DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 10 ~ 燃える宝石 ~ 8
ウエスタン小説、第8話。
ゴーストタウン。
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8.
スリーバックスを発って5日後、アデルたち一行はN州、アッシュバレーに到着した。
「……本当に何にも無いな」
通りを見渡すが、薄汚れた家屋がまばらにあるばかりで、賑わっているような様子は全く見られない。
「電線も無い。これじゃ確かに、電話連絡なんてできるはずが無いな」
「それどころじゃないぞ。郵便局も保安官オフィスも無い。軒並み潰れてる」
駅のすぐそばにあった建物を指差しつつ、ダンが呆れた声を漏らす。
「ほぼ廃村って感じだな。本当にこんなところに、人が住んでんのか?」
「そうね……」
エミルが往来を見回し、首を横に振る。
「ここ数ヶ月、馬車も荷車も通ってないって感じ。足跡も、せいぜい2人、3人ってところかしら」
「3人だろう。3種類ある」
アデルがしゃがみ込み、その足跡を調べる。
「ただ、靴の形は一緒だな。大きさは違うが、靴底のパターンが同じだ。恐らく会社か州軍だとかからの支給品なんだろう。
同じ会社の同僚3人が、駅に届いた荷物を受け取ったってところだろうな」
「それに靴底のパターンが、やたらゴツいぜ。相当ハードな環境で働いてるんだろうな」
ダンもアデルと同様にしゃがみ込み、その足跡を指先で触る。
「その可能性は高いな。となりゃ、メッセマー鉱業の人間ってことで間違い無いだろう。
……何だよダン、あんたも結構やるじゃないか」
「へへ……、伊達に特務局でしごかれてないさ」
二人して笑い合ったところで、一転、アデルは首を傾げる。
「だけど妙だな。3つあって、それが全部、作業員のヤツか」
「何が妙なんだ?」
尋ねたダンに、エミルが呆れ気味に答える。
「サムたちよ。ここに来たはずでしょ?」
「……あ、そうか」
一行はきょろきょろと辺りを見回すが、それらしい足跡は見当たらない。
と、様子をうかがっていたらしい年配の駅員が、とぼとぼとした足取りで近寄ってくる。
「あんたら、さっきから何しとるんだ? 財布でも落としたのか?」
「いや、何でも。……っと、ちょっと聞きたいんだが」
アデルが立ち上がり、駅員に質問する。
「俺たちの他に、スーツ姿で来たヤツらはいないか?」
「スーツで? さあ……?」
駅員は目をしょぼしょぼとさせながら、首を横に振る。
「覚えが無いね」
「最近雨が降ったのは?」
「3日前くらいかなぁ」
「そもそも、ここって人がいるのか?」
「俺がいるだろ」
「いや、そうじゃなくて、あんた以外に人が住んでるのかってことだよ。ざっと見たところ、店もサルーンも何も無いように見えるしさ」
「鉱山の奴が4人か、5人くらい、……いや、6人? だっけか。まあ、そいつらくらいだな。
あんたの言う通り、ここにゃもう店が無いから、ここで直に行商人と売り買いしてるみたいだよ」
「『みたい』って……、あんた、ここで仕事してるんだろ?」
呆れ気味にアデルがそう尋ねたところで、駅員は恥ずかしそうに笑って返す。
「ヒマだからさ……。大抵寝とるんだ」
「……そうか」
その他、2、3点尋ねてみたものの、駅員からは大した情報を得ることはできなかった。
駅員を適当にあしらい、駅舎へ戻っていったところで、ふたたびアデルたちは足跡に着目する。
「あのくたびれたじいさんの話だから正確なことは分からないが、ともかくごく最近、雨が降ったって話だから――計算上、1週間くらい前にはサムたちが到着してたはずだし――サムたちの足跡が消えててもおかしくない。
足跡が見当たらない以上、下手すりゃサムたちがここに来てない可能性もある。……とは言え、それは考えにくいけどな」
「他に目的地も無いもんな」
ハリーの一言にうなずきつつ、アデルが続ける。
「だから来てることを前提として考えりゃ、間違い無くサムたちは、メッセマー鉱業を訪ねてるはずだ。
この足跡も多分メッセマー鉱業のヤツらのだろうし、たどれば着くだろう」
一行は駅を後にし、足跡に沿って街を抜けた。
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ゴーストタウン。
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スリーバックスを発って5日後、アデルたち一行はN州、アッシュバレーに到着した。
「……本当に何にも無いな」
通りを見渡すが、薄汚れた家屋がまばらにあるばかりで、賑わっているような様子は全く見られない。
「電線も無い。これじゃ確かに、電話連絡なんてできるはずが無いな」
「それどころじゃないぞ。郵便局も保安官オフィスも無い。軒並み潰れてる」
駅のすぐそばにあった建物を指差しつつ、ダンが呆れた声を漏らす。
「ほぼ廃村って感じだな。本当にこんなところに、人が住んでんのか?」
「そうね……」
エミルが往来を見回し、首を横に振る。
「ここ数ヶ月、馬車も荷車も通ってないって感じ。足跡も、せいぜい2人、3人ってところかしら」
「3人だろう。3種類ある」
アデルがしゃがみ込み、その足跡を調べる。
「ただ、靴の形は一緒だな。大きさは違うが、靴底のパターンが同じだ。恐らく会社か州軍だとかからの支給品なんだろう。
同じ会社の同僚3人が、駅に届いた荷物を受け取ったってところだろうな」
「それに靴底のパターンが、やたらゴツいぜ。相当ハードな環境で働いてるんだろうな」
ダンもアデルと同様にしゃがみ込み、その足跡を指先で触る。
「その可能性は高いな。となりゃ、メッセマー鉱業の人間ってことで間違い無いだろう。
……何だよダン、あんたも結構やるじゃないか」
「へへ……、伊達に特務局でしごかれてないさ」
二人して笑い合ったところで、一転、アデルは首を傾げる。
「だけど妙だな。3つあって、それが全部、作業員のヤツか」
「何が妙なんだ?」
尋ねたダンに、エミルが呆れ気味に答える。
「サムたちよ。ここに来たはずでしょ?」
「……あ、そうか」
一行はきょろきょろと辺りを見回すが、それらしい足跡は見当たらない。
と、様子をうかがっていたらしい年配の駅員が、とぼとぼとした足取りで近寄ってくる。
「あんたら、さっきから何しとるんだ? 財布でも落としたのか?」
「いや、何でも。……っと、ちょっと聞きたいんだが」
アデルが立ち上がり、駅員に質問する。
「俺たちの他に、スーツ姿で来たヤツらはいないか?」
「スーツで? さあ……?」
駅員は目をしょぼしょぼとさせながら、首を横に振る。
「覚えが無いね」
「最近雨が降ったのは?」
「3日前くらいかなぁ」
「そもそも、ここって人がいるのか?」
「俺がいるだろ」
「いや、そうじゃなくて、あんた以外に人が住んでるのかってことだよ。ざっと見たところ、店もサルーンも何も無いように見えるしさ」
「鉱山の奴が4人か、5人くらい、……いや、6人? だっけか。まあ、そいつらくらいだな。
あんたの言う通り、ここにゃもう店が無いから、ここで直に行商人と売り買いしてるみたいだよ」
「『みたい』って……、あんた、ここで仕事してるんだろ?」
呆れ気味にアデルがそう尋ねたところで、駅員は恥ずかしそうに笑って返す。
「ヒマだからさ……。大抵寝とるんだ」
「……そうか」
その他、2、3点尋ねてみたものの、駅員からは大した情報を得ることはできなかった。
駅員を適当にあしらい、駅舎へ戻っていったところで、ふたたびアデルたちは足跡に着目する。
「あのくたびれたじいさんの話だから正確なことは分からないが、ともかくごく最近、雨が降ったって話だから――計算上、1週間くらい前にはサムたちが到着してたはずだし――サムたちの足跡が消えててもおかしくない。
足跡が見当たらない以上、下手すりゃサムたちがここに来てない可能性もある。……とは言え、それは考えにくいけどな」
「他に目的地も無いもんな」
ハリーの一言にうなずきつつ、アデルが続ける。
「だから来てることを前提として考えりゃ、間違い無くサムたちは、メッセマー鉱業を訪ねてるはずだ。
この足跡も多分メッセマー鉱業のヤツらのだろうし、たどれば着くだろう」
一行は駅を後にし、足跡に沿って街を抜けた。
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