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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 11 ~ 大閣下の逆襲 ~ 4

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    ウエスタン小説、第4話。
    アーサー老人の昔話。

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    4.
    「なんですって?」
     突拍子も無い話を聞かされ、エミルは声を張り上げる。
    「急過ぎない?」
    《私には遅過ぎるくらいの進捗だ。ギルマン探しに3ヶ月余を要した上、君たちに協力するため、寄り道までしたのだからな》
    「あのねぇ、ボールドロイドさん?」
     苛立ちを隠さない、一層刺々しい口調で、エミルは詰問する。
    「あたしたちはギャングでも軍隊でも無いのよ? あなたにいきなり『突撃せよ』って言われて、『ハイただいますぐに臨場いたします』なんて、できるはずないでしょ?
     そもそも探偵局の人間全員かき集めたって、30人もいないわよ? 30人で吶喊(とっかん)なんて、ただ犬死するだけって分からない? それとも兵隊をすぐ揃えられるアテがあるのかしら、ボールドロイドさん?」
    《特務局の連中なら、300人はいる。武装すれば十分、兵隊としての用は足りるだろう》
    「は? あなた、局長から聞いてないの? 連邦特務捜査局は解散したのよ?」
    《勿論知っているとも。私が言っているのは、その特務局の解散によって職を失った者のことだ。
     君たちのところに元特務局の人間がいると聞いているし、彼らから元同僚らに話を通せば、喜んで引き受けるだろう。
     何しろ、自分の職場を奪った奴らに復讐できる、絶好のチャンスなのだからな》
    「なるほどね。でもそれだって今日、明日でどうにかできる話じゃないでしょ? 人を集めるのもままならないのに『一気に攻め落とせ』なんて、そんなトンチンカンな命令、マクレラン将軍だってそうそう下しゃしないわよ」
    《それも承知している。数日程度は仕方の無いコストと考えよう。本営までの移動を除き、10日は猶予を与える。
     だが――何度も繰り返すようだが――これは我々にとって最大の好機なのだ。これを逃せば、我々に勝利が訪れることは無くなるだろう。少なくとも、20世紀を迎えるまではな》
    「我々、我々って……」
     こらえ切れず、エミルは受話器に向かって怒鳴る。
    「組織とあなたに、一体どんな因縁があるって言うの!? いきなり横からしゃしゃり出てきて、あれやこれや勝手な注文や嫌味ばっかり言ってくれちゃって!」
    《ふむ。そう言えば話していなかったな》
     しかしアーサー老人の声に、ひるんだ様子も悪びれた様子も感じられない。先程と同様の、頑固な威圧感を含んだ、落ち着いた声で答えてきた。
    《親友を、悪の道に堕とされたのだ。かけがえの無い友をな》
    「……その話、長くなるのかしら?」
    《なるとも。とは言え、私も今散々、時間が無いと繰り返した身だからな。極力省略しよう。
     君がまた金切り声を上げる前には、話し終えるつもりだ》



     10年以上前の話だが、君も知っている通り、私はかつて鉄道会社の最高経営責任者、社長だった。
     しかし、ただ社長だなどと偉そうにふんぞり返ってみたところで、それだけで線路が勝手に引けるようなものでは無い。当然、事業には資金が必要だ。それも庶民のコップ一杯程度の感覚から著しくかけ離れた、ナイアガラ瀑布のような、怒涛のカネがな。
     それを開業当初から用意してくれたのが私の友人、メルヴィン・ワットウッドだったのだ。

     南北戦争を終え、諜報員としての兵役から開放された私は、戦争中に温めていたアイデアを実現させるべく、彼の元を尋ねた。
     彼の家は先祖代々続くイングランドの資産家で、彼の祖父も、新たな投資先を求めてこの国にやって来たと聞いている。その祖父もその息子、即ち彼の父親も、それなりに事業を成功させ、合衆国に新たな資産を営々と築いてきたが、彼にとって、そして社会にとって残念なことに、彼自身はそうした商才を、父や祖父から受け継いでいなかったのだ。
     有り余る資産をただ眺めているだけだった彼は、私の話を聞くなり、こう返してきた。「君を全面的に信用し、資金を提供する。君なら確かに、資金さえあればそれらのアイデアを実行に移せるのだろう」と。……これは誇張でも自慢でも無く、単なる事実の列挙だよ、ミヌー君。彼はその時本当に、私にそう言ったのだ。
     そして、こうも言った。「その代わり、君には決して、私を人間扱いすることをやめないでほしい。私がカネしか取り柄の無い、情けない男だと分かった途端、誰も彼も、私を人ではなく、金庫としてしか見なくなってしまうのだ。私のことを誰も、人間だと見てくれはしないのだ」とね。

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    マクレラン将軍……ジョージ・B・マクレラン。
    アメリカの軍人、政治家。南北戦争時には北軍司令官として務める。
    当時、イケイケ蛮勇路線で無策に突っ込んでは敗走を繰り返していた北軍において、
    優れた戦術を用いて南軍リー将軍の猛攻を何度も防いだ名将。
    ただしその身長、もとい慎重さがリンカーン大統領をはじめとする北部陣営には気に入られず、
    「リトル・マック」「ターディ(のろま)・ジョージ」などと揶揄されて冷遇された結果、
    司令としての在任期間はわずか4ヶ月に留まった。
    優秀で結果もキッチリ出したにもかかわらず、人間関係と時勢に恵まれず大成しなかった、日陰者将軍。
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