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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第3部

    琥珀暁・奔尉伝 3

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    神様たちの話、第96話。
    寄せ集め部隊の出撃。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
    「敵、まだ広場から動いてませーん!」
     監視塔にいるマリアから状況を伝えられ、その真下の中庭に集まった測量班と元討伐隊は顔を見合わせる。
    「動きは無し、か」
    「でもいずれ、来るはずです」
    「ビートの言う通りだ」
     彼らの前に立つハンが、全員に周知する。
    「それでは作戦について、詳しく説明する。
     俺たちは今からノースポートの付近に移動し、敵が動き出すまで待機する。敵が探査部隊を街から出してすぐ、俺とクーが姿を消して街に入る。
     探査部隊がある程度の距離を取った頃を見計らって俺が門を開け、残りの皆は街に侵入する」
    「探査部隊が出た直後なら、門も開いてんだろ? んな面倒臭えことしなくてもいいじゃねえか」
     そう返したロウに、ハンは首を横に振った。
    「確かに開いてるだろう。だが街の中に残っているだろう防衛部隊と、騒ぎを聞き付けて戻ってくるだろう探査部隊に挟み撃ちにされる危険が大きい。そうなれば一巻の終わりだ。
     前述した通り、俺はあんたたちがよほど自分勝手に行動しない限り、死んでくれなんて言うつもりは無い。生還優先で行動してもらう。
     話を戻すが、探査部隊が街を離れ、警備が手薄になった時点で街に侵入し、陽動を行う」
    「ようどう?」
     またもロウに話の腰を折られかけるが、今度はビートが話を継いだ。
    「要するに目一杯大騒ぎして、暴れてくれってことです」
    「ああ、うん。チマチマやるよりそっちの方が性に合ってる」
    「そりゃ良かった。あんたに任せるよ」
     ハンは多少イライラしながらも、話を続ける。
    「ある程度騒ぎ立て、探査部隊が戻ってくる気配を見せたら、今度は大急ぎで街を離れる。
     これを、探査部隊が街を出る度に繰り返せば、奴らもめげるだろう」
    「『出る度に』? 何度もやるのか?」
     今度はロウではない、別の者が質問する。
    「相手も多分、ある程度は意地になって探査しようとしたり、俺たちを潰しにかかろうとしたりするだろう。少なくとも4~5回は、陽動作戦を行う必要がある。
     何度もやる分、危険は大きい。だが、ここにいる皆の安全を確保するためだ。無論、『皆』にはこの作戦に参加する、あなた方も含まれる。決して『自分の命なんてどうでもいい』なんて自棄(やけ)にならず、自分の生命優先で行動すること」
     そこまで述べ、ハンは右手を挙げた。
    「それじゃ行くぞ! 気を引き締めてかかれ!」
    「おうッ!」
     ハンの号令に合わせ、陽動部隊は中庭を後にした。

     30分後、ハンたちはノースポートのすぐ側にある、森の中に陣取っていた。
    「この位置なら、探査部隊も意識を前に向けてるだろうし、俺たちがいることに気付かないだろう。
     探査部隊が出発し、門が閉まる前に、俺とクーが姿を消して中に入る。皆は探査部隊が完全に視界から消えたら、門前に集合してくれ。
     俺が門を開けたら、そのまま大声を上げて侵入。陽動作戦の開始だ。終了のタイミングは俺が知らせる。俺の合図が来たら、全員即撤退だ。間違っても戦闘を継続させるなよ。
     ……っと」
     話している間に門が開き、中からぞろぞろと、あの熊や虎じみた獣人たちが現れる。
    「**!」
     その中の一人が号令をかけたらしく、彼らは門前で整列する。
     その様子を眺めていたクーが、いぶかしげにつぶやく。
    「随分、練兵が行き届いておりますわね」
    「……そうだな」
     それに応じ、ハンはこう続ける。
    「武器や装備なんかの程度は、はっきり言えば俺たちより拙い。材質は木だとか石だとかばっかりで、青銅や鋼でできたモノなんか誰も身に付けてなかった。だから正直、俺たちより技術で劣ると考えてた。
     だが統率だとか指揮系統だとかは、俺たちと遜色(そんしょく)無いように見える。何よりどいつもこいつも屈強な体つきしてる。真っ向勝負したら、勝てるかどうか」
    「わたくしたちには魔術がございますわ。如何に彼らが優れた肉体を有していようと、距離を取って波状攻撃を仕掛ければ、ひとたまりもございませんでしょう」
    「どうだろうな」
     自信有りげなクーに対し、ハンは懐疑的に答える。
    「そりゃ昔は人の十倍も二十倍もあるバケモノを相手に、そうした方法で勝ってきたって話だが、向こうはバケモノじゃなく、人だ。
     人が作った技術が、人に破れないなんてことが……」「なんですって?」
     ハンの言葉に、クーは目を釣り上がらせる。
    「『人が作った』? あなたはち、……陛下が、人だと仰るのですか?」
    「君の陛下を尊ぶ気持ちは十分に理解しているつもりだが、その陛下ご自身が、『我は神にあらず、左様に呼び給うな』と仰られていたとも聞いてる。
     それよりクー」
     ハンはクーの口を掌で押さえ、にらみつけた。
    「敵が目の前なんだ。騒がないでくれ」
    「むぐ……」
     クーは顔を真っ赤にし、黙り込んだ。
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