黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第3部

    琥珀暁・北報伝 5

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    神様たちの話、第144話。
    北の世界の報せ。

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    5.
    《指導者……?》
    「魔術頭巾」による通信でクーから話を聞かされ、ゼロは神妙な声を上げた。
    《名前は何と?》
    「レン・ジーン、と言う名前だそうですわ。通称、『天星』のレンと」
    《『天星』レン、……か》
     ゼロの声には、明らかに当惑の色が混じっていた。
    《クー、その土地にはバケモノがいたとか、そう言う話は聞いたかな》
    「いえ。飢えと寒さに苦しんでいたと言うお話は何度も伺いましたけれど、怪物が出現したと言うようなことは、一言も仰いませんでした」
    《バケモノがいない……? まあ、他に大きな困難が存在するなら、そもそも設置は意味が無い、と言うことか。それ以前に、人が住める状況じゃないかも知れないし》
    「何のお話でしょうか、お父様?」
     一人言をつぶやくゼロに、クーが声をかける。
    《ああ、ごめんごめん。……ふむ、レンか。
     できるようなら、勾留者の中から誰か1人、私の前に連れて来てほしいな。もっと詳しく、話を聞きたいから》
    「承知いたしました。すぐハンに伝えます」



     シモン班は勾留者の中から1名、リーダーの熊獣人を連れて、クロスセントラルへと帰還した。
     彼はすぐにゼロの前に連れられ、厳戒態勢の中で謁見させられることとなった。
    「既に娘から話を聞いていると思うけど、私がこの地を治めている、ゼロ・タイムズだ。よろしく」
    「(よ、……ろしく)」
     熊獣人はおずおずとした仕草で、ゼロの前に置かれた椅子に座る。
    「(あなたも魔法使いなのか? 娘さんも突然、私にペラペラと流暢に、話しかけてきたが)」
    「そう呼ばれることもある。まあ、色々聞きたいことはあると思うけれど、先に私の方から質問させてほしいんだ。
     この地を治める者として、君たちが我々にとって、絶対的かつ普遍的に危険な存在であるか、それとも否、話し合う余地がある人たちなのか。それは第一に確認しなければならないことだから。いいかな?」
    「(承知した)」
    「まず、名前から聞かせてもらっていいかな」
    「(イサコ・トロコフだ)」
    「今回、君たちは50名以上で組織だって、我々の土地に乗り込んできたけれど、君たちは軍隊と言う認識でいいのかな」
    「(そうだ。軍における階級は尉官である)」
    「その軍隊の総司令官、トップと言える人間は、レン・ジーンと言う者かな」
    「(そうだ)」
    「今回の航海は、ジーンからの命令で行われたのかな」
    「(そうだ)」
    「その目的は?」
    「(ジーン陛下は、我々に新たな土地を見付けるよう命じられた。豊かで暖かく、広大な土地を見付けよ、と)」
    「そして恐らくは、そこへ移住することを目的としていただろう」
    「(そうなる)」
     質問を重ねるうち、ゼロの表情が目に見えて、渋いものになっていく。
    「……では、……これを聞くことは、あまり私にとって愉快では無いことだけど、……聞かなきゃならないだろう。
     もしも新たな土地に先住民がいた場合、君たちはどのような対応を採るべきか、指示されていたのかな」
    「(そうした場合の対応については、陛下からはただ一点のみ、こう命じられている。
     襲え、と)」

     質問を終えてすぐ、ゼロはゲートをはじめとする将軍たちを招集し、緊急会議を開いた。
    「イサコ尉官によれば、彼らの探索の期間は3年と設定されていたそうだ。
     即ち、それまでに彼らが故郷へ帰還しなければ、ジーン側本営はもう一度、探索隊を送るだろう。2倍か3倍か、あるいはもっと多くの人員をね」
    「それは何故です?」
    「貧しい土地で汲々としている彼らが、たった一度の失敗で諦めることは考えにくい。人員を増やして再度探索に向かうであろうことは、容易に想像できる。
     今回の事件では、街が占拠された期間は3ヶ月を超えた。町民全員が家を追われる羽目になったし、我々の側の対応如何では、生命を奪われる危険もあった。探索隊50人で、その被害だ。探索隊の数が2倍、3倍と増えたら、単純に考えて2倍、3倍の被害が出ることになるだろう。
     しかも一度全滅させれば終わり、とはならない。彼らは諦めないからだ。必ずもう一度、もう一度と、何度も繰り返すだろう。僕たちだってバケモノ根絶のため、徹底的にこの地を東奔西走し、根絶やしにしたんだから。
     人間は自分の生活が、生命がかかってるとなれば、己が抱える恐怖や重圧、そして良識をも踏み越える生き物だからだ」
    「じゃあ、ゼロ」
     ゲートが挙手し、こう尋ねる。
    「お前はどう対応する?」
    「一番いいのは、彼らと対話し、双方にとって良好な関係を築くことだ。
     だけどイサコ尉官の話によれば、彼らの首長であるジーンは、『新たな土地に人がいれば襲え』と命じていたと言う。
     ジーンは私たちと関係を築くなんてことは、まったく考えていないんだろう」
    「では……」
     他の将軍が、恐る恐る声を上げる。
    「陛下は、今後また更なる戦いが起こるだろう、と?」
    「この地でそんなことは、絶対に起こさせない」
     ゼロはきっぱりと答え、対策を述べた。
    「私たちから彼らの地へ出向き――占拠はしないまでも――駐留して、交渉を持ちかけよう。その交渉が決裂、あるいは交渉そのものが実らなければ、示威行動を採る。
     もし我々と戦うようなことになれば、ただでは済ませないぞ、と」
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