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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 10 ~ 燃える宝石 ~ 13

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    ウエスタン小説、第13話。
    20年越しの和解。

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    13.
    「ぐあっ!?」
     ケビンに殴られ、オーウェンは床を転げる。
     そのまま伸びてしまったオーウェンに、ケビンは怒りに満ちた怒声をぶつける。
    「俺はそのデイジーの息子だよ、クソ野郎がッ!」
    「……じゃ、じゃあ君は、ケビンか?」
    「そうだよ畜生! てめえのせいで俺は、この20年間ずっと死ぬ思いしてきたんだ!」
    「ま、待て! 私の話を聞け!」
    「うるせえッ!」
     倒れ込んだオーウェンになおも殴りかかろうとしたケビンに、オーウェンが怒鳴った。
    「デイジーが浮気したんだ!」
    「なっ……」
     その一言に、ケビンは動きを止める。
    「う、……ウソつくなよ。助かろうと思って」
    「嘘じゃないし、そもそも離婚と、君を引き取ることを言い出したのは、彼女の方だ。
     私のことを覚えているのなら、ウィリス・ウォルトンのことも知ってるだろう?」
    「……義理の親父だ。いや、だったヤツだ」
    「彼女はウィリスに熱を上げて、私のことを振ったんだよ。……その後の顛末も聞いてる。
     ウィリスから随分ひどい目に遭わされて、結局彼とも、半年で離婚したと」
    「ああ」
    「それでも君には謝らなければならない。ウィリスと別れた後、一度だけ、彼女からよりを戻さないかと手紙が来たんだ。
     だが私は、それに返事を出さなかった。『別れるのも自分の都合なら、元に戻るのも君の都合でか』と、当時の私は頭に来ていたからだ。
     だから君のことも、結果的に見捨てることになってしまった」
     オーウェンはその場にうずくまり、深々と頭を下げた。
    「君の気の済むようにしてくれ。私はどんな罰でも、甘んじて受ける」
    「……」
     父だった男の、薄くなった後頭部を眺めていたケビンは、拳を振り上げかけたが――力無く、だらんと下ろした。
    「いいよ、もう。お袋に問題があったってのは事実だし、お袋に散々迷惑かけられたあんたを、息子の俺がさらに痛めつけようなんて、神様が許しゃしないさ」
    「……ありがとう」
     オーウェンは顔を上げ――一転、けげんな様子を見せた。
    「しかし、……君は何故、ここに? 私に会いに来たのか? こんな夜中に?」
    「あっ、いや」
     ケビンはごまかそうとするが、目が勝手に、金庫の方へと向いてしまう。
     その視線を読んだらしく、オーウェンが声を上げる。
    「まさか、空巣か?」
    「うっ、……あ、ああ。会社がどうしても資金出してくれないって言うから、こっちから、その、取りに来たと言うか、いただこうと言うか」
    「あ」
     それを聞いて、オーウェンは目を丸くする。
    「もしかして君は今、N州に? アッシュバレー炭鉱で働いてるのか?」
    「ああ」
    「少し前に、アッシュバレー炭鉱から予算増額の要請が来たが、不要と判断したから断ったんだ。
     それで君が来たのか。……しかし、変じゃないか」
     オーウェンは立ち上がり、殴られて腫れ上がった左頬を抑えながら尋ねる。
    「あの規模の炭鉱に3万ドルは、どう考えても過剰投下だ。仮にあの山一帯が全て無煙炭の塊だったとしても、そこまで必要なはずが無い。
     一体何故君は、いや、君たちは、盗みを働こうとしてまで予算を欲しがるんだ?」
    「それは……」
     ケビンは仕方無く、ダイヤ鉱床が出てきたことをオーウェンに話した。
    「ダイヤだって!?」
    「あ、ああ。監督も今の予算じゃ掘り出せないって」
    「それはそうだろうな。確かにそれが本当なら、3万ドルは妥当、……でもないな」
     オーウェンはかぶりを振り、こう指摘する。
    「炭鉱についてのノウハウしか無い君たちが、今まで取り掛かったことの無い類の鉱床に手を出すとなると、軌道に乗せるまでにはかなりのコストがかかるはずだ。
     多分、3万では足りなくなる。二度、三度と、予算を追加することになるだろうな」
    「えっ……」
    「もし最初の予算を認可していたとしても、そんなに何度も万単位の予算を要求していれば、遅かれ早かれ怪しまれる。そうなれば早晩、本社幹部はダイヤの可能性に気付くだろう。
     どちらにしても、その計画は杜撰極まりない。本社にバレて、君たちは横領犯として告訴されるのがオチだ」
    「そんな……」
     厳しい評価に、ケビンは落胆する。
     だが――。
    「だから、最初から10万持って行けば、発覚の可能性はずっと少なくなる」
    「へ? ……今、何て?」
     尋ねるケビンに応じる代わりに、オーウェンは金庫のダイヤルを回す。
    「今、金庫の中には、10万ドルは入ってるはずだ。これを持って行きなさい」
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