DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 10 ~ 燃える宝石 ~ 9
ウエスタン小説、第9話。
疑惑の炭鉱。
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9.
街を出て程無く、アデルたちは薄汚れたあばら家の前に到着する。
「『メッセマー鉱業 アッシュバレー営業所』って看板が付いてるな。一応って感じでだが」
「なんか傾いてないか……?」
ハリーとスコットが指摘した通り、その小屋はあちこちに穴が空いており、今にも崩れそうな様相を呈していた。
と、小屋の奥にあった坑道から、人がわらわらと現れる。
「おい、あんたら……」
スコットが彼らに声をかけようとしたところで、相手からの怒鳴り声が返ってくる。
「んなトコでボーッと突っ立ってんじゃねえッ! 下がれ、下がれ!」
「……! おっ、おう」
状況を察し、アデルたちは大慌てで踵を返し、小屋の方へ走ろうとする。
が、一人、ぽかんとした顔で突っ立っていたロバートを、残り5人が慌てて引っ張る。
「バカ、鉱山だぞここ!」
「え? は?」
「マイトだよ、マイト!」
「真糸?」
「寝ぼけたこと言ってる場合か!」
「坑道から大急ぎで人が出てきて『下がれ』っつってんだ、分かんだろ!?」
「何が……」
「ああ、もう!」
まだ状況を把握できていなさそうなロバートを小屋の裏まで引っ張り込み、5人は耳を抑えて身を屈める。
次の瞬間――ぼごん、とくぐもった音と共に、周囲がぐらっと揺れる。
「おわっ!?」
「……ダイナマイト使うくらい分かれよ」
「す、すんませんっス」
発破による粉塵が収まってきたところで、改めてアデルたちは、メッセマー鉱業の人間に声をかけた。
「パディントン探偵局? それが一体、うちに何の用だ?」
現場監督のジム・マクレガーは、けげんな目で一行を一瞥する。
「監査なら本社に行けよ。うちにある帳簿なんて、メシとマイトのことしか書いてねえぞ」
「いや、そうじゃない。数日くらい前に、ここに連邦特務捜査局の人間が来なかったか?」
尋ねた途端、マクレガー監督の顔に険が差す。
「あ? 捜査局だ? 知りゃしねえよ」
その反応を見て、アデルは強い語調で尋ね直す。
「もう一度聞くぞ。連邦特務捜査局の人間が、ここに来たはずだ。知ってることを話してくれ」
「知らねえって言って……」
怒鳴りかけた瞬間、マクレガー監督は硬直する。
対面にいたエミルが、拳銃を抜いたからだ。
「なに、……する、気だ、姉ちゃんよ?」
恐る恐る尋ねるマクレガー監督に、エミルはもう一方の手でハンカチを取り出しつつ、こう返す。
「別に? あなたが正直に話してくれたら、ほこりを払って終わりよ。
でも強情張る気なら、掃除のはずみで弾が2、3発くらい出てきちゃうかも知れないけど」
「……ぐっ」
たじろぐ様子を見せるが、マクレガー監督はなお、頑なな態度を執る。
「仮に俺がそいつらを知ってるとして、そしたら、あんたたちは何する気だ?」
「なるほど」
そこでアデルは、背後に立っていたダンたちを親指で差す。
「ちなみにこいつらも特務局の人間だ。いや、だったと言うべきだな」
「だった……?」
「詳しい経緯は省くが、先日、特務局は解体された。当然、こいつらに逮捕権は無い。
仮にあんたらが何らかの罪を犯したとして、それでも、あんたらを捕まえることはできない。その上で、だ。
もしも特務局の人間がいるなら、解体された件を伝えて、一緒に引き上げようってだけだ」
「……」
マクレガー監督はしばらく黙り込んでいたが、やがて、はあと一息吐き、不安そうな口調で尋ねてきた。
「本当に逮捕はしないんだな?」
「あんたらを勝手に逮捕したら、俺が逮捕されちまうよ。そんな権限は無いからな」
「……来てくれ」
そう言って、マクレガー監督はアデルたちに背を向け、坑道に向かって歩き出した。
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疑惑の炭鉱。
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9.
街を出て程無く、アデルたちは薄汚れたあばら家の前に到着する。
「『メッセマー鉱業 アッシュバレー営業所』って看板が付いてるな。一応って感じでだが」
「なんか傾いてないか……?」
ハリーとスコットが指摘した通り、その小屋はあちこちに穴が空いており、今にも崩れそうな様相を呈していた。
と、小屋の奥にあった坑道から、人がわらわらと現れる。
「おい、あんたら……」
スコットが彼らに声をかけようとしたところで、相手からの怒鳴り声が返ってくる。
「んなトコでボーッと突っ立ってんじゃねえッ! 下がれ、下がれ!」
「……! おっ、おう」
状況を察し、アデルたちは大慌てで踵を返し、小屋の方へ走ろうとする。
が、一人、ぽかんとした顔で突っ立っていたロバートを、残り5人が慌てて引っ張る。
「バカ、鉱山だぞここ!」
「え? は?」
「マイトだよ、マイト!」
「真糸?」
「寝ぼけたこと言ってる場合か!」
「坑道から大急ぎで人が出てきて『下がれ』っつってんだ、分かんだろ!?」
「何が……」
「ああ、もう!」
まだ状況を把握できていなさそうなロバートを小屋の裏まで引っ張り込み、5人は耳を抑えて身を屈める。
次の瞬間――ぼごん、とくぐもった音と共に、周囲がぐらっと揺れる。
「おわっ!?」
「……ダイナマイト使うくらい分かれよ」
「す、すんませんっス」
発破による粉塵が収まってきたところで、改めてアデルたちは、メッセマー鉱業の人間に声をかけた。
「パディントン探偵局? それが一体、うちに何の用だ?」
現場監督のジム・マクレガーは、けげんな目で一行を一瞥する。
「監査なら本社に行けよ。うちにある帳簿なんて、メシとマイトのことしか書いてねえぞ」
「いや、そうじゃない。数日くらい前に、ここに連邦特務捜査局の人間が来なかったか?」
尋ねた途端、マクレガー監督の顔に険が差す。
「あ? 捜査局だ? 知りゃしねえよ」
その反応を見て、アデルは強い語調で尋ね直す。
「もう一度聞くぞ。連邦特務捜査局の人間が、ここに来たはずだ。知ってることを話してくれ」
「知らねえって言って……」
怒鳴りかけた瞬間、マクレガー監督は硬直する。
対面にいたエミルが、拳銃を抜いたからだ。
「なに、……する、気だ、姉ちゃんよ?」
恐る恐る尋ねるマクレガー監督に、エミルはもう一方の手でハンカチを取り出しつつ、こう返す。
「別に? あなたが正直に話してくれたら、ほこりを払って終わりよ。
でも強情張る気なら、掃除のはずみで弾が2、3発くらい出てきちゃうかも知れないけど」
「……ぐっ」
たじろぐ様子を見せるが、マクレガー監督はなお、頑なな態度を執る。
「仮に俺がそいつらを知ってるとして、そしたら、あんたたちは何する気だ?」
「なるほど」
そこでアデルは、背後に立っていたダンたちを親指で差す。
「ちなみにこいつらも特務局の人間だ。いや、だったと言うべきだな」
「だった……?」
「詳しい経緯は省くが、先日、特務局は解体された。当然、こいつらに逮捕権は無い。
仮にあんたらが何らかの罪を犯したとして、それでも、あんたらを捕まえることはできない。その上で、だ。
もしも特務局の人間がいるなら、解体された件を伝えて、一緒に引き上げようってだけだ」
「……」
マクレガー監督はしばらく黙り込んでいたが、やがて、はあと一息吐き、不安そうな口調で尋ねてきた。
「本当に逮捕はしないんだな?」
「あんたらを勝手に逮捕したら、俺が逮捕されちまうよ。そんな権限は無いからな」
「……来てくれ」
そう言って、マクレガー監督はアデルたちに背を向け、坑道に向かって歩き出した。
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