晒される可能性もある。
俺たち4人で、今すぐ救出する。そのためにはまず、俺たちに何ができるのか考えよう」
尉官たちは輪になり、作戦を考える。
「正門は閉まってた。恐らく裏には敵がいるだろう」
「どーにかして倒せないっスかね?」
そう提案するシェロに、マリアが肩をすくめる。
「あの体格でしょ? 4人で不意を突けば1人くらい行けるかも知れないけど、正門守ってるってなると、多分2人か3人はいるだろーし」
「それに1人、2人なら壁を越えられるでしょうけど、4人全員でとなると、道具が必要ですね」
ビートの意見を受け、尉官がこう返す。
「まず身軽な奴2人で街の中に入って、どこかではしごなり何なり調達して、残り2人も入れる、って流れになるな」
「入ったとして、その後どうします?」
「町民を助けるとなると、正門の突破は必須だ。子供や老人もいるだろうから、全員壁を越えさせるのは無理だろうし」
「やっぱ倒さなきゃダメですかー……」
げんなりした顔をするマリアに、尉官も頭を抱える。
「かなり難易度が高いな。……まあ、でも、そうだな。町民を助ければ、突破できるかも」
「なるほど。ノースポートは100人近く住民がいると聞きますし、数で押すわけですね」
「それもあるし、軍や、その前身の自警団や討伐隊なんかに属してた人たちが結構移住してるって話も聞く。
今は囚われてるとは言え、解放すれば少なからず助けになってくれるだろう」
「でも尉官、どうやって町の人たちを助けるんですか?」
マリアにそう言われ、尉官はもう一度頭を抱える。
「……そこだよな」
「真っ向からはまず無理、ってコトは、やっぱこっちも不意を突く感じになるっスよね」
「ああ。包囲してる奴ら全員の気を引いて、その隙に町民を広場から連れ出す。後は態勢を整えて、正門を突破する。……ってのが妥当だろう」
「どうやって気を引くんです?」
「うーん……、現状じゃこれと言って、いい案は無いな。
だが街中なら何かしら、陽動に使えそうなものもあるだろう。その辺りは街に入ってから考えた方がいい」
尉官は立ち上がり、壁に目を向ける。
「じゃあ、先に街へ入るのは誰にするか、だが。1人は確定だな」
尉官の言葉に、ビートとシェロが揃ってマリアに目を向ける。
「ですよねー」
マリアも猫耳をポリポリとかきつつ、肯定する。
「後一人はどうします? 尉官たち3人の中だと、ビートが一番体重軽いですよね」
「じゃあ、僕が……」「いや」
応じかけたビートを、尉官が制する。
「身軽なのはいいが、戦力面で問題だ。あんなのに囲まれたら、魔術を使う間も無い。マリアだって槍の名手であることは百も承知だが、囲まれたらやっぱり厳しい。
2人とも戦闘力がある奴の方がいいだろう。……と言ってシェロも無しだ」
「え、何でっスか?」
憮然とした顔をするシェロに、尉官はこう返す。
「状況によっては戦うより逃げる場合が得策であることもある、……が、それをマリアが見極められるかどうか。
そしてその状況で、マリアを止められるだけの力がお前にあるか?」
「……確かに」
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尋ねたマリアに、尉官は深くうなずいた。
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