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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 11 ~ 大閣下の逆襲 ~ 8

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    ウエスタン小説、第8話。
    旧友との対峙。

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    8.
     4日後、アーサー老人とイクトミ、そしてDJと、彼が集めた荒くれ者80人は、O州のクリスタルピークに到着した。
    「10年……、いや、もっとかも知れんな」
    「と言うと?」
     尋ねたイクトミに、アーサー老人は街の奥にある、大きな屋敷を指差した。
    「メルヴィンの屋敷を訪ねるのがだ。
     私がまだW&Bにいた頃は、年に3~4回は訪れ、会話を交わしていたものだが、放浪に出てからは一度も来ていない。メルヴィンが私を狙っていたからな。故に私も――心情的にも、何より物理的にも――距離を置いていたが、今にして思えば、一度は訪ねておくべきだったかと反省している」
    「それは何故です?」
    「例え説得できなかったとしても、その心情に多少の変化は起こせたかも知れんからだ」
     アーサー老人はそこで会話をやめ、DJに振り返った。
    「全員前進。ワットウッド邸を取り囲んで、そのまま待機せよ」
    「了解であります、閣下」
     おどけた様子で敬礼するDJに背を向け、アーサー老人はイクトミを伴い、屋敷へと向かった。

     屋敷には使用人などの気配は無く、玄関口にも鍵はかかっていなかった。
    「入れ、と言うことでしょうな」
     そうつぶやくイクトミに、アーサー老人はうなずきつつ、背負っていた散弾銃を手に取る。
    「敵陣だ。油断はするなよ」
    「承知しております」
     イクトミもSAAを取り出し、かち、と撃鉄を起こす。
     二人が扉を抜け、玄関ホールに入ったところで、両階段の奥のバルコニーに、人影が現れた。
    「待っていたよ、アーサー」
     そこにいたのは、この屋敷の主であり、W&Bの「金庫番」――メルヴィン・ワットウッド翁だった。
    「久しぶりだな、メルヴィン」
     挨拶を交わすも、アーサーは散弾銃を手から離さない。
    「私がここに来た理由は分かっているだろう? 案内してくれないか」
    「どうしても、やる気か?」
     悲しそうな顔で二人を見下ろすワットウッド翁に、アーサーは首を横に振って返す。
    「私の決意がいつでも堅固であることは、十分知っているはずだろう。
     十数年ぶりの再会だが、旧交を温めようと言う気は、私にも、そして君にも無いはずだ。会話は不要。速やかに案内してほしい」
    「……分かった。ちょっと、待ってくれ」
     そう言ってワットウッド翁は踵を返し、よたよたとした足取りで、奥へと消える。少し間を置いて、1階廊下の奥から、ちん、と音が響いてきた。
    「エレベータ、……ですな」
    「うむ。ああ、君は以前に一度、ここを訪ねていたのだったな」
    「……ふむ」
     ワットウッド翁がやってくるまでのわずかな間に、イクトミは察したらしい。
    「つまりムッシュが『地下帝国』とおっしゃったのは……」
    「さよう。この屋敷には、地下階があるのだ。地下1階の宝物庫の、さらにその下にな。
     エレベータはそこにつながっているはずだ」
     やがて廊下の奥から、ワットウッド翁が杖を突きつつ、二人の前にふたたび現れた。
    「待たせたね、アーサー。どうも足腰が弱くなってしまってな。もう階段が使えんのだよ」
    「少しくらいなら待つさ。さあ、案内してくれ」
    「付いてきてくれ」
     ワットウッド翁に先導され、アーサー老人とイクトミは、廊下を奥へと進む。
     その中ほどに設置されたエレベータに乗り込んだところで、ワットウッド翁は懐から鍵束を取り出した。
    「使用人たちにも秘密にしているのでな。細工をしてある」
     そう説明しながら、ワットウッド翁は昇降用レバーの隣にあった鍵穴に、鍵を差し込む。
    「地下2階だけは、この鍵を外さねば降りれんようにしてあるのだ」
    「一つ質問してもよろしいでしょうか」
     と、イクトミが口を開く。
    「何かね」
    「もし下に棲む者が外へ出たいと、あるいは出る必要が生じたとすれば、その場合は?」
    「それは……」
     ワットウッド翁が答える前に、エレベータは地下2階へ到着した。
    「着いたぞ。さあ、案内を続けてくれ」
     アーサー老人に促され、ワットウッド翁はチラ、とイクトミを見て、それからエレベータを先に出た。
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