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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第3部

    琥珀暁・古砦伝 3

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    神様たちの話、第90話。
    現役と古豪。

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    3.
     マリアたちが話している一方、ハンは砦の屋上で一人、ノースポートを単眼鏡で監視していた。
    (動きが無い。……と言うのは、非戦闘員なら、まあ、嬉しいことだろう。襲われなくて済むんだからな。だけど俺たちみたいな軍の人間にとっちゃ、手の打ちようが無くて面倒なんだよな。
     せわしなく襲い掛かってきたり、門前に出て守りをがっちり固めてきたりしてくるんなら、対応のしようはいくらでもある。だが奴ら、門を閉ざしたっきりで攻めも守りもせず、何の行動にも出て来ない。
     こうして離れたところから様子を伺っても、壁を登って様子を見に行っても、あいつら何にも動きを見せてこない。
     参ったね、どうも。こっちが勝手にうろうろ歩き回って、勝手に消耗してる気分だ。親父の現役時代みたく、バケモノ追い回したり追い回されたりしてる方がまだ、気が楽ってもんだろうな)
     単眼鏡から目を離し、ハンはその場に座り込んだ。
     と、誰かがはしごを登ってくる気配を感じ、ハンは声をかける。
    「誰だ? シェロか?」
    「誰だって言われても、お前さん、俺の名前なんぞ知りゃしないだろ」
     部下の誰でもない声でそう返され、ハンは面食らう。
    「なんだって?」
    「一応名乗るが、ロウ・ルッジなんて名前にゃ、心当たりなんて無いだろ?」
    「ああ、まあ。無いな」
     応答している間に、声の主が姿を現した。
    「でも顔は覚えてる。ノースポートで暴れ回ってたなってことは」
    「おう」
     ロウはハンの対面に座り、酒瓶を差し出した。
    「飲むか?」
    「いや、一応今は、仕事をしてるから。気持ちだけ受け取っておく。
     で、ルッジさんだっけ。用はそれだけか?」
     そう尋ねたハンに、ロウは「いや」と答える。
    「あの街の人間だからよ、今どうなってんのかってことは、ずーっと気になってる。
     だけどもお前さん、『イッパンジンは近寄るな』つって、砦から出してくれねーだろ?」
    「そりゃそうだ。いくらあんたの腕っ節が強いからって、相手は武装した集団だ。一人でノコノコ近付いてってもしあいつらが出てきたら、また袋叩きにされて捕まるぞ」
    「違いねえな。ま、そこは納得してるからよ、ここで眺めさせてもらおうって話だ」
     そう聞いて、ハンは単眼鏡をロウに差し出す。
    「使うか?」
    「ありがとよ」
     ロウは単眼鏡を受け取って立ち上がり、街の方へ顔を向けた。
    「そう言やお前さんの名前、シモンだったっけ」
     そのまま尋ねられるが、ハンは素直に応じる。
    「そうだ。ハンニバル・シモン」
    「シモンって、ゲート・シモン将軍の?」
    「親父だ」
    「そうか。あの人の息子か」
     その言葉に、ハンはきょとんとなる。
    「知ってるのか?」
    「軍がまだ『討伐隊』って名前だった頃、何度か一緒に戦ったことがある。もっともゲートさんは、俺のことなんざ覚えちゃいないだろうがな」
    「どうだろうな。親父は『共に戦った人間は忘れない』っていつも言ってたし、案外あんたのことも、覚えてるんじゃないかな」
    「だったら嬉しいがね」
     ロウはもう一度しゃがみ込み、ハンに単眼鏡を返した。
    「どうもな」
    「ああ」
     ハンは単眼鏡を受け取り、懐にしまいつつ、逆にこんな質問をする。
    「ちなみに階級は?」
    「一応、曹官なんてご大層なもんを付けてもらったが、性に合わなくってよ。
     そん時の上官に『これからは部下も付くぞ』なんて言われたからよ、『勘弁してくれ。俺は一人がいい』っつって、街に帰ってきたんだ」
    「損したな」
    「損なもんかい。街じゃ『討伐隊の英雄』って持てはやされたし、性に合う仕事をボチボチやりつつ、それなりに食っちゃ寝って具合な生活も確保できたし、言うこと無しってやつさ。
     むしろ故郷からずっと離れて毎日早寝、早起きを強制される生活の方が、俺にとっちゃよっぽど損だぜ」
     そううそぶくロウに、ハンは苦笑いを返す。
    「そんなもんかね」
    「ま、人によりけりって話だ。きっちりした生活がいいってヤツも大勢いるし、俺はそいつらを否定しない。代わりに俺の生活も否定したりすんなってことさ」
    「ああ。人によりけり、だからな。
     俺の部下にも一人、『のんびり食っちゃ寝生活ってしてみたいんですよー』とか言ってる奴がいるからな、約一名。
     俺がそんなタイプじゃないから、気持ちは分かるとか、そう言うことは言えないが」
    「あの『猫』ちゃんかい?」
    「その『猫』ちゃんだ」
     ハンがそう答えた途端、ロウはげらげらと笑いだした。
    「だろうな。そんなタイプだ」
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