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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第3部

    琥珀暁・奪港伝 5

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    神様たちの話、第137話。
    祝勝会にて。

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    5.
     大隊360人の協力もあって、奪還したその日の夜には、ノースポート住民のほとんどが帰宅可能な状態となっており、大隊の祝勝会を催す余裕すらできていた。
    「さぁさぁ、隊長さん! ご挨拶の方を!」
     町民たちから急ごしらえの壇に上げられ、ハンは戸惑いつつも、挨拶を行った。
    「あー、と。まあ、……今回の作戦が成功し、こうしてノースポートの皆が無事に家へ帰れたこと、心からうれしく思っている。
     住民の皆に平和が戻ったことを祝して、乾杯!」
     どうにかそれらしいことを述べ、ハンは内心ほっとしつつ、壇を降りる。
    「おつかれさん」
     と、エリザがニコニコしながら、ハンに酒の入ったコップを手渡してくる。
    「ああ、どうも」
     とりあえず受け取るが、ハンはそれに口を付けず、エリザに文句めいた言葉を返す。
    「エリザさんも挨拶したらどうです? 壇上でチラっと見てましたが、俺が乾杯って言う前に呑んでたでしょう」
    「ええやないの、細かいコトは。挨拶も一番偉いのんが一言二言、ぽいぽいっとやったらええねん。2人や3人がかりでベラベラしゃべり倒す必要あらへんやろ。料理冷めるで」
    「……確かにそうですね。ひんしゅくを買うでしょう」
     それ以上の抗弁をやめ、ハンは酒を呑もうとした。
     と、そこでビートが声をかけてくる。
    「尉官、エリザさんから今回の作戦の不明点について、説明したいことがあるとのことです」
    「ん? ……ふむ」
     呑むのをやめ、ハンはエリザに向き直る。
    「説明していただけると? これまで何回説明しても、『えーからえーから』で返してきたのに?」
    「作戦終了した後やから、何でも答えたるよ。ほなあっちの方、座ろか」
    「分かりました」
     コップを手に持ったまま、ハンが近くの卓に向かったところで、エリザがこそっとビートを小突く。
    「呑ませたりいや。おもろいコトになるで」
    「だからです。僕だって説明が欲しいですからね。
     尉官に終わりの無い話をダラダラさせて、うやむやにさせるわけには行きません」
    「あらー」

     卓にはハンの他、マリアとシェロ、そしてロウが既に着いていた。
     ハンはまだコップを手にしたまま、エリザに声をかける。
    「ではエリザさん、早速聞かせていただきましょうか。
     まず、何故今回の作戦において予め用意されていた正規の兵士、言い換えれば戦闘に熟練した人間を100名も減らし、熟練しているとは思えない在野の人間60名引き入れたのか。
     そしてそこにいる『狼』、彼をどうして今回の作戦に参加させたのか。俺がどうしても腑に落ちないのは、その2点です。納得行く説明をしてくれるんですよね?」
     軽くにらみつけてくるハンに対し、エリザはくっくっと軽く笑いながら、するっと席に付く。
    「さあ? アンタが納得行くかどうかっちゅうのんは、アンタの受け取り方次第やしな。アタシはアタシの合理に沿った理由を話すだけや。
     ソレでええなら、なんぼでも説明したるけどな」
    「分かりました。それでお願いします」
    「ほなまずは、アタシんトコの人員を入れた件についてやね。
     確かにハンくんの言う通り、戦闘に関してはアタシんトコのんより、軍にいとる人らの方が得手やろな。ふつーに勝負したら3対7くらいでボコ負けするやろ。
     せやけども、ソレは陸の上で、まともに正面切ってやり合った場合や。海の上でやったら、どないやろな」
    「……ふむ」
     ハンはコップを卓に置き、話に集中する様子を見せる。
    「つまり我々では、海上における戦闘、いや、海上での活動全般において、エリザさんの配下より劣ると言うわけですか」
    「語弊はあるやろけども、まあそう言うコトやね。
     アタシが用意しとったんは、元々漁やら何やらで日常的に海に出とる子らやねん。寝とる時間除いたら、陸より海におる時間の方が長いくらいの子ばっかりや。
     実際、アタシは最初の1日、2日、ちょい船酔いしてしもたんやけど、他の60人は1週間強の航海中、一度もそんなヘマしよらんかった。ハンくんトコの300人、いや、元の400人やったら、どないやったやろな」
    「そう言われれば確かに、下手を打っていた可能性は十分に考えられますね。
     仮にエリザさんが今回行ったような威嚇ではなく、接岸・上陸しての作戦であったなら、まともに動けるかどうかさえ怪しかったでしょう」
    「あ、それなんスけど」
     と、ここでロウが手を挙げた。
    「なんで威嚇だったんスか? エリザさんのお力があれば、海からバンバン攻撃できたと思うんスけど」
    「何でもかんでも叩きのめせばええっちゅう話とちゃうねん。アンタやないねんから」
     エリザは苦笑しつつ、それについても説明した。
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