「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第3部
琥珀暁・南都伝 7
神様たちの話、第124話。
作戦立案。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
7.
デザートの皿が卓から下げられたところで、ハンがようやく口を開いた。
「食事は終わりました。仕事の話をしましょう」
「ええよ」
エリザの了解を得て、ハンは立ち上がり、敬礼する。
「実際に現地へ赴いて下さっていますし、陛下からもお話を伺っていることとは思いますが、改めて状況の確認から。
現在、ノースポートは正体不明の集団によって占拠されており、元いた住民は近隣に避難しています。このままでは住民の生活がままならず、漁業を中心とした産業が停滞、壊滅的な被害を被ることとなります。そうなれば陛下の統治下にある者にも、多少なりとも影響が出るでしょう。
そこで陛下は大隊を率い、敵性集団の討伐を行うよう、俺に命じました。ここまではご承知の通りかと思いますが」
「うん、聞いとるで。で、アタシにも手伝わせようっちゅうコトやな」
「ええ。エリザさんには副隊長として、俺と共に大隊を指揮していただきたいと考えています」
そこでハンは言葉を切り、エリザの反応をうかがう。
エリザは特に断るような素振りも無く、素直にうなずいた。
「ええよ。ソコら辺はゼロさんと話付いとる。やらさせてもらうわ」
「ありがとうございます」
ハンは深々と頭を下げ、続いて討伐の具体的な作戦を話し合おうと、口を開きかけた。
「では……」「ちなみにな」
が、エリザはそれをさえぎり、にこっと笑ってきた。
「肝心の作戦やけど、もう粗方まとめとるから」
「……何ですって?」
ハンの心の中に、驚きと苛立ちが同時に沸き起こる。
それもまた、彼女に見透かされていたらしく、エリザは依然として笑みを崩さない。
「何もアンタをびっくりさせようとか無視しとるとか、そんなんや無いで。
アンタらがこっちに来るまでに、結構日にちあったやろ? ぼーっと待っとってもしゃあないし、そもそもアンタの言う通り、長いコト放っとったら影響も出て来る。でける限り早よ、討伐に行かなアカン。ソレは分かるやろ?」
「そう、ですね。それは、まあ」
「せやからアタシの方で、でけるトコまで作戦詰めといたんよ。勿論アンタが聞いてみて、『こらアカンやろ』ってトコがあったら、一緒に修正したらええしな。
ちゅうワケで、説明するで」
「ええ、はい」
まだわだかまったものは残りつつも、ハンは仕方無く、素直にエリザの作戦を聞くことにした。
「今回、ゼロさんが一番望んどるであろうコトは、敵やと見なしとるヤツらがノースポートからおらんようになるコトや。
となれば無理に人を押しかけて、正面切って殴り合いになるんは得策や無い。そら上手く行けば相手を蹴散らせるやろけど、こっちかて被害出るしな。ソレより無力化させる方が、後々都合のええコトになるはずや」
「以前、ノースポートからの帰路で先生が仰っていたお話ですね」
ビートの発言に、エリザはうんうんとうなずいて返す。
「そう言うコトやね。相手は単なるバケモノや無い、意思疎通のでける人間や。無闇に戦おうとしたら相手かて抗戦しよるやろし、そうなったら最悪、何ヶ月もやり合わなアカン羽目になる。そんなん、誰かて得しいひん。
そんなアホなコトをダラダラ続けるより、一度相手を黙らせてから、こっちに『話し合おうと思てるんやけど』っちゅう態度見せて、話し合いに持って行った方が絶対ええわ」
「それでエリザさん、無力化と仰いましたが、具体的には?」
ハンの質問に、エリザは使用人に「アレ持ってきて」と指示を出しつつ、こう答える。
「一番やる気無くさせるんは、『無力や』『どうしようもでけへん』と思わせるコトや。例えばや、ぎゅうぎゅうに縛られたら、どないもこないもならへんやろ?」
「そりゃ、まあ」
「ソレと同じ状況に持ってくんや。アイツら完全包囲して、あらゆる攻撃手段を封じたる。ソレやったらバタバタと野戦するより百倍楽やし、被害も出えへん。
ソコで問題となるんが、2点や」
@au_ringさんをフォロー
作戦立案。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
7.
デザートの皿が卓から下げられたところで、ハンがようやく口を開いた。
「食事は終わりました。仕事の話をしましょう」
「ええよ」
エリザの了解を得て、ハンは立ち上がり、敬礼する。
「実際に現地へ赴いて下さっていますし、陛下からもお話を伺っていることとは思いますが、改めて状況の確認から。
現在、ノースポートは正体不明の集団によって占拠されており、元いた住民は近隣に避難しています。このままでは住民の生活がままならず、漁業を中心とした産業が停滞、壊滅的な被害を被ることとなります。そうなれば陛下の統治下にある者にも、多少なりとも影響が出るでしょう。
そこで陛下は大隊を率い、敵性集団の討伐を行うよう、俺に命じました。ここまではご承知の通りかと思いますが」
「うん、聞いとるで。で、アタシにも手伝わせようっちゅうコトやな」
「ええ。エリザさんには副隊長として、俺と共に大隊を指揮していただきたいと考えています」
そこでハンは言葉を切り、エリザの反応をうかがう。
エリザは特に断るような素振りも無く、素直にうなずいた。
「ええよ。ソコら辺はゼロさんと話付いとる。やらさせてもらうわ」
「ありがとうございます」
ハンは深々と頭を下げ、続いて討伐の具体的な作戦を話し合おうと、口を開きかけた。
「では……」「ちなみにな」
が、エリザはそれをさえぎり、にこっと笑ってきた。
「肝心の作戦やけど、もう粗方まとめとるから」
「……何ですって?」
ハンの心の中に、驚きと苛立ちが同時に沸き起こる。
それもまた、彼女に見透かされていたらしく、エリザは依然として笑みを崩さない。
「何もアンタをびっくりさせようとか無視しとるとか、そんなんや無いで。
アンタらがこっちに来るまでに、結構日にちあったやろ? ぼーっと待っとってもしゃあないし、そもそもアンタの言う通り、長いコト放っとったら影響も出て来る。でける限り早よ、討伐に行かなアカン。ソレは分かるやろ?」
「そう、ですね。それは、まあ」
「せやからアタシの方で、でけるトコまで作戦詰めといたんよ。勿論アンタが聞いてみて、『こらアカンやろ』ってトコがあったら、一緒に修正したらええしな。
ちゅうワケで、説明するで」
「ええ、はい」
まだわだかまったものは残りつつも、ハンは仕方無く、素直にエリザの作戦を聞くことにした。
「今回、ゼロさんが一番望んどるであろうコトは、敵やと見なしとるヤツらがノースポートからおらんようになるコトや。
となれば無理に人を押しかけて、正面切って殴り合いになるんは得策や無い。そら上手く行けば相手を蹴散らせるやろけど、こっちかて被害出るしな。ソレより無力化させる方が、後々都合のええコトになるはずや」
「以前、ノースポートからの帰路で先生が仰っていたお話ですね」
ビートの発言に、エリザはうんうんとうなずいて返す。
「そう言うコトやね。相手は単なるバケモノや無い、意思疎通のでける人間や。無闇に戦おうとしたら相手かて抗戦しよるやろし、そうなったら最悪、何ヶ月もやり合わなアカン羽目になる。そんなん、誰かて得しいひん。
そんなアホなコトをダラダラ続けるより、一度相手を黙らせてから、こっちに『話し合おうと思てるんやけど』っちゅう態度見せて、話し合いに持って行った方が絶対ええわ」
「それでエリザさん、無力化と仰いましたが、具体的には?」
ハンの質問に、エリザは使用人に「アレ持ってきて」と指示を出しつつ、こう答える。
「一番やる気無くさせるんは、『無力や』『どうしようもでけへん』と思わせるコトや。例えばや、ぎゅうぎゅうに縛られたら、どないもこないもならへんやろ?」
「そりゃ、まあ」
「ソレと同じ状況に持ってくんや。アイツら完全包囲して、あらゆる攻撃手段を封じたる。ソレやったらバタバタと野戦するより百倍楽やし、被害も出えへん。
ソコで問題となるんが、2点や」
- 関連記事



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~