DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 10 ~ 燃える宝石 ~ 5
ウエスタン小説、第5話。
事件の詳細。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
5.
パディントン局長から情報と指示を受け、一行は今後の対策を練ることにした。
「現時点でも相変わらず、特務局は凍結状態。ミラー局長も依然として拘束されたままだし、局員たちも――元々残ってた奴、捜査から戻ってきた奴問わず――オフィスに缶詰めにされてるそうよ。
サムについても、どうやら状況は変わってないみたい。局長が司法省の友人を介して情報を集めてるらしいんだけど、特務局宛ての電話は今のところ、ダンがかけたやつだけみたいね」
「俺たちが出発する直前にサムたちのチームは出発してたから、日数から考えて、とっくに到着してるはずだ。首尾良く行ってるならもう逮捕し終えて、どこか電話の通じる駅まで戻って、連絡するはずだろう。
それが無いってことは……」
「横領犯を見付けられないでいるか、返り討ちに遭ってる可能性が高いってことだ。どっちの場合にせよ、特務局のゴタゴタを知れるような状況には無いだろう。
どうあれ、俺たちが行く必要があるだろうな」
アデルの言葉に、一同はそろってうなずいた。
「となるとまず、事件の概要を知っとかないとな。ダン、その辺りは聞いてるのか?」
スコットに問われ、ダンはうなずいて返す。
「大丈夫だ。一応、メモしてるぜ。
まず、横領犯についてだが、名前はオーウェン・グリフィス。1842年生まれ、イングランド系。結婚歴はあるが、現在は妻子無し。
P州にあるメッセマー鉱業って石炭会社の社員だったんだが、1ヶ月前に約12万ドルを会社の金庫から盗み出し、蒸発。P州の警察当局が行方を調べたが、既に州内にいないことが分かった時点で、捜査は合衆国全域に捜査網を持つ特務局へと移管された。
で、特務局が捜査を続行し、N州アッシュバレーに会社が所有する炭鉱があること、そしてグリフィスがそこの責任者だったってことが分かった。そこからグリフィスはそこに逃げた可能性が高いだろうってアタリを付け、地元警察に張らせてたところ、本人らしき人物を付近で見かけたとの報告があった。で、サムたちに向かわせたってわけだ」
「グリフィスの特徴は?」
尋ねたアデルに、ダンは肩をすくめて返す。
「身長は5フィート7インチ。体重は147ポンド。体には傷やあざ、その他デカいほくろなんかも無し。茶髪で瞳の色は黒。特徴と言えるようなものはこれと言って無い。いわゆる『目立たない奴』だな。
仕事ぶりは真面目で、同僚や上司とはそれなりに親しくはしてたそうだが、一緒にメシ食ったり、どこか遊びに行ったりって付き合いは、ほとんど無かったそうだ。
事件発生時から姿が見えず、また、事件の直後に汽車で州を出ていたことが発覚したことから、P州当局、そして特務局共、彼を犯人と断定した、……ってわけだ」
ダンが事件の概要を説明し終えたところで、ハリーが首をかしげる。
「外部の犯行だとか、他に怪しい奴なんかは無かったのか?」
「犯行があったとされる時間帯――他の社員が退勤した夕方から、出社してくる朝まで――社内にいたのは、その日当直だったグリフィス一人だ。
そのグリフィスが事件後にP州の駅で目撃されていたことから、外部犯が当直のグリフィスを殺し、金庫を破ったって線はまず無い。
もし外部犯がグリフィスをすり抜けてカネ盗んでたって言うなら、グリフィスは素直に警察へ届け出るだろう。それをせず、P州から高飛びしてるってことは、ほぼ間違い無くグリフィスが犯人だってことになる」
「聞く限りじゃ、破綻や矛盾は無さそうね。さっきの組織云々と違って」
「やめろよ……」
ダンは顔を赤らめつつ、手帳を閉じる。
「これだけなら本当、どうってこと無い奴って感じなんだがな。これで何で、サムたちが手こずるんだか」
「ともかく、行くしか無いだろ」
アデルがそう返し、椅子から立ち上がる。
「今日はもう暗いし、列車も終業時刻をとっくに過ぎてる。
アルジャン兄弟だって列車に乗れたとは考え辛いし、馬か何かで、何十マイルも離れた隣町にでも移動中だろう。となれば組織に連絡して報復にやって来るだとか、そんなことをする間も無いはずだ。
ってわけで、一晩ゆっくり休んで、朝一番でN州へ向かおう。これ以上真剣な面(つら)付き合わせてあーだこーだ言い合ってたら、俺、マジにブッ倒れちまうぜ」
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事件の詳細。
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パディントン局長から情報と指示を受け、一行は今後の対策を練ることにした。
「現時点でも相変わらず、特務局は凍結状態。ミラー局長も依然として拘束されたままだし、局員たちも――元々残ってた奴、捜査から戻ってきた奴問わず――オフィスに缶詰めにされてるそうよ。
サムについても、どうやら状況は変わってないみたい。局長が司法省の友人を介して情報を集めてるらしいんだけど、特務局宛ての電話は今のところ、ダンがかけたやつだけみたいね」
「俺たちが出発する直前にサムたちのチームは出発してたから、日数から考えて、とっくに到着してるはずだ。首尾良く行ってるならもう逮捕し終えて、どこか電話の通じる駅まで戻って、連絡するはずだろう。
それが無いってことは……」
「横領犯を見付けられないでいるか、返り討ちに遭ってる可能性が高いってことだ。どっちの場合にせよ、特務局のゴタゴタを知れるような状況には無いだろう。
どうあれ、俺たちが行く必要があるだろうな」
アデルの言葉に、一同はそろってうなずいた。
「となるとまず、事件の概要を知っとかないとな。ダン、その辺りは聞いてるのか?」
スコットに問われ、ダンはうなずいて返す。
「大丈夫だ。一応、メモしてるぜ。
まず、横領犯についてだが、名前はオーウェン・グリフィス。1842年生まれ、イングランド系。結婚歴はあるが、現在は妻子無し。
P州にあるメッセマー鉱業って石炭会社の社員だったんだが、1ヶ月前に約12万ドルを会社の金庫から盗み出し、蒸発。P州の警察当局が行方を調べたが、既に州内にいないことが分かった時点で、捜査は合衆国全域に捜査網を持つ特務局へと移管された。
で、特務局が捜査を続行し、N州アッシュバレーに会社が所有する炭鉱があること、そしてグリフィスがそこの責任者だったってことが分かった。そこからグリフィスはそこに逃げた可能性が高いだろうってアタリを付け、地元警察に張らせてたところ、本人らしき人物を付近で見かけたとの報告があった。で、サムたちに向かわせたってわけだ」
「グリフィスの特徴は?」
尋ねたアデルに、ダンは肩をすくめて返す。
「身長は5フィート7インチ。体重は147ポンド。体には傷やあざ、その他デカいほくろなんかも無し。茶髪で瞳の色は黒。特徴と言えるようなものはこれと言って無い。いわゆる『目立たない奴』だな。
仕事ぶりは真面目で、同僚や上司とはそれなりに親しくはしてたそうだが、一緒にメシ食ったり、どこか遊びに行ったりって付き合いは、ほとんど無かったそうだ。
事件発生時から姿が見えず、また、事件の直後に汽車で州を出ていたことが発覚したことから、P州当局、そして特務局共、彼を犯人と断定した、……ってわけだ」
ダンが事件の概要を説明し終えたところで、ハリーが首をかしげる。
「外部の犯行だとか、他に怪しい奴なんかは無かったのか?」
「犯行があったとされる時間帯――他の社員が退勤した夕方から、出社してくる朝まで――社内にいたのは、その日当直だったグリフィス一人だ。
そのグリフィスが事件後にP州の駅で目撃されていたことから、外部犯が当直のグリフィスを殺し、金庫を破ったって線はまず無い。
もし外部犯がグリフィスをすり抜けてカネ盗んでたって言うなら、グリフィスは素直に警察へ届け出るだろう。それをせず、P州から高飛びしてるってことは、ほぼ間違い無くグリフィスが犯人だってことになる」
「聞く限りじゃ、破綻や矛盾は無さそうね。さっきの組織云々と違って」
「やめろよ……」
ダンは顔を赤らめつつ、手帳を閉じる。
「これだけなら本当、どうってこと無い奴って感じなんだがな。これで何で、サムたちが手こずるんだか」
「ともかく、行くしか無いだろ」
アデルがそう返し、椅子から立ち上がる。
「今日はもう暗いし、列車も終業時刻をとっくに過ぎてる。
アルジャン兄弟だって列車に乗れたとは考え辛いし、馬か何かで、何十マイルも離れた隣町にでも移動中だろう。となれば組織に連絡して報復にやって来るだとか、そんなことをする間も無いはずだ。
ってわけで、一晩ゆっくり休んで、朝一番でN州へ向かおう。これ以上真剣な面(つら)付き合わせてあーだこーだ言い合ってたら、俺、マジにブッ倒れちまうぜ」
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