「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第3部
琥珀暁・狐傑伝 4
神様たちの話、第105話。
秘密のつながり。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
4.
「エリザさん、一つお聞きしてよろしいかしら?」
そう返したクーに、エリザはきょとんとする。
「どないしたん?」
「ハンとお話なさっていた時にも感じたのですが、あなたとハンは、昔からご面識が?」
「あるで」
エリザはにこっと笑い、こう続けた。
「付き合い長いし、アタシの子供みたいなもんやね」
「こ、子供?」
「ちゅうても血がつながっとるワケちゃうで。ま、似たようなもんやけど」
「え……え?」
エリザの言っていることが把握できず、クーは戸惑う。
が、エリザはそれに構う様子も無く、話を続ける。
「あの子のお父さんと、何やかや『色々』あってな。家族ぐるみで親しくしとるんよ」
「左様でしたか」
「ま、そう言うワケやから、あの子が好きなもんとか嫌いなコトとか、そう言うんはよー知っとるで。
例えばな、あの子キノコ嫌いやねん」
「あら」
意中の男性の嗜好の話になり、クーは長い耳をぴん、と立てる。
「昔、アタシん家に来た時、アタってしもてな。ソレ以来、キノコ系は避けて食べよるんよ」
「まあ」
「せやからな、料理したげよ思うんやったら、その辺り気ぃ付けといた方がええで」
「参考にいたしますわ」
クーは懐からメモを取り出し、さっと書き付けた。
と――。
「それは克服しましたよ、エリザさん。もう食えます」
ハンの憮然とした声が、二人にかけられる。
「あれ? せやった?」
「各地の測量を行うとなると、行程の大半が野宿になりますからね。キノコに限らず、野のものが食えなきゃ、到底やってられないですよ」
「そうかー……。成長したんやなぁ。『お母さん』、嬉しいわぁ」
「だから、それはやめて下さいと言ったじゃないですか」
ハンは眉間にしわを寄せながら、こう続ける。
「俺とあなたは血がつながってませんし、親父の本妻は俺の母です」
「細かいなぁ」
「あなたが奔放すぎるんです。それに、そんなことをあんまり大っぴらに言わないでくれと、親父からも言ってあったはずですよね」
「せやから、アンタとアタシの時だけの、……あー」
言いかけたエリザが、傍らのクーに目をやり、ぺろっと舌を出す。
「ゴメン、クーちゃん。今の聞かんかったコトにしといて」
「……えーと、……はい?」
クーは自分の常識と理解を超えた話の展開に付いていけず、ぽかんとするしかなかった。
ハンはクーとエリザを連れてもう一度、先程の部屋に戻った。
「あの……?」
まだ合点の行かなさそうな顔をしているクーを座らせ、ハンは説明する。
「まず、……そうだな、今からする話は、秘密にしていてほしい。
公になると俺も困るし、俺の両親、と言うか親父が特に困る。……エリザさんだって困るはずなんですけどね」
「そらまあ、うるさいのんが沸きよるやろな」
「ですよね? ……なのに何で、……いや、まあいい。とにかく説明する。
俺の家族構成については、さっき言った通りだ。親父とお袋、俺、妹2人。それがシモン家の全員だ。
だが親父の血を引いてるのが、あと2人いるんだ。それが……」
ハンはそこで言葉を切り、エリザに視線を向ける。
「……それが、エリザさんの子供なんだ」
「まあ! それは、つまり……」
ハンの秘密を聞き、クーは目を丸くしている。
「そう。いわゆる不倫ってやつだよ。
十数年前、エリザさんの要請で、親父はバケモノの討伐隊を率いて山の南へ行ったんだ。討伐作戦は成功して、親父は戻ることになった。
だけど親父が帰路に着く前日、エリザさんが迫ったんだ。『どうしても奥さんになりたい』つってな」
「なんて、まあ……、何と申せばよろしいのかしら」
顔を真っ赤にして聞いていたクーに、エリザがニヤニヤと笑みを浮かべる。
「ロマンチックやろ?」
「どこがですか、まったく。……それで、まあ、その後、エリザさんは子供を産んだ。名前はロイド。俺にとっては一応、母親違いの弟ってことになる。
で、ロイドが3つになるかって頃に、エリザさんはあろうことか、俺ん家に来たんだよ」
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「エリザさん、一つお聞きしてよろしいかしら?」
そう返したクーに、エリザはきょとんとする。
「どないしたん?」
「ハンとお話なさっていた時にも感じたのですが、あなたとハンは、昔からご面識が?」
「あるで」
エリザはにこっと笑い、こう続けた。
「付き合い長いし、アタシの子供みたいなもんやね」
「こ、子供?」
「ちゅうても血がつながっとるワケちゃうで。ま、似たようなもんやけど」
「え……え?」
エリザの言っていることが把握できず、クーは戸惑う。
が、エリザはそれに構う様子も無く、話を続ける。
「あの子のお父さんと、何やかや『色々』あってな。家族ぐるみで親しくしとるんよ」
「左様でしたか」
「ま、そう言うワケやから、あの子が好きなもんとか嫌いなコトとか、そう言うんはよー知っとるで。
例えばな、あの子キノコ嫌いやねん」
「あら」
意中の男性の嗜好の話になり、クーは長い耳をぴん、と立てる。
「昔、アタシん家に来た時、アタってしもてな。ソレ以来、キノコ系は避けて食べよるんよ」
「まあ」
「せやからな、料理したげよ思うんやったら、その辺り気ぃ付けといた方がええで」
「参考にいたしますわ」
クーは懐からメモを取り出し、さっと書き付けた。
と――。
「それは克服しましたよ、エリザさん。もう食えます」
ハンの憮然とした声が、二人にかけられる。
「あれ? せやった?」
「各地の測量を行うとなると、行程の大半が野宿になりますからね。キノコに限らず、野のものが食えなきゃ、到底やってられないですよ」
「そうかー……。成長したんやなぁ。『お母さん』、嬉しいわぁ」
「だから、それはやめて下さいと言ったじゃないですか」
ハンは眉間にしわを寄せながら、こう続ける。
「俺とあなたは血がつながってませんし、親父の本妻は俺の母です」
「細かいなぁ」
「あなたが奔放すぎるんです。それに、そんなことをあんまり大っぴらに言わないでくれと、親父からも言ってあったはずですよね」
「せやから、アンタとアタシの時だけの、……あー」
言いかけたエリザが、傍らのクーに目をやり、ぺろっと舌を出す。
「ゴメン、クーちゃん。今の聞かんかったコトにしといて」
「……えーと、……はい?」
クーは自分の常識と理解を超えた話の展開に付いていけず、ぽかんとするしかなかった。
ハンはクーとエリザを連れてもう一度、先程の部屋に戻った。
「あの……?」
まだ合点の行かなさそうな顔をしているクーを座らせ、ハンは説明する。
「まず、……そうだな、今からする話は、秘密にしていてほしい。
公になると俺も困るし、俺の両親、と言うか親父が特に困る。……エリザさんだって困るはずなんですけどね」
「そらまあ、うるさいのんが沸きよるやろな」
「ですよね? ……なのに何で、……いや、まあいい。とにかく説明する。
俺の家族構成については、さっき言った通りだ。親父とお袋、俺、妹2人。それがシモン家の全員だ。
だが親父の血を引いてるのが、あと2人いるんだ。それが……」
ハンはそこで言葉を切り、エリザに視線を向ける。
「……それが、エリザさんの子供なんだ」
「まあ! それは、つまり……」
ハンの秘密を聞き、クーは目を丸くしている。
「そう。いわゆる不倫ってやつだよ。
十数年前、エリザさんの要請で、親父はバケモノの討伐隊を率いて山の南へ行ったんだ。討伐作戦は成功して、親父は戻ることになった。
だけど親父が帰路に着く前日、エリザさんが迫ったんだ。『どうしても奥さんになりたい』つってな」
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顔を真っ赤にして聞いていたクーに、エリザがニヤニヤと笑みを浮かべる。
「ロマンチックやろ?」
「どこがですか、まったく。……それで、まあ、その後、エリザさんは子供を産んだ。名前はロイド。俺にとっては一応、母親違いの弟ってことになる。
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