「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第3部
琥珀暁・南都伝 1
神様たちの話、第118話。
シモン班、山を進む。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
首都での休暇を終え、ハンたち一行はエリザに会うため、ウォールロック山脈を登っていた。
「あ、尉官、尉官! あれ見て下さい!」
「何だ?」
「ほら、あれってクロスセントラルですよねー?」
「ああ、そうだな。陛下のお屋敷も見えるし」
「あのお家って本当、おっきいですよねー」
「陛下のお住まいってだけじゃなく、政治や軍事の中枢でもあるからな」
はしゃいでいるマリアに対し、ハンは淡々と受け答えしている。
「大丈夫? 疲れたら言ってね」
「うん、まだ平気やでー」
ビートもリンダに優しく話しかけたりと、親しげに振る舞っている。
「い、今のとこ、前方に敵影無しっス」
一方でシェロは、前を見たり後ろを向いたりと、忙しなく動いている。
それを見かね、ハンが声をかけた。
「まず、いないだろう。この山で最後にバケモノが出たのは、もう20年以上前だ」
「そうは言いますけど、尉官。この山ってまだ、全部探索され切ったワケじゃないって話じゃないっスか。
もしっスよ、出くわしたりなんかしたら、エリザさんのお子さんたちが危険に……」
「20年出現しなかったようなモノが、たまたま俺たちが通りがかったところにノコノコ姿を表すって言うのか? そんなことが起こるよりも、大魔法使いに出くわす方がまだ、確率が高いと思うがな、俺は。
そんなこと気にするよりも、しっかり護衛を努めた方がエリザさんは喜ぶだろうさ」
「……そっスかねー」
本来の目的であるエリザとの話し合いに加え、エリザから自分の子供たちを連れて帰ってくるよう頼まれていたため、ハンは自分の班にロイドとリンダを同行させていた。
マリアたち3人は、まだ13歳と10歳の二人が共に山道を進むことに不安を表していたが、ハンから頭を下げられ、渋々承知していた。
とは言え――。
「大分歩いたけど、二人とも大丈夫?」
「あ、はい」「だいじょぶー」
軍人4人が――多少は加減してはいるが――歩く速度に、ロイドもリンダも問題無く付いて来ていた。
それに疑問を感じたらしく、ビートが尋ねてきた。
「もしかして二人とも、魔術か何かを使ってるんですか?」
「え?」
「駄目ですよ、道のりは長いんですから。ずっと使ってたら、より疲労が溜まるし……」
「んーん」
が、リンダはぷるぷると首を横に振る。
「使てへんでー。ロイド兄やんも使てへんよな?」
「う、うん」
兄妹に揃って否定され、ビートは戸惑う様子を見せる。
「使ってないんですか? じゃあどうして……?」
「聞いた話だが」
話の輪に、ハンが加わる。
「親のエリザさん自身、幼い頃に師匠と一緒に、この山を登ってたそうだ。修行のためにな」
「幼い頃? いくつくらいの話なんですか?」
「エリザさんは暦が作られる前の生まれだから、正確な歳は分からん。それでも多分、今のリンダくらいの歳だったろう。
その血を受け継いでるってことだ」
「……なるほど」
わだかまった表情をしながらも、ビートはこくんとうなずいた。
登り始めてから半日が過ぎ、太陽が自分たちより下へ降りてきたところで、ハンたちは足を止めた。
「今日はここで休もう。ビートとシェロは、俺と一緒にテントを張るのを手伝ってくれ。マリアとロイド、リンダは薪を集めて、かまどを作ってくれ」
「え? 尉官、いいんスか? お二人に仕事させて」
そう返したシェロに、ハンは「いいんだ」と答える。
「むしろ何もさせずに恭しく扱ってたら、エリザさんから『もうちょい鍛えたって』って小突かれるだろうさ。
そうだろ、ロイド、リンダ?」
「ま、まあ、そやろね。か、母さん、厳しいから」
「ぜーったい言わはるねー」
二人からもそう言われ、シェロも納得したらしい。
「そんなら、……はい、ええ」
「さあ、さっさと準備してさっさとメシ作るぞ。みんな、腹減っただろ?」
ハンの言葉に、一同はうんうんとうなずき、それぞれの作業に就いた。
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シモン班、山を進む。
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1.
首都での休暇を終え、ハンたち一行はエリザに会うため、ウォールロック山脈を登っていた。
「あ、尉官、尉官! あれ見て下さい!」
「何だ?」
「ほら、あれってクロスセントラルですよねー?」
「ああ、そうだな。陛下のお屋敷も見えるし」
「あのお家って本当、おっきいですよねー」
「陛下のお住まいってだけじゃなく、政治や軍事の中枢でもあるからな」
はしゃいでいるマリアに対し、ハンは淡々と受け答えしている。
「大丈夫? 疲れたら言ってね」
「うん、まだ平気やでー」
ビートもリンダに優しく話しかけたりと、親しげに振る舞っている。
「い、今のとこ、前方に敵影無しっス」
一方でシェロは、前を見たり後ろを向いたりと、忙しなく動いている。
それを見かね、ハンが声をかけた。
「まず、いないだろう。この山で最後にバケモノが出たのは、もう20年以上前だ」
「そうは言いますけど、尉官。この山ってまだ、全部探索され切ったワケじゃないって話じゃないっスか。
もしっスよ、出くわしたりなんかしたら、エリザさんのお子さんたちが危険に……」
「20年出現しなかったようなモノが、たまたま俺たちが通りがかったところにノコノコ姿を表すって言うのか? そんなことが起こるよりも、大魔法使いに出くわす方がまだ、確率が高いと思うがな、俺は。
そんなこと気にするよりも、しっかり護衛を努めた方がエリザさんは喜ぶだろうさ」
「……そっスかねー」
本来の目的であるエリザとの話し合いに加え、エリザから自分の子供たちを連れて帰ってくるよう頼まれていたため、ハンは自分の班にロイドとリンダを同行させていた。
マリアたち3人は、まだ13歳と10歳の二人が共に山道を進むことに不安を表していたが、ハンから頭を下げられ、渋々承知していた。
とは言え――。
「大分歩いたけど、二人とも大丈夫?」
「あ、はい」「だいじょぶー」
軍人4人が――多少は加減してはいるが――歩く速度に、ロイドもリンダも問題無く付いて来ていた。
それに疑問を感じたらしく、ビートが尋ねてきた。
「もしかして二人とも、魔術か何かを使ってるんですか?」
「え?」
「駄目ですよ、道のりは長いんですから。ずっと使ってたら、より疲労が溜まるし……」
「んーん」
が、リンダはぷるぷると首を横に振る。
「使てへんでー。ロイド兄やんも使てへんよな?」
「う、うん」
兄妹に揃って否定され、ビートは戸惑う様子を見せる。
「使ってないんですか? じゃあどうして……?」
「聞いた話だが」
話の輪に、ハンが加わる。
「親のエリザさん自身、幼い頃に師匠と一緒に、この山を登ってたそうだ。修行のためにな」
「幼い頃? いくつくらいの話なんですか?」
「エリザさんは暦が作られる前の生まれだから、正確な歳は分からん。それでも多分、今のリンダくらいの歳だったろう。
その血を受け継いでるってことだ」
「……なるほど」
わだかまった表情をしながらも、ビートはこくんとうなずいた。
登り始めてから半日が過ぎ、太陽が自分たちより下へ降りてきたところで、ハンたちは足を止めた。
「今日はここで休もう。ビートとシェロは、俺と一緒にテントを張るのを手伝ってくれ。マリアとロイド、リンダは薪を集めて、かまどを作ってくれ」
「え? 尉官、いいんスか? お二人に仕事させて」
そう返したシェロに、ハンは「いいんだ」と答える。
「むしろ何もさせずに恭しく扱ってたら、エリザさんから『もうちょい鍛えたって』って小突かれるだろうさ。
そうだろ、ロイド、リンダ?」
「ま、まあ、そやろね。か、母さん、厳しいから」
「ぜーったい言わはるねー」
二人からもそう言われ、シェロも納得したらしい。
「そんなら、……はい、ええ」
「さあ、さっさと準備してさっさとメシ作るぞ。みんな、腹減っただろ?」
ハンの言葉に、一同はうんうんとうなずき、それぞれの作業に就いた。
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