DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 10 ~ 燃える宝石 ~ 14
ウエスタン小説、第14話。
横領事件の真相と収拾。
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14.
中に積まれた大量のリンカーンを目にし、ケビンは思わず後ずさる。
「い、いいのかよ!?」
「君への罪滅ぼしと思えば安いものだ。私一人、窃盗と横領の罪を受ければ、君たちに嫌疑がかかること無く、ダイヤを掘り出すことができるだろう」
「ばっ、……バカ言ってんじゃねえよ、親父!」
ケビンは声を荒げ、その申し出を断る。
「あんたに罪被せてまでやるもんじゃないだろ、そんなこと!」
「いや、いいんだ。これくらいのことをしなければ、君には申し訳が立たない」
「それにしたって多すぎるって。いや、あんたがさっき言ったことには納得してる。10万ドルありゃその心配も無いってことも分かるよ。
だけどその罪をあんた一人になんて、そんなことしたら俺、一生自分を許せなくなっちまう」
ケビンはオーウェンの肩をトンと叩き、こう続けた。
「それにさ、10万ドルなんて俺一人が持ってける量じゃないだろ?
どうせ罪を被るつもりだったんならさ、付いてきてくれよ、親父」
「え……?」
「それにさ、確かにあんたの言う通り、俺たちだけじゃ無駄遣いしちまいそうだしさ。アタマいいのがカネの管理してくれた方が、絶対いいだろうしさ」
ケビンは熱心に父親を説得し、共にN州へ向かうことに同意させた。
結局、金庫にあった現金、総額12万3637ドル44セントをすべて盗み出し、オーウェンとケビン父子はN州へと逃げた。
到着後すぐ、オーウェンとマクレガー監督は相談・協議を重ね、間も無くダイヤモンド採掘が開始された。
そしてサムたちが訪れるまでに、マクレガー監督たちは木箱一杯のダイヤ原石を掘ることができたのである。
「……で、1週間前にサムたちがここに来たと」
「ああ。何もかもタイミング悪くってな」
「って言うと?」
尋ねたエミルに、マクレガー監督はしょんぼりとした顔を見せる。
「訪ねてきたとこで、捜査官とグリフィスが鉢合わせしちまったんだ。しかもグリフィスは儲けを試算しようと思って、机の上にダイヤを山盛りにしてたところでさ。
『これはなんだ、グリフィス!?』つって捜査官が拳銃構えていきり立ったからさ、これはやべえって思って、俺がそいつを、後ろからどついちまったんだよ」
「マジでか……」
額を押さえ、ため息をつくダンに、マクレガー監督は深々と頭を下げた。
「本っ当に済まない。ただ、ちゃんと手当てはしたし、繰り返し言うが、不自由なくはさせてた。カネはたんまりあったし」
「お前なぁ……」
非難の目を向けるダンたちに、マクレガー監督はもう一度頭を下げた。
「そんなわけでさ、身柄を隠しとくしかなくなっちまって、それについてもどうしようか、どうしようかって毎日悩んでたんだ。
逮捕しないでくれるって言ってくれて、本当にほっとしてる」
「ま、でも」
と、エミルが冷ややかな目でマクレガー監督をにらむ。
「そう言うことなら、ちょっとくらい『お詫び』してほしいところよね」
「お詫び?」
おうむ返しに尋ねたマクレガー監督に、エミルは、今度はいたずらっぽく微笑む。
「ダイヤの儲け、グリフィスさんはいくらになるって計算したのかしら?」
「あー……そう言う」
エミルの腹積もりを見抜き、アデルが苦笑する。
マクレガー監督も苦い顔をしつつ、質問に答えた。
「質にもよるが、100万、200万の儲けになるんじゃないかって言ってた。ただ、今の時点でだし、まだまだ出る感じだから、もっと増えるかも知れん」
「あら、そう」
エミルはにっこりと笑みを浮かべたまま、マクレガー監督との距離を詰めていく。
「あたしたちに逮捕権は無いけど、善良なアメリカ国民だから、犯罪を当局に報告する義務はあるのよね。だけど約束は約束だし、チクらないでいてあげるわ。
でも捜査官がケガしたのは事実だし、サムはあたしの友達でもあるのよね。友達が1週間も監禁されたなんて話、怒りに任せて私刑(リンチ)くらいしたくなっちゃってもおかしくないことよね?
まあ、あたしはシューペリア湖(Lac Supérieur)より寛大な心の持ち主だから、あなたが最大限の誠意を示してくれるって言うなら全部許してあげるし、このまま世間に隠れてコソコソ掘らずに済むような、もっといいアイデアをあんたにあげられるわよ」
「え? それって……」
尋ねたアデルに答えず、エミルは拳一つ分の距離まで、マクレガー監督に詰め寄る。
「さて――それを踏まえて、あなたの『お気持ち』、きちんと聞かせてくれるかしら?」
にっこりと微笑んだままのエミルに、マクレガー監督はぶるぶると震えながら、「……は、半分」と答えた。
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横領事件の真相と収拾。
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中に積まれた大量のリンカーンを目にし、ケビンは思わず後ずさる。
「い、いいのかよ!?」
「君への罪滅ぼしと思えば安いものだ。私一人、窃盗と横領の罪を受ければ、君たちに嫌疑がかかること無く、ダイヤを掘り出すことができるだろう」
「ばっ、……バカ言ってんじゃねえよ、親父!」
ケビンは声を荒げ、その申し出を断る。
「あんたに罪被せてまでやるもんじゃないだろ、そんなこと!」
「いや、いいんだ。これくらいのことをしなければ、君には申し訳が立たない」
「それにしたって多すぎるって。いや、あんたがさっき言ったことには納得してる。10万ドルありゃその心配も無いってことも分かるよ。
だけどその罪をあんた一人になんて、そんなことしたら俺、一生自分を許せなくなっちまう」
ケビンはオーウェンの肩をトンと叩き、こう続けた。
「それにさ、10万ドルなんて俺一人が持ってける量じゃないだろ?
どうせ罪を被るつもりだったんならさ、付いてきてくれよ、親父」
「え……?」
「それにさ、確かにあんたの言う通り、俺たちだけじゃ無駄遣いしちまいそうだしさ。アタマいいのがカネの管理してくれた方が、絶対いいだろうしさ」
ケビンは熱心に父親を説得し、共にN州へ向かうことに同意させた。
結局、金庫にあった現金、総額12万3637ドル44セントをすべて盗み出し、オーウェンとケビン父子はN州へと逃げた。
到着後すぐ、オーウェンとマクレガー監督は相談・協議を重ね、間も無くダイヤモンド採掘が開始された。
そしてサムたちが訪れるまでに、マクレガー監督たちは木箱一杯のダイヤ原石を掘ることができたのである。
「……で、1週間前にサムたちがここに来たと」
「ああ。何もかもタイミング悪くってな」
「って言うと?」
尋ねたエミルに、マクレガー監督はしょんぼりとした顔を見せる。
「訪ねてきたとこで、捜査官とグリフィスが鉢合わせしちまったんだ。しかもグリフィスは儲けを試算しようと思って、机の上にダイヤを山盛りにしてたところでさ。
『これはなんだ、グリフィス!?』つって捜査官が拳銃構えていきり立ったからさ、これはやべえって思って、俺がそいつを、後ろからどついちまったんだよ」
「マジでか……」
額を押さえ、ため息をつくダンに、マクレガー監督は深々と頭を下げた。
「本っ当に済まない。ただ、ちゃんと手当てはしたし、繰り返し言うが、不自由なくはさせてた。カネはたんまりあったし」
「お前なぁ……」
非難の目を向けるダンたちに、マクレガー監督はもう一度頭を下げた。
「そんなわけでさ、身柄を隠しとくしかなくなっちまって、それについてもどうしようか、どうしようかって毎日悩んでたんだ。
逮捕しないでくれるって言ってくれて、本当にほっとしてる」
「ま、でも」
と、エミルが冷ややかな目でマクレガー監督をにらむ。
「そう言うことなら、ちょっとくらい『お詫び』してほしいところよね」
「お詫び?」
おうむ返しに尋ねたマクレガー監督に、エミルは、今度はいたずらっぽく微笑む。
「ダイヤの儲け、グリフィスさんはいくらになるって計算したのかしら?」
「あー……そう言う」
エミルの腹積もりを見抜き、アデルが苦笑する。
マクレガー監督も苦い顔をしつつ、質問に答えた。
「質にもよるが、100万、200万の儲けになるんじゃないかって言ってた。ただ、今の時点でだし、まだまだ出る感じだから、もっと増えるかも知れん」
「あら、そう」
エミルはにっこりと笑みを浮かべたまま、マクレガー監督との距離を詰めていく。
「あたしたちに逮捕権は無いけど、善良なアメリカ国民だから、犯罪を当局に報告する義務はあるのよね。だけど約束は約束だし、チクらないでいてあげるわ。
でも捜査官がケガしたのは事実だし、サムはあたしの友達でもあるのよね。友達が1週間も監禁されたなんて話、怒りに任せて私刑(リンチ)くらいしたくなっちゃってもおかしくないことよね?
まあ、あたしはシューペリア湖(Lac Supérieur)より寛大な心の持ち主だから、あなたが最大限の誠意を示してくれるって言うなら全部許してあげるし、このまま世間に隠れてコソコソ掘らずに済むような、もっといいアイデアをあんたにあげられるわよ」
「え? それって……」
尋ねたアデルに答えず、エミルは拳一つ分の距離まで、マクレガー監督に詰め寄る。
「さて――それを踏まえて、あなたの『お気持ち』、きちんと聞かせてくれるかしら?」
にっこりと微笑んだままのエミルに、マクレガー監督はぶるぶると震えながら、「……は、半分」と答えた。
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