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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 11 ~ 大閣下の逆襲 ~ 11

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    ウエスタン小説、第11話。
    狡知と悪知恵。

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    11.
    「あのおっさんな、組織の方でもいい加減、『お役御免』にしようって話になってたのさ。後任も育ったしな」
    「後任? 貴様のことか」
     アーサー老人が語気荒く尋ねたところで、DJの手下の一人が銃を彼に向けたが、DJはそれをやんわりと抑える。
    「待て、待て。まだ話し終えてないからよ。撃つのはもうちょっと待ってくれや。
     ま、そう言うことさ。加えて、ギルマンは確かに兵站担当として優秀な奴だったが、秘密主義がちょっとばかり過ぎてたんだ。大閣下にも秘密のコネクションをやたら作ってたし、もしギルマンが叛乱しようものなら、結構面倒なことになりそうだった。
     だもんで、そんな気を起こす前に始末しちまおうって話になった。だけども、俺たちが直接手を下したってしょうがない。もっと効果的なやり方をしようってことになった。
     丁度今、反乱分子を潰して回ってる最中だったしな」
    「どう言うことだ?」
     アーサー老人が再度尋ねたところで、DJは噛み煙草をペッと吐き出す。
    「この1年ほど、アルジャン兄弟の兄貴の方が中心になって色々騒いでたからよ、アルジャン兄を捕まえようとする奴らが出始めたんだが、そいつらの中に、そのバックにいる組織の存在にも勘付く奴らもいたんだ。
     今年、来年中には征服するつもりじゃいるんだが、まだ正面切って戦うにはちょいとばかり早い。そこで色々手を回して、取り潰していったってわけさ」
    「連邦特務捜査局を潰したのも貴様らの仕業か? 司法省に貴様らの手先がいると言う話は、本当なのか?」
    「ああ。ま、そっち方面は俺の担当じゃないから、詳しいことは分からんがね。
     ま、その特務局だとか、探偵局だとか、色々手練手管を使って、潰してやったよ。勿論単独行動で動くような、あんたみたいな奴もな」
    「つまりギルマンを私に討たせたのは、はじめから貴様らの計画の内だったのか」
    「そこにいる金庫爺を組織に引き込んだ張本人は、ギルマンのおっさんだからな。正直、俺たちにもあのおっさんを探そうってなると骨を折るんだが、あんたなら執念深く、撃ち殺してくれるだろうと踏んでた。
     加えて、『ギルマンを倒せば組織は兵隊を動かせなくなる。勝機到来だ』と思い込んで、胡散臭い話にもホイホイ飛びつくであろうこともな」
    「……!」
     これを聞いて、アーサー老人の顔が青ざめた。
    「あんたは自分が優秀だ、誰より頭のいい智将だと自惚れてたみたいだが、上には上がいっぱいいるんだぜ? そう――ジャン=ジャック・ノワール・シャタリーヌ大閣下は、あんたなんかよりももっと、明晰な頭脳の持ち主だってことだ。
     今回のことを含め、一連の探偵潰しはすべて、あの方が計画されたことだ。標的すべての性格と行動を見抜き、どう動くであろうかを完全に読み当てたんだ。
     あんたは大閣下に、会わずして負けたってことさ」
    「くそ……ッ」
     アーサー老人は顔をくしゃくしゃに歪ませ、その場に崩れ落ちた。
    「さーて、と」
     それを見下ろしながら、DJはまた噛み煙草を口に入れる。
    「もう満足したから、そろそろ蜂の巣にしちまっていいぜ」
     その号令を受けて、手下たちは一斉に銃を構えた。

     その時だった。
    「ん、……んん!?」
     DJが左手に持っていた煙草缶から、もくもくと煙が上がり始める。
    「うぶっ、……おえっ、ぶほっ!?」
     DJの口からも白煙が吹き出し、広間は瞬く間に煙で包まれた。
    (このやり口、……あいつだな)
     ぼそ、とアーサー老人がつぶやく。
    (イクトミ君、この場を離れるぞ。正面突破だ)
    (承知)
     煙に巻かれ、敵が右往左往している隙を突き、アーサー老人とイクトミは大広間から脱出した。

     大広間の奥へと向かい、どうにか急場をしのいだアーサー老人は、そこで背後を――イクトミの方ではなく、今来た道を――振り返る。
    「F、君だろう? 相手が勝ち誇っている最中に堂々とコケにするような、あんな芝居がかったやり口は、君のようなスレた人間にしか思いつかんからな」
    「随分な言い草だな、A」
     飄々とした声と共に、奥から「F」――パディントン局長が現れた。
    「助けてやったと言うのに、あんまりじゃあないか」
    「それについては素直に礼を述べよう。ありがとう、助かった」
     そう返し、アーサー老人は深々と頭を下げた。
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