「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第3部
琥珀暁・南都伝 5
神様たちの話、第122話。
南の大豪邸。
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5.
山を降りてからさらに1日を過ぎて、シモン班は目的地であるエリザの街に到着した。
「あの、尉官」
「なんだ?」
「ここがエリザ先生の本拠地なんですよね?」
「そうだ」
「エリザ先生はここの長と聞いてましたが」
「ああ」
「本当に?」
「本当だ」
ハンと二言、三言交わし、ビートはため息を付く。
「本当にすごい人なんですね、エリザ先生って」
「さあな」
どこに目を向けても商店や露店、工房、その他諸々の施設が立ち並んでおり、一行の会話が度々さえぎられるほどの喧騒と活気に満ちている。
と、リンダがくいくいと、ハンの服を引っ張る。
「なーなー、早よ家行こーやー。歩き通しでウチ、めっちゃつかれたー」
「そうだな。話し合いの件もあることだし、変にそこらの店で食事を採るより、エリザさんの家でご馳走になった方がいいだろう」
「せやで。スナやんのご飯、めっちゃ上手いし。店で食べるより絶対そっちの方がええって」
二人の話を聞いていたマリアが、そこでぴょこんと猫耳を揺らす。
「ごはん? おいしい? あ、それより『スナやん』って?」
「家で働いとるメイドさん。
ウチと2つちがいの12やけど、バリバリ仕事でける子やねん。ご飯作るんだけやなくて、掃除とか洗濯とかもな。母やんの超お気にの子」
「へぇー」
「あ、せや。スナやんも『猫』やから、マリアちゃんと気ぃ合うかもやね」
「そーなんだ。ね、ね、尉官っ。早く行きましょー」
急かしてくるマリアに、ハンは肩をすくめる。
「これは仕事だぞ。まさかメシにつられてるわけじゃ無いよな?」
「……まさかー」
ぺろっと舌を出してきたマリアに、ハンを含めた皆が苦笑していた。
街を北東へと進み、やがて大きな屋敷に着く。
「ここですか?」
「そうだ。ちょっと待ってろ。開けてもらうから」
ハンは皆を待たせ、門の向こうに立っていた使用人2人に声をかける。
「よお。久しぶりだな、マルコ、フランク」
「ん? ……ああ、ハンやないか!」
「女将さんから来る言うんは聞いてたで。でも聞いとったより早かったなぁ」
2人と会釈を交わし、ハンは背後の仲間と弟妹を指す。
「聞いてるなら話が早い。ロイドとリンダ、連れて来たぞ。あと、俺の部下も」
「おう、おつかれさん」
「『俺の部下』やて。自分、カッコ付けやな」
「それ以外に言い様が無いしな。愉快な仲間たちとでも言っとけば良かったか?」
「いらんいらん、そんなボケ」
「ま、今開けるから、ちょっと待っとき」
すぐさま門が開かれ、2人は一転、恭しく頭を下げた。
「ゴールドマン邸にようこそいらっしゃいました」
「お帰りなさいませ、お坊ちゃま、お嬢様」
と、すぐに元の口調に戻る。
「ここだけはキチっとしとかんと、女将さんに怒られるからな」
「せやから後ろの皆さんも、お気軽にしてもろて下さい」
気さくな態度を執られ、マリアたち3人もほっとした表情を浮かべる。
「あ、はーい」
「では、お言葉に甘えて」
「どもっス」
屋敷の中に通されてすぐ、使用人ら十数名を背にしたエリザが出迎える。
「どうも、皆さん。長旅おつかれさんでした」
「どうも」
先頭に立っていたハンがぺこっと頭を下げ、マリアたちもそれにならう。
「労いのお言葉、痛み入ります」
「恐縮っス」
「お久しぶりでーす」
が――その直後、ぐう、と腹の鳴る音が聞こえてきた。
「……てへ」
猫耳の内側まで真っ赤になったマリアを見て、エリザが大笑いした。
「ぷっ……、ふ、ふっふ、アハハハ……、あー、うんうん、お腹ペコペコさんなんやね、うん。
すぐご飯、用意させますわ。堅い話するんはその後で」
そう提案したエリザに、マリアは嬉しそうな笑みを浮かべる。
「賛成でーす! ね、尉官もそれで文句無いですよね?」
「ああ」
ハンは頭を抱えつつ、短くうなずいて返した。
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南の大豪邸。
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5.
山を降りてからさらに1日を過ぎて、シモン班は目的地であるエリザの街に到着した。
「あの、尉官」
「なんだ?」
「ここがエリザ先生の本拠地なんですよね?」
「そうだ」
「エリザ先生はここの長と聞いてましたが」
「ああ」
「本当に?」
「本当だ」
ハンと二言、三言交わし、ビートはため息を付く。
「本当にすごい人なんですね、エリザ先生って」
「さあな」
どこに目を向けても商店や露店、工房、その他諸々の施設が立ち並んでおり、一行の会話が度々さえぎられるほどの喧騒と活気に満ちている。
と、リンダがくいくいと、ハンの服を引っ張る。
「なーなー、早よ家行こーやー。歩き通しでウチ、めっちゃつかれたー」
「そうだな。話し合いの件もあることだし、変にそこらの店で食事を採るより、エリザさんの家でご馳走になった方がいいだろう」
「せやで。スナやんのご飯、めっちゃ上手いし。店で食べるより絶対そっちの方がええって」
二人の話を聞いていたマリアが、そこでぴょこんと猫耳を揺らす。
「ごはん? おいしい? あ、それより『スナやん』って?」
「家で働いとるメイドさん。
ウチと2つちがいの12やけど、バリバリ仕事でける子やねん。ご飯作るんだけやなくて、掃除とか洗濯とかもな。母やんの超お気にの子」
「へぇー」
「あ、せや。スナやんも『猫』やから、マリアちゃんと気ぃ合うかもやね」
「そーなんだ。ね、ね、尉官っ。早く行きましょー」
急かしてくるマリアに、ハンは肩をすくめる。
「これは仕事だぞ。まさかメシにつられてるわけじゃ無いよな?」
「……まさかー」
ぺろっと舌を出してきたマリアに、ハンを含めた皆が苦笑していた。
街を北東へと進み、やがて大きな屋敷に着く。
「ここですか?」
「そうだ。ちょっと待ってろ。開けてもらうから」
ハンは皆を待たせ、門の向こうに立っていた使用人2人に声をかける。
「よお。久しぶりだな、マルコ、フランク」
「ん? ……ああ、ハンやないか!」
「女将さんから来る言うんは聞いてたで。でも聞いとったより早かったなぁ」
2人と会釈を交わし、ハンは背後の仲間と弟妹を指す。
「聞いてるなら話が早い。ロイドとリンダ、連れて来たぞ。あと、俺の部下も」
「おう、おつかれさん」
「『俺の部下』やて。自分、カッコ付けやな」
「それ以外に言い様が無いしな。愉快な仲間たちとでも言っとけば良かったか?」
「いらんいらん、そんなボケ」
「ま、今開けるから、ちょっと待っとき」
すぐさま門が開かれ、2人は一転、恭しく頭を下げた。
「ゴールドマン邸にようこそいらっしゃいました」
「お帰りなさいませ、お坊ちゃま、お嬢様」
と、すぐに元の口調に戻る。
「ここだけはキチっとしとかんと、女将さんに怒られるからな」
「せやから後ろの皆さんも、お気軽にしてもろて下さい」
気さくな態度を執られ、マリアたち3人もほっとした表情を浮かべる。
「あ、はーい」
「では、お言葉に甘えて」
「どもっス」
屋敷の中に通されてすぐ、使用人ら十数名を背にしたエリザが出迎える。
「どうも、皆さん。長旅おつかれさんでした」
「どうも」
先頭に立っていたハンがぺこっと頭を下げ、マリアたちもそれにならう。
「労いのお言葉、痛み入ります」
「恐縮っス」
「お久しぶりでーす」
が――その直後、ぐう、と腹の鳴る音が聞こえてきた。
「……てへ」
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「ぷっ……、ふ、ふっふ、アハハハ……、あー、うんうん、お腹ペコペコさんなんやね、うん。
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「賛成でーす! ね、尉官もそれで文句無いですよね?」
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ハンは頭を抱えつつ、短くうなずいて返した。
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