「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第3部
琥珀暁・北報伝 2
神様たちの話、第141話。
シモン家、ふたたび。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
2.
ゼロへの帰還報告から1時間後、ハンたちはシモン家に集まっていた。
「おかえり、……あれ? クーちゃん、久しぶりー」
一行が玄関を抜けてすぐ、ハンの妹の一人、テレサが出迎える。
「お久しぶりです、テレサちゃん。またお邪魔いたしました」
「今日も泊まってくの?」
「そのつもりですわ」「待て」
クーが答えると同時に、ハンがさえぎろうとする。
「はっきり言っておくが、今度は泊まらせ……」「そう言うことですので、今夜もよろしくお願いいたしますね」
「は~い」
しかし止める間も無く、二人の間で話がまとまる。
「いや、聞けって。そんなに毎回毎回……」
なおも抗おうとするハンをよそに、マリアたちも話の輪に加わる。
「はじめまして、シモン尉官の部下の、マリア・ロッソです」
「同じく、部下のビート・ハーベイです」
「え? 部下?」
テレサはきょとんとした顔になり、憮然としたままのハンに尋ねる。
「ほんと、お兄ちゃん?」
「ああ」
「初めてだよね? お兄ちゃんが仕事かんけーの人、家に連れてくるのって」
「そうだな」
「なんかあったの?」
「変なことは何も無い。クーが一緒に来いって言って、誘っただけだ」
「へー」
テレサはチラ、とクーを見て、もう一度ハンに向き直る。
「お兄ちゃん」
「何だ?」
「クーちゃんとけっこんでもすんの? って言うか、もうしたの?」
「はぁ!? 何でそうなる!?」
「だって、お尻にしかれすぎだもん」
「なっ……」
唖然とするハンをよそに、マリアたちはクスクス笑っていた。
そして夕食の席でも、ハンは父に小突かれていた。
「お前……、本っ当に気を付けろよ?」
「……分かってるよ」
ゲートに釘を差され、ハンは歯切れ悪く弁解する。
「いつまでもクーの思い通りにはさせないつもりだ。いずれビシっと言うよ」
「お前なぁ」
それに対し、ゲートは呆れた目を向けてくる。
「気持ちがもう負けかけだろ。『つもり』とか『いずれ』とか、弱腰もいいとこじゃないか」
「いや、それは、言葉の綾で」
「もう諦めて、あの子に流された方がいいんじゃないか、いっそ?」
一転、ゲートは真面目な顔になる。
「何だかんだ言って、可愛いしな。それにゼロの娘婿なら、軍での将来も安泰だろうし」
「そんな話はしたくないし、聞きたくない。親父の口からなら、尚更だ」
「分かってないな。俺だから言える話だぞ。
お前もボチボチ、嫁さん探す頃合いだろ? 人生の先輩としちゃ、むしろここでガンガン言っとかずに、いつ言うんだっての」
「勘弁してくれよ。第一、クーはまだ子供だぞ」
「もう1年、2年も経てば年頃だ。今から関係作っとくってのも、アリだと思うがな」
「馬鹿言え」
と、二人の間にマリアが割って入る。
「二人でこしょこしょ、何話してるんですかー?」
「ん? おー、マリアか」
ゲートが振り向き、ニヤっと笑いながら、ハンを親指で指す。
「なに、コイツの身の振りについて、ちょっとな」
「身の振り、ですか?」
マリアは二人の顔を見比べ、続いて尋ねてくる。
「もしかしてシモン班、解散するとか?」
「あー、いや、そう言う話じゃない。コイツがクーのことをどう思ってるんだって、そう言う話だよ」
「あ、それあたしも聞きたいですねー」
マリアもニヤニヤしながら、ハンに尋ねる。
「尉官は結局、クーちゃんのこと、どう思ってるんですか?」
「どうもしない。特に何とも思っちゃいない」
ハンがぶっきらぼうにそう答えたが、マリアは依然、ニヤニヤとしている。
「またまたー」
「ハン、看破されてんぞ。本当にお前、隠しごとできない性質だな」
「どこがだよ。俺は思ったままのことを、そのまま言ってるんだ。繰り返すが、クーのことなんてどうとも思っちゃいない」
ハンは憮然とした様子でそう答えたが、マリアもゲートも、首を振って返す。
「素直じゃないですねー」
「まったくだ。一体誰に似たんだかな」
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シモン家、ふたたび。
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2.
ゼロへの帰還報告から1時間後、ハンたちはシモン家に集まっていた。
「おかえり、……あれ? クーちゃん、久しぶりー」
一行が玄関を抜けてすぐ、ハンの妹の一人、テレサが出迎える。
「お久しぶりです、テレサちゃん。またお邪魔いたしました」
「今日も泊まってくの?」
「そのつもりですわ」「待て」
クーが答えると同時に、ハンがさえぎろうとする。
「はっきり言っておくが、今度は泊まらせ……」「そう言うことですので、今夜もよろしくお願いいたしますね」
「は~い」
しかし止める間も無く、二人の間で話がまとまる。
「いや、聞けって。そんなに毎回毎回……」
なおも抗おうとするハンをよそに、マリアたちも話の輪に加わる。
「はじめまして、シモン尉官の部下の、マリア・ロッソです」
「同じく、部下のビート・ハーベイです」
「え? 部下?」
テレサはきょとんとした顔になり、憮然としたままのハンに尋ねる。
「ほんと、お兄ちゃん?」
「ああ」
「初めてだよね? お兄ちゃんが仕事かんけーの人、家に連れてくるのって」
「そうだな」
「なんかあったの?」
「変なことは何も無い。クーが一緒に来いって言って、誘っただけだ」
「へー」
テレサはチラ、とクーを見て、もう一度ハンに向き直る。
「お兄ちゃん」
「何だ?」
「クーちゃんとけっこんでもすんの? って言うか、もうしたの?」
「はぁ!? 何でそうなる!?」
「だって、お尻にしかれすぎだもん」
「なっ……」
唖然とするハンをよそに、マリアたちはクスクス笑っていた。
そして夕食の席でも、ハンは父に小突かれていた。
「お前……、本っ当に気を付けろよ?」
「……分かってるよ」
ゲートに釘を差され、ハンは歯切れ悪く弁解する。
「いつまでもクーの思い通りにはさせないつもりだ。いずれビシっと言うよ」
「お前なぁ」
それに対し、ゲートは呆れた目を向けてくる。
「気持ちがもう負けかけだろ。『つもり』とか『いずれ』とか、弱腰もいいとこじゃないか」
「いや、それは、言葉の綾で」
「もう諦めて、あの子に流された方がいいんじゃないか、いっそ?」
一転、ゲートは真面目な顔になる。
「何だかんだ言って、可愛いしな。それにゼロの娘婿なら、軍での将来も安泰だろうし」
「そんな話はしたくないし、聞きたくない。親父の口からなら、尚更だ」
「分かってないな。俺だから言える話だぞ。
お前もボチボチ、嫁さん探す頃合いだろ? 人生の先輩としちゃ、むしろここでガンガン言っとかずに、いつ言うんだっての」
「勘弁してくれよ。第一、クーはまだ子供だぞ」
「もう1年、2年も経てば年頃だ。今から関係作っとくってのも、アリだと思うがな」
「馬鹿言え」
と、二人の間にマリアが割って入る。
「二人でこしょこしょ、何話してるんですかー?」
「ん? おー、マリアか」
ゲートが振り向き、ニヤっと笑いながら、ハンを親指で指す。
「なに、コイツの身の振りについて、ちょっとな」
「身の振り、ですか?」
マリアは二人の顔を見比べ、続いて尋ねてくる。
「もしかしてシモン班、解散するとか?」
「あー、いや、そう言う話じゃない。コイツがクーのことをどう思ってるんだって、そう言う話だよ」
「あ、それあたしも聞きたいですねー」
マリアもニヤニヤしながら、ハンに尋ねる。
「尉官は結局、クーちゃんのこと、どう思ってるんですか?」
「どうもしない。特に何とも思っちゃいない」
ハンがぶっきらぼうにそう答えたが、マリアは依然、ニヤニヤとしている。
「またまたー」
「ハン、看破されてんぞ。本当にお前、隠しごとできない性質だな」
「どこがだよ。俺は思ったままのことを、そのまま言ってるんだ。繰り返すが、クーのことなんてどうとも思っちゃいない」
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今日の旅岡さん

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- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
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NoTitle
今はいい遊ばれキャラになってるけど、ハンくん、三章くらい先で、「来年結婚しようぜ」とかいってそのまま帰らぬ人になりそうな予感がする(そうか?)
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NoTitle
その次はどうなるか考え中ですが……。