黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第3部

    琥珀暁・奪港伝 3

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    神様たちの話、第135話。
    ハンニバル尉官の大立ち回り。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
     門方面へ進み、程無くしてハンたちは、焦燥した顔で走ってくる熊獣人の姿を確認する。
    「**ッ!」
     何かを叫びつつ、その辺りで手に入れたらしい銛(もり)を振り上げ、ハンに迫ってくる。
    「お前たちは散開し、あいつの横、もしくは背後に回れ。俺が正面に受ける」
    「はい!」
     兵士たちは命じられた通りに動き、熊獣人を囲む。
    「*! ****!」
     それを受け、熊獣人は忙しなく辺りをうかがいつつ、銛の先を彼らに差し向ける。
     だが、どうやら自分の正面に立ったハンがリーダーであることを察したらしく、やがてハンに向かって銛を構えた。
     それに応じ、ハンも剣を鞘から抜き払い、熊獣人に向かって構える。
    「言葉は分からんだろうが、一応言っておくぞ。
     抵抗するなら容赦はしない。大人しく、投降しろ」
    「……***!」
     やはり意味は伝わらなかったか、それとも端から無視するつもりだったか――熊獣人は咆哮とも思えるような怒声を発し、ハンに襲い掛かってきた。
    「**ッ!」
     熊獣人の突きをかわし、ハンは右に回り込む。
    「はッ」
     そのまま右手一本で剣を払い、熊獣人の胴を狙う。しかし一瞬早く熊獣人が飛び退き、剣は空を切る。
     だが――。
    「そこだッ!」
     ハンはぐるんと剣を縦に回しつつ、両手持ちに切り替えると同時に左、右と足を踏み込み、ブン、と重い音を立てて剣を垂直に振り下ろした。
    「*ッ、**!」
     熊獣人はどうにか銛を水平に構え、その太刀を受けようとしたようだが、銛は真っ二つに断たれ、用を成さなくなる。
    「まだやるか?」
     ハンは熊獣人をにらみつけ、そう問いかける。
     その問いかけが理解できたのか、それともハンに恐れをなしたのか――熊獣人は銛を捨て、両手を挙げたまま、その場に立ちすくんだ。
    「降伏の意思ありと見なす。拘束しろ」
     ハンは熊獣人に剣の先を向けたまま、兵士たちに命じた。

     この時も、シェロは他の兵士たちと共にハンに追従し、熊獣人の包囲に参加していた。
     当然、ハンが熊獣人を下す一部始終も、間近で確認しており――。
    (……まずいな。今のままじゃ、どうやったってあの人には、勝てそうに無い)
     誰にも聞かれないような小声で、シェロはそうつぶやいていた。



     すべての敵を拘束してから程無くして、エリザと、彼女が率いてきた60名とがノースポートの港に入った。
    「おつかれさん、ハンくん。
     ほんで、敵さんらはどないしとるん? 何や、1人暴れたって聞いたけども」
    「その1名については、無事捕らえています。先に拘束した敵と合わせ、全員を応急的に、街の納屋や倉庫に放り込んでます。
     住民たちがこっちに戻り次第、向こうの砦に移送しようかと」
    「妥当なトコやね。……あー、と」
     エリザは胸元からするっと煙管を取り出し、きょろきょろと辺りを見回す。
    「煙草持ってへん? 海の上で火事なんか出したらワヤやから、持ってきてへんねん」
    「俺は元々吸いません。それに作戦行動中には吸わないよう、隊の人間には指示していますから」
    「しゃあないなぁ。あ、ロウくん。アンタ持っとる?」
     エリザはハンの近くで突っ立っていたロウに声をかけるが、彼も首を横に振る。
    「すんません、俺吸えないんス」
    「あら、ホンマ? 吸いそうな顔しとるのに」
    「臭いが無理っス」
    「ふふ、かわええトコあるな」
    「なっ……、か、勘弁して下さいよ、こんなおっさんに向かって」
     顔を真っ赤にするロウをよそに、エリザは煙管を元通り、胸の間にしまい込む。
    「ほなガマンするわぁ」
    「そうして下さい」
     エリザは残念そうな顔をし――一転、ぱっと目を輝かせる。
    「あ、街の人やったら持っとるやんな? ほんなら早いトコ、連れて来よか」
    「エリザさん、どれだけ煙草に執着するんですか。
     いつも吸ってる印象があるんですが、多少は控えないと喉や肺を痛めますよ?」
     呆れた声で忠告したハンに、エリザはしれっとこう返した。
    「アカンねん。アタシ、煙草切れたら窒息してまうんよ」
    「……完全に中毒ですね」
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    なるほど。
    そこら辺については次節にて説明します。

    NoTitle 

    いや、ロウとしゃべるんじゃなくて、テレパシーがあれば、言葉が通じない捕虜とも簡単にコミュニケーションが取れるだろう、と……(^^;)

    なければしかたがないですが(^^;)

    NoTitle 

    こちらの世界では、魔術は超能力とイコールなものではありませんからねぇ。
    魔術による通信については前話で触れていますが、人の心の中に直接語りかけるような術についてはどうやら、モールが教えてないようです。
    (テレパシー的な術自体は、双月シリーズのとある回で某一門の方がやってたので、あるにはあるみたいです)

    なお、もしそう言う術をエリザが持っていたとしても、ロウがそれを感知できるかどうか。
     エリザ(おーい……聞こえとるかー……?
     今アンタの心に直で語りかけて……)
     ロウ「んあ? ……なんか聞こえた気ぃしたけど、気のせいか」
    みたいなことになりそう。

    NoTitle 

    エリザおばはん、高度な術者とかいうとって、テレパシーくらい使えへんのか、と思ってしまう今日この頃である。
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