DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 10 ~ 燃える宝石 ~ 7
ウエスタン小説、第7話。
追加連絡。
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7.
「息子?」
朝食のベーコントーストを飲み込み、ダンが尋ね返す。
「ええ。ただ、苗字も違うし、周囲の人間もそんな話聞いたこと無いって話だから、グリフィス本人は気付いてなかったかも知れないけど」
局長からの電話で、グリフィスの監督する鉱山に、彼の息子が勤めていたことが判明したと伝えられたのである。
「名前は?」
「会社には、ケビン・モリスンって登録してたそうよ」
「偽名、……とも何とも言えないな」
「局長がざっと調べた限りじゃ、本名じゃないかって。グリフィスの、別れた奥さんの苗字がモリスンらしいから」
「まあ、ケビンって名前も、モリスンって苗字も多いからな。グリフィスSrも息子だと思わなかったんだろう。
しかし偶然とは思えないな。親父の管理してる鉱山に、息子が勤めてたってのは」
アデルがつぶやいたその疑問に、エミルも同意する。
「そうね。事件もあったわけだし」
「思ったんだが」
と、ダンが手を挙げる。
「親子だって言うなら、似てたんじゃないか?」
「あん?」
「いやほら、駅だとか、アッシュバレーだとかで、グリフィスを見たって話だったろ?
もしかしたらそいつ、グリフィスじゃなく、息子のモリスンの方だったのかもって」
「……だとしたら?」
けげんな顔をしたハリーに、ダンは得意そうな様子でこう続ける。
「俺の推理だけど、グリフィスはもうとっくにモリスンに殺されてて、モリスンがカネを盗んだのかもって。
いやほら、グリフィスの評判から言って、盗みを働くようなタイプじゃないって話だったしさ。良くあるだろ、『似た顔のヤツが別にいた』って、アレだよ、アレ」
「三文推理小説ね、本当にそんな展開だったら」
ダンの仮説を聞いたエミルが、呆れた目を彼に向ける。
「もしその線が本当だったとしたら、事件から1ヶ月経ってるんだから、グリフィスの死体がどこかで発見されてるでしょ?
局長からそんな話聞いてないし、その事実は今のところ、無いみたいよ」
「近くの川にでも投げ捨てればそうそう見つかりゃしないだろうし、俺は有り得ると思うんだけどなぁ」
「相当な手間じゃない? 忍び込んでカネを盗んだ上、人を殺して川まで運び出すなんて、そんなこと一人で、誰にも見付からずにできるかしら。
第一、似てるとしても、親子なんだから、少なくとも20歳は年齢が違うはずでしょ? 40代の中年と20代の青年を見間違えるようなこと、そうそう無いと思うんだけど」
エミルの反論に、ダンを除く全員が賛成する。
「俺もそう思う」
「いくら何でも、話がうますぎだ」
「こじつけに近いぜ」
「……だよなぁ」
自分でもそう思ったのか、ダンは顔を赤らめつつ、コーヒーを一息に飲み干した。
「まあいいや、この話はこれくらいで。
ともかく、早くメシ食って支度しなきゃ、列車が出ちまうぜ」
「そうだな」
その後は取り留めもない話を交わしつつ、一行は朝食を平らげた。
列車に乗り込み、動き出したところで、エミルが「あ、そうそう」と続けた。
「局長からの電話、もう一つ伝えとくことがあったわ。
特務局の状況だけど、明日か明後日くらいには、ミラー局長と局員が解放されるかもって」
「解放されるって?」
ほっとした顔をするダンに、エミルは肩をすくめて返す。
「解放されるって言うより、追い出されるって言った方が的確でしょうけどね。
ここ数日、オフィスにいた全員の身辺調査を行って、組織だとかの裏が無いってことが判明したから、とりあえず家には帰してもらえるらしいけど――司法省に組織の手が及んでるとすれば――間違い無く局長以下、全員が更迭・免職されるわね。
組織にとって、特務局はパディントン探偵局の次にうっとうしい敵だもの。口実さえあれば、いつでも潰す気だったでしょうし」
「そうか……そうだよな」
ダンたちが意気消沈する横で、ロバートが不安そうに尋ねる。
「探偵局は大丈夫なんスか?」
「誰が潰すのよ? うちのトップは司法省長官でも州知事でも、大統領でもないわよ」
「……あ、そう言やそうっスね」
「そもそもうちにパディントン局長がいる限り、誰にも潰せやしないわ。そんな心配、あたしたちがする必要なんか無いし、気を揉むだけ無駄よ。
だからあたしたちは、捜査に集中しましょう。それがベストよ。あたしたちにとっても、局長にとってもね」
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「息子?」
朝食のベーコントーストを飲み込み、ダンが尋ね返す。
「ええ。ただ、苗字も違うし、周囲の人間もそんな話聞いたこと無いって話だから、グリフィス本人は気付いてなかったかも知れないけど」
局長からの電話で、グリフィスの監督する鉱山に、彼の息子が勤めていたことが判明したと伝えられたのである。
「名前は?」
「会社には、ケビン・モリスンって登録してたそうよ」
「偽名、……とも何とも言えないな」
「局長がざっと調べた限りじゃ、本名じゃないかって。グリフィスの、別れた奥さんの苗字がモリスンらしいから」
「まあ、ケビンって名前も、モリスンって苗字も多いからな。グリフィスSrも息子だと思わなかったんだろう。
しかし偶然とは思えないな。親父の管理してる鉱山に、息子が勤めてたってのは」
アデルがつぶやいたその疑問に、エミルも同意する。
「そうね。事件もあったわけだし」
「思ったんだが」
と、ダンが手を挙げる。
「親子だって言うなら、似てたんじゃないか?」
「あん?」
「いやほら、駅だとか、アッシュバレーだとかで、グリフィスを見たって話だったろ?
もしかしたらそいつ、グリフィスじゃなく、息子のモリスンの方だったのかもって」
「……だとしたら?」
けげんな顔をしたハリーに、ダンは得意そうな様子でこう続ける。
「俺の推理だけど、グリフィスはもうとっくにモリスンに殺されてて、モリスンがカネを盗んだのかもって。
いやほら、グリフィスの評判から言って、盗みを働くようなタイプじゃないって話だったしさ。良くあるだろ、『似た顔のヤツが別にいた』って、アレだよ、アレ」
「三文推理小説ね、本当にそんな展開だったら」
ダンの仮説を聞いたエミルが、呆れた目を彼に向ける。
「もしその線が本当だったとしたら、事件から1ヶ月経ってるんだから、グリフィスの死体がどこかで発見されてるでしょ?
局長からそんな話聞いてないし、その事実は今のところ、無いみたいよ」
「近くの川にでも投げ捨てればそうそう見つかりゃしないだろうし、俺は有り得ると思うんだけどなぁ」
「相当な手間じゃない? 忍び込んでカネを盗んだ上、人を殺して川まで運び出すなんて、そんなこと一人で、誰にも見付からずにできるかしら。
第一、似てるとしても、親子なんだから、少なくとも20歳は年齢が違うはずでしょ? 40代の中年と20代の青年を見間違えるようなこと、そうそう無いと思うんだけど」
エミルの反論に、ダンを除く全員が賛成する。
「俺もそう思う」
「いくら何でも、話がうますぎだ」
「こじつけに近いぜ」
「……だよなぁ」
自分でもそう思ったのか、ダンは顔を赤らめつつ、コーヒーを一息に飲み干した。
「まあいいや、この話はこれくらいで。
ともかく、早くメシ食って支度しなきゃ、列車が出ちまうぜ」
「そうだな」
その後は取り留めもない話を交わしつつ、一行は朝食を平らげた。
列車に乗り込み、動き出したところで、エミルが「あ、そうそう」と続けた。
「局長からの電話、もう一つ伝えとくことがあったわ。
特務局の状況だけど、明日か明後日くらいには、ミラー局長と局員が解放されるかもって」
「解放されるって?」
ほっとした顔をするダンに、エミルは肩をすくめて返す。
「解放されるって言うより、追い出されるって言った方が的確でしょうけどね。
ここ数日、オフィスにいた全員の身辺調査を行って、組織だとかの裏が無いってことが判明したから、とりあえず家には帰してもらえるらしいけど――司法省に組織の手が及んでるとすれば――間違い無く局長以下、全員が更迭・免職されるわね。
組織にとって、特務局はパディントン探偵局の次にうっとうしい敵だもの。口実さえあれば、いつでも潰す気だったでしょうし」
「そうか……そうだよな」
ダンたちが意気消沈する横で、ロバートが不安そうに尋ねる。
「探偵局は大丈夫なんスか?」
「誰が潰すのよ? うちのトップは司法省長官でも州知事でも、大統領でもないわよ」
「……あ、そう言やそうっスね」
「そもそもうちにパディントン局長がいる限り、誰にも潰せやしないわ。そんな心配、あたしたちがする必要なんか無いし、気を揉むだけ無駄よ。
だからあたしたちは、捜査に集中しましょう。それがベストよ。あたしたちにとっても、局長にとってもね」
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