「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第3部
琥珀暁・陥港伝 6
神様たちの話、第86話。
ロウの逆襲。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
6.
日は既に傾きつつあり、広場に集められた町民たちの中には、明らかに消耗した様子の者も少なくなかった。
「はぁ……はぁ……」
その中の一人が顔を真っ青にし、倒れ込む。
それを見て、彼らを囲んでいた一人が、良く分からない言葉でわめき出す。
「*******! **! **!」
その虎獣人は倒れた老人に駆け寄り、持っていた棍棒を振り上げる。
と――二人の間に、顔があざだらけになったロウが立ちはだかる。
「おい、コラ! 何する気だ!?」
「*****!? **!」
虎獣人はわめきながら、ロウに向かって棍棒を振り下ろした。
が、ロウはお構い無しに虎獣人の懐へと突っ込み、肩から勢い良くぶつかる。
「**っ!?」
虎獣人はそのまま突き飛ばされ、ごろごろと転がっていく。
「どうだ、ちっとは効いたかこの野郎!」
「***!」
しかし他の者がわらわらとロウへ集まり、彼を袋叩きにする。
「うぐっ、がっ、ぎっ、……げほっ」
四方八方から殴られ、流石のロウも膝を付く。
(畜生、こいつら数でガンガン小突き回しやがって……!
一対一ならこんなヤツら、余裕でボコボコにしてやんのになぁ、クソっ)
ロウが血まみれになって倒れたところで、ようやく打擲(ちょうちゃく)の手が止む。
彼らが離れ、元の位置に戻ったところで、ロウは倒れていた者に声をかけた。
「ゼェ、ゼェ、……大丈夫か?」
「い、いや、それはこっちのセリフだろ。……大丈夫だよ、ロウ。横になったら大分楽だ」
「おう、そっか」
ロウはごろんと仰向けになり、歯ぎしりする。
「あー……ッ、ムカつくぜ。
俺が海の上で捕まったりしなけりゃ、アイツらの3、4人は……」
「仕方無いさ、ロウよ。漁はお前さんの日課だからなぁ」
「はぁ、情けねー……」
苛立ちつつも――騒げばまた袋叩きに遭うため――ロウは黙って、そのまま大の字になっていた。
と――とん、とんと自分の腕を指で突かれるような感触を覚える。
「ん?」
上半身を起こし、きょろきょろと辺りを見回すが、特に何も見当たらない。
「どうした、ロウ?」
「いや、……何でも」
もう一度寝転んだところで、またとん、とんと腕を突かれる。
それと同時に、ぺた、と腕に紙が貼られた。
(何だぁ……?)
はがして頭上に掲げると、その紙にはこう書いてあるのが確認できた。
「助けに来た 合図したら暴れろ」
(……は?)
何のことか分からず、ロウはもう一度上半身を起こし、辺りを伺う。
と、自分と同様に、小さな紙を握りしめながらきょろきょろと首を動かす者が、何人かいることに気付く。
(他のヤツらにもコレが……? 何が何だか分からんが、……合図だと?)
もう一度紙に視線を落とした、次の瞬間――頭上でドン、と爆発音が轟いた。
「**!?」
「*! *!」
音に驚いたらしく、囲んでいた者たちが一様に上を仰ぎ、騒ぎ出す。
(……っと、合図ってコレか!?)
ロウは瞬間的に立ち上がり、まだ上を向いたままの敵に向かって駆け出す。
「……っ!?」
完全に虚を突かれたらしく、その熊獣人はロウのパンチで簡単に吹っ飛ぶ。
「どーだこの野郎! ……よっしゃ、得物いただき!」
ロウは熊獣人が落とした棍棒を拾い、他の敵に向かって駆け出す。
と同時に、同じ指示を受けたらしい他の町民たちも、一斉に敵へ襲いかかった。
「おりゃああああッ!」
ばこん、と痛々しい音を立て、敵の顔に棍棒がめり込む。
「**!? **! ***!」
突然の蜂起で目を白黒させている敵を次々に叩きのめし、ロウは雄叫びを上げる。
「よくも好き放題やりやがったなてめーらああああッ! 全員血祭りに上げたらああああッ!」
「……っ」
町民たちの反撃に加え、ロウの吼えるような怒声に怯んだらしく、敵の包囲が目に見えて緩む。
それに乗じるように、どこからともなく声が響いてくる。
「全員正門へ向かえ! 近くに動けない奴がいたら、助けてやってくれ! 繰り返す、正門へ急げ!」
5人目の敵を打ちのめしたところでその声を聞き、ロウは後ろを振り返る。
「じいさん! 歩けるか!?」
「ちょ、ちょっと無理……」
「分かった!」
ロウは真っ二つになった棍棒を投げ捨て、老人を背負って駆け出す。
他の町民らも正門へ向かって走り出し、広場は倒れた敵だけになった。
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ロウの逆襲。
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日は既に傾きつつあり、広場に集められた町民たちの中には、明らかに消耗した様子の者も少なくなかった。
「はぁ……はぁ……」
その中の一人が顔を真っ青にし、倒れ込む。
それを見て、彼らを囲んでいた一人が、良く分からない言葉でわめき出す。
「*******! **! **!」
その虎獣人は倒れた老人に駆け寄り、持っていた棍棒を振り上げる。
と――二人の間に、顔があざだらけになったロウが立ちはだかる。
「おい、コラ! 何する気だ!?」
「*****!? **!」
虎獣人はわめきながら、ロウに向かって棍棒を振り下ろした。
が、ロウはお構い無しに虎獣人の懐へと突っ込み、肩から勢い良くぶつかる。
「**っ!?」
虎獣人はそのまま突き飛ばされ、ごろごろと転がっていく。
「どうだ、ちっとは効いたかこの野郎!」
「***!」
しかし他の者がわらわらとロウへ集まり、彼を袋叩きにする。
「うぐっ、がっ、ぎっ、……げほっ」
四方八方から殴られ、流石のロウも膝を付く。
(畜生、こいつら数でガンガン小突き回しやがって……!
一対一ならこんなヤツら、余裕でボコボコにしてやんのになぁ、クソっ)
ロウが血まみれになって倒れたところで、ようやく打擲(ちょうちゃく)の手が止む。
彼らが離れ、元の位置に戻ったところで、ロウは倒れていた者に声をかけた。
「ゼェ、ゼェ、……大丈夫か?」
「い、いや、それはこっちのセリフだろ。……大丈夫だよ、ロウ。横になったら大分楽だ」
「おう、そっか」
ロウはごろんと仰向けになり、歯ぎしりする。
「あー……ッ、ムカつくぜ。
俺が海の上で捕まったりしなけりゃ、アイツらの3、4人は……」
「仕方無いさ、ロウよ。漁はお前さんの日課だからなぁ」
「はぁ、情けねー……」
苛立ちつつも――騒げばまた袋叩きに遭うため――ロウは黙って、そのまま大の字になっていた。
と――とん、とんと自分の腕を指で突かれるような感触を覚える。
「ん?」
上半身を起こし、きょろきょろと辺りを見回すが、特に何も見当たらない。
「どうした、ロウ?」
「いや、……何でも」
もう一度寝転んだところで、またとん、とんと腕を突かれる。
それと同時に、ぺた、と腕に紙が貼られた。
(何だぁ……?)
はがして頭上に掲げると、その紙にはこう書いてあるのが確認できた。
「助けに来た 合図したら暴れろ」
(……は?)
何のことか分からず、ロウはもう一度上半身を起こし、辺りを伺う。
と、自分と同様に、小さな紙を握りしめながらきょろきょろと首を動かす者が、何人かいることに気付く。
(他のヤツらにもコレが……? 何が何だか分からんが、……合図だと?)
もう一度紙に視線を落とした、次の瞬間――頭上でドン、と爆発音が轟いた。
「**!?」
「*! *!」
音に驚いたらしく、囲んでいた者たちが一様に上を仰ぎ、騒ぎ出す。
(……っと、合図ってコレか!?)
ロウは瞬間的に立ち上がり、まだ上を向いたままの敵に向かって駆け出す。
「……っ!?」
完全に虚を突かれたらしく、その熊獣人はロウのパンチで簡単に吹っ飛ぶ。
「どーだこの野郎! ……よっしゃ、得物いただき!」
ロウは熊獣人が落とした棍棒を拾い、他の敵に向かって駆け出す。
と同時に、同じ指示を受けたらしい他の町民たちも、一斉に敵へ襲いかかった。
「おりゃああああッ!」
ばこん、と痛々しい音を立て、敵の顔に棍棒がめり込む。
「**!? **! ***!」
突然の蜂起で目を白黒させている敵を次々に叩きのめし、ロウは雄叫びを上げる。
「よくも好き放題やりやがったなてめーらああああッ! 全員血祭りに上げたらああああッ!」
「……っ」
町民たちの反撃に加え、ロウの吼えるような怒声に怯んだらしく、敵の包囲が目に見えて緩む。
それに乗じるように、どこからともなく声が響いてくる。
「全員正門へ向かえ! 近くに動けない奴がいたら、助けてやってくれ! 繰り返す、正門へ急げ!」
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「じいさん! 歩けるか!?」
「ちょ、ちょっと無理……」
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