DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 10 ~ 燃える宝石 ~ 4
ウエスタン小説、第4話。
三流探偵。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
4.
「って言うと?」
きょとんとした顔を並べるダンたちに、エミルが呆れた目を向ける。
「サムたちが向かった場所は分かったわよ。その目的も把握したし、あんたたちの状況についてもオーケーよ。
で、サムが今どう言う状況にあるか、それは予想できてる?」
そう問われ、ダンがさも当然と言いたげに答える。
「そりゃ、組織に捕まってるってことだろ。こんな状況だし、それ以外考えられんぜ」
そこでアデルが「いや」と口を挟む。
「そうは言い切れん。何でもかんでも組織の仕業ってわけじゃ無いだろ。
そもそもさっき言ってた匿名の電話、『組織を探ってるチームは全員潰した』って話だが、サムたちは探ってたわけじゃないだろ?」
「……あ、そう言やそうか」
「脅しの材料にするなら、俺たち3チームを潰したってことをそのまんま伝えりゃ、それで十分だ。組織の捜査に加わってないサムたち4人にまで手ぇ出すなんて、余計な手間が増えるってだけだぜ。よっぽどのヒマ人共なのかよって話になる。
第一、特務局が凍結された今、サムたちや、捜査で出かけてる他の局員には、組織に対抗できるような手立ては無くなってる。普通に考えりゃ、そいつらは放っとけば路頭に迷っておしまいだ。
そんなのをわざわざ襲うなんて悠長なことするくらいなら、もっと別のことに人員やらカネやら費やすだろう。それこそ政府施設を襲うだとか、列車強盗するだとかな。
故に、この事件に組織が関わってるって可能性は、かなり低い。となれば、もっと高い可能性を追った方がいい」
「な……る、ほど」
ダンが黙り込んだところで、アデルはこう続ける。
「普通の事件と同様のケースで考えてみて――組織なんかと関係無い、いつも俺たちが関わってる捜査だとして――その横領犯に返り討ちにされたって可能性が一番高いだろう」
「そう、そこよ。その横領犯にやられてる可能性が高いでしょうに、あんたたち全然、そこに触れようとしないじゃない。『組織の仕業に違いない』って決めつけて。
いくら組織が今、あんまりにも目立ってるからって、最も有り得る可能性を無視して慌てふためいてたら、簡単に足元すくわれるわよ。
突飛なことをあれこれあげつらうより、まずは可能性の高い方から順に、対応策を考えるべきじゃない?」
「う……」
ダンが恥ずかしそうに顔を赤らめたところで、エミルがさらに追及する。
「と言うか、そもそもサムたちからの電話連絡が無くなったってだけでしょ、現状で分かってるのは。
それならミラー局長の当初の予測通り、電話の無い環境にいるってだけじゃないの? N州なんて合衆国の外れみたいなところなんだし」
「ま、まあ、そうだな」
「あんたたち、やってることが滅茶苦茶よ。ちょっと予想外の事態に見舞われたくらいで、まともな議論もできないくらいにうろたえちゃって。
よくそんな体たらくで、捜査員なんかやってたもんね」
「め、面目無い」
散々突っつかれ、ダンは目に見えてげんなりしている。
見かねたのか、エミルは語気を、いくらか優しいものに改めた。
「はあ……。とにかく、集められるだけの情報を集めましょう。
とりあえずあたし、局長に電話してくるわね。あ、ミラーさんの方じゃなく、うちのパディントン局長の方ね」
「なんで?」
一転、面食らった顔を並べ、エミルの後ろ姿を見送るダンたち3人に、アデルが代わりに説明した。
「特務捜査局が大変な状況にあるってことは、パディントン局長も把握してるはずだ。なんだかんだ言って『商売仲間』だし、持ちつ持たれつの関係も築いてきたんだからな。
だからほぼ確実に、局長も俺たちの身を案じてるだろうし、対応策もいくらか用意してるだろう」
「まさか! いくらあの『フォックス』でも、そこまで……」
ハリーが反論しかけたところで、電話口に立っていたエミルが、一同に声をかけてきた。
「局長から指示があったわよ。『一同、N州へ向かい状況確認を行うとともに、サムたちが危険な状態にある場合には、速やかに救出を行うこと。なお、特務局の状況は把握している。ダンたち3名についても、現状では帰投せず同行し、一旦探偵局に逃げた方が懸命だろう。受け入れる準備をしておく』だそうよ」
「……は?」
「マジでか……」
「……怖ええな、あのおっさん」
ダンたち3人は揃って顔を青ざめさせ、口をつぐんだ。
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「って言うと?」
きょとんとした顔を並べるダンたちに、エミルが呆れた目を向ける。
「サムたちが向かった場所は分かったわよ。その目的も把握したし、あんたたちの状況についてもオーケーよ。
で、サムが今どう言う状況にあるか、それは予想できてる?」
そう問われ、ダンがさも当然と言いたげに答える。
「そりゃ、組織に捕まってるってことだろ。こんな状況だし、それ以外考えられんぜ」
そこでアデルが「いや」と口を挟む。
「そうは言い切れん。何でもかんでも組織の仕業ってわけじゃ無いだろ。
そもそもさっき言ってた匿名の電話、『組織を探ってるチームは全員潰した』って話だが、サムたちは探ってたわけじゃないだろ?」
「……あ、そう言やそうか」
「脅しの材料にするなら、俺たち3チームを潰したってことをそのまんま伝えりゃ、それで十分だ。組織の捜査に加わってないサムたち4人にまで手ぇ出すなんて、余計な手間が増えるってだけだぜ。よっぽどのヒマ人共なのかよって話になる。
第一、特務局が凍結された今、サムたちや、捜査で出かけてる他の局員には、組織に対抗できるような手立ては無くなってる。普通に考えりゃ、そいつらは放っとけば路頭に迷っておしまいだ。
そんなのをわざわざ襲うなんて悠長なことするくらいなら、もっと別のことに人員やらカネやら費やすだろう。それこそ政府施設を襲うだとか、列車強盗するだとかな。
故に、この事件に組織が関わってるって可能性は、かなり低い。となれば、もっと高い可能性を追った方がいい」
「な……る、ほど」
ダンが黙り込んだところで、アデルはこう続ける。
「普通の事件と同様のケースで考えてみて――組織なんかと関係無い、いつも俺たちが関わってる捜査だとして――その横領犯に返り討ちにされたって可能性が一番高いだろう」
「そう、そこよ。その横領犯にやられてる可能性が高いでしょうに、あんたたち全然、そこに触れようとしないじゃない。『組織の仕業に違いない』って決めつけて。
いくら組織が今、あんまりにも目立ってるからって、最も有り得る可能性を無視して慌てふためいてたら、簡単に足元すくわれるわよ。
突飛なことをあれこれあげつらうより、まずは可能性の高い方から順に、対応策を考えるべきじゃない?」
「う……」
ダンが恥ずかしそうに顔を赤らめたところで、エミルがさらに追及する。
「と言うか、そもそもサムたちからの電話連絡が無くなったってだけでしょ、現状で分かってるのは。
それならミラー局長の当初の予測通り、電話の無い環境にいるってだけじゃないの? N州なんて合衆国の外れみたいなところなんだし」
「ま、まあ、そうだな」
「あんたたち、やってることが滅茶苦茶よ。ちょっと予想外の事態に見舞われたくらいで、まともな議論もできないくらいにうろたえちゃって。
よくそんな体たらくで、捜査員なんかやってたもんね」
「め、面目無い」
散々突っつかれ、ダンは目に見えてげんなりしている。
見かねたのか、エミルは語気を、いくらか優しいものに改めた。
「はあ……。とにかく、集められるだけの情報を集めましょう。
とりあえずあたし、局長に電話してくるわね。あ、ミラーさんの方じゃなく、うちのパディントン局長の方ね」
「なんで?」
一転、面食らった顔を並べ、エミルの後ろ姿を見送るダンたち3人に、アデルが代わりに説明した。
「特務捜査局が大変な状況にあるってことは、パディントン局長も把握してるはずだ。なんだかんだ言って『商売仲間』だし、持ちつ持たれつの関係も築いてきたんだからな。
だからほぼ確実に、局長も俺たちの身を案じてるだろうし、対応策もいくらか用意してるだろう」
「まさか! いくらあの『フォックス』でも、そこまで……」
ハリーが反論しかけたところで、電話口に立っていたエミルが、一同に声をかけてきた。
「局長から指示があったわよ。『一同、N州へ向かい状況確認を行うとともに、サムたちが危険な状態にある場合には、速やかに救出を行うこと。なお、特務局の状況は把握している。ダンたち3名についても、現状では帰投せず同行し、一旦探偵局に逃げた方が懸命だろう。受け入れる準備をしておく』だそうよ」
「……は?」
「マジでか……」
「……怖ええな、あのおっさん」
ダンたち3人は揃って顔を青ざめさせ、口をつぐんだ。
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