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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第3部

    琥珀暁・古砦伝 5

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    神様たちの話、第92話。
    クーのおねがい。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    5.
    「あ、そうそう」
     と、クーがぺち、と両手を合わせ、こう続けてきた。
    「マリアから伺ったのですけれど、ハンは監視班の方たちがご到着し次第、クロスセントラルへお戻りになるご予定ですのね?」
    「ああ、そうだ」
    「ではわたくしも、それに同道させていただいてもよろしいかしら?」
    「何だって?」
     尋ね返したハンに、クーはにこっと笑ってうなずく。
    「ええ。ご覧の通りわたくし、か弱き乙女ですもの。四六時中『インビジブル』で姿を隠すのも大儀ですし、信用おける方と共に帰路へ就いた方が、確実に安全でしょう?
     あなたなら、わたくしが不安に思うようなことをなさるおそれは、絶対に無いでしょうし」
    「帰路ってことは、君はクロスセントラルの人間なのか」
    「ええ。修行のために各地を周遊しておりましたけれど、先日父上より、『そろそろ帰って来なさい』と連絡をいただきましたので。
     ノースポートを訪れたのはそれが理由だったのですけれど、あいにくあのような事態に巻き込まれてしまい、どうしようかと思案しておりました。
     ですので、あなた方がクロスセントラルへご帰還なさると言うのであれば、わたくしもご一緒できないか、と」
    「なるほど」
     ハンは食事の残りを口に放り込み、もぐもぐと咀嚼(そしゃく)しつつ、首を縦に振った。
    「んぐ……、いいぞ、一緒に来ても」
    「あら。てっきりお断りなさると存じていたのですが、よろしいのですか?」
    「勿論、自力で隣村まで行けないような幼子や老人とかなら断るところだが、君なら腕も立つし、万が一バケモノやら、あの『熊』や『虎』たちに襲われても、十分打破できるだろう。
     その代わり、俺たちが対処しきれないような奴が現れても、君だけを逃がすと言うようなことはできない。その時は一緒に戦ってもらうし、運が悪けりゃ一緒に死ぬ。
     それでいいなら、同行しても構わない」
    「ええ、異存ございません。よろしくお願いいたしますわ、ハン」
     クーはにこっとハンへ微笑み、隣のマリアにも笑いかけた。
    「あなたもよろしくね、マリア」
    「うん、よろしくねー」
     二人してニコニコしている様子を見て、ハンにふと、疑問が湧く。
    「そう言えばクー、君は今、いくつなんだ?
     随分若く、……と言うか幼くすら見えるが、話し方はとても大人びているように感じられるし、魔術の腕を考えても、相当修行を積んでるはずだ。
     ちなみにそこのマリアは18歳だけど、それよりは幼く見える。もっとも、マリアは性格的に幼いって部分があるから、判断材料にはしがたいが」
    「ちょっとひどくないですかー、尉官」
     マリアが唇を尖らせるのをよそに、クーが答える。
    「15歳ですわ。自分では、歳相応の見た目と存じておりましたけれど」
    「その年齢なら概ね納得できるな。魔術は別として」
     その言葉に、クーはまた、にこっと笑う。
    「僭越(せんえつ)ながらわたくし、魔術に関しては相当良い血筋を引いていると自覚しております。持って生まれた才能も、多分にあるのではないかと」
    「魔術に関しては、随分な自信家だな。
     だがその自信に見合う力を持っているのは、紛れも無い事実だ」
     食器を片付けながら、ハンは続けてこう尋ねる。
    「部下に釘を刺した身でこんなことを聞くのも何なんだが、君のその魔術の腕は、どうやって培われたものなんだ?
     技術も力量も、どう考えても尋常なものじゃない。一端の兵士であるビートが、手も足も出ないくらいの使い手だ。到底、そこいらをぐるっと回った程度で身に付く程のものじゃない。
     そんな凄腕の魔術師がまだ、たったの15歳だとは、俺には簡単に信じられない」
    「それを説明しなければ、同行は許可していただけないのかしら?」
     若干ながらも不機嫌そうな目を向けてきたクーに、ハンはかぶりを振る。
    「そう言うわけじゃない。それとは別の話だ。ただ単に、俺の個人的興味の問題だよ。
     これも前に言ったが、答えたくないことを無理に答えてもらう必要は無い。……まあ、なんだ。この話はもう、やめにしよう。
     出発についてだが、恐らく1週間後になる。それまでに準備を整えておいてくれ」
    「ええ、承知いたしました。
     では、わたくしはそろそろ就寝いたしますわね。おやすみなさいませ、ハン」
     すっと席を立ち、そそくさと離れるクーに、ハンとマリアは同時に声をかけた。
    「おやすみ、クー」「おやすみなさーい」
     クーは振り返ること無く、そのまま食堂を後にした。
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