DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 11 ~ 大閣下の逆襲 ~ 13
ウエスタン小説、第13話。
DJの計画。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
13.
「がふ……っ!?」
地下の穴ぐらには似つかわしくない、ヴィクトリア調のガウンにぼすっ、と穴が空き、そこから栓を抜いたワイン樽のように、朱色が放物線を描いてこぼれていく。
「ひぁ……は……だ、だ、り、うす……?」
「ついでに言うとな」
もう1発撃ち込みつつ、DJは説明を続ける。
「もうボチボチあんたのカネと会社を、丸ごといただける手筈が整ったんでな。
そんならもうあんたも、あんたの家とその地下本営もいらんよなーって話になってさ。だもんで」
倒れ込んだワットウッド翁に、DJは――まるで脚を怪我して動けない野兎を、子供がいたずら半分にいたぶるかのように――パン、パン、パンと弾を浴びせる。
「ひぎっ……ぎゃ……っう……」
1発、1発撃ち込む度に、ワットウッド翁はか細い悲鳴を上げるが、DJは薄い笑みを崩さず、淡々と言い渡した。
「今日がメルヴィン・ワットウッドの命日だってことにさせてもらうぜ」
「た……たす……け……」「やだよ」
パン、と最後の1発を頭に撃ち込み、DJは呆れた声でこう言った。
「あんた助けて、俺になんかいいことあんのか? 最期まで頭悪いな、あんた」
「……」
既に物言わぬワットウッド翁に背を向け、DJはその場を後にした。
地下を抜け、DJはゴキゴキと首を鳴らす。
「あー……っ、やっぱ地下はきついわ。息が詰まりそうになっちまう」
出入り口からある程度離れたところで、DJは待ち構えていた手下に命令する。
「発破オーケーだ。やれ」
「了解」
手下が導火線に火を点け、しゅるる……、と火が乾いた地面を走っていく。
「後は本営に連絡して、計画を次の段階に進めてもらうだけだな。……へへ、今回は結構楽だったぜ」
そう言って、DJは手下にニヤニヤと笑いかける。
「いつもなら死体、どこに埋めようかって話だが、今回は4人まとめて爆破だからな。手間が省けたってもんさ」
「4人? 俺たちが仕留めたのは、3人ですが」
尋ねた相手に、DJは「おいおい」と呆れた声を返す。
「ワットウッドのじいさんもついでに始末するって計画だったろ? 今回の計画で、結構大事なトコだぞ」
「あ、……あ、ああ、そ、そう、……でしたね」
「それで、ボス」
別の者が、DJに尋ねる。
「計画を次の段階にってのは?」
「んなことまで説明しなきゃなんねーのか? しっかりしてくれよ、まったく」
軽くなじりつつ、DJはペラペラと語り出す。
「去年1年かけて、ワットウッドの息子がいるって与太話を作ってたろ? そいつを財産の相続人に仕立て上げて、まずは財産をそっくりいただく。
で、財産の中にゃ勿論、W&Bの株式がある。全発行株式の、75%分がな。今んとこはワットウッドがその株式の、経営権についてのみを、会社役員の何人かに委任させてる状態だが、『息子』がその経営権の委任を別の人間に指名し直す。当然、指名された奴らは全員、俺たちの仲間だ。
後は残り25%のうち20%を持ってるスチュアート・ボールドロイドを消しちまえば、W&Bはもう、俺たちのものってわけだ」
「ああ、そんな話でやしたね。すいやせん、頭悪いもんでさ」
「ま、お前さんにゃ指一本だって頼りゃしないから、伝え終わったら忘れちまって構わないけどよ。
それより帰りの車、まだ来ないのか?」
「ゴーリーが今、電話してやす」
「何だよ、遅っせえな。俺がじいさん片付けてる間にやっとけっつの」
「へえ、すいやせん」
「じゃ、俺は街に戻ってサルーンでバーボン呑んで来っから、その間に手配済ましとけよ」
DJは若干苛立ちつつ、その場を去った。
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DJの計画。
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13.
「がふ……っ!?」
地下の穴ぐらには似つかわしくない、ヴィクトリア調のガウンにぼすっ、と穴が空き、そこから栓を抜いたワイン樽のように、朱色が放物線を描いてこぼれていく。
「ひぁ……は……だ、だ、り、うす……?」
「ついでに言うとな」
もう1発撃ち込みつつ、DJは説明を続ける。
「もうボチボチあんたのカネと会社を、丸ごといただける手筈が整ったんでな。
そんならもうあんたも、あんたの家とその地下本営もいらんよなーって話になってさ。だもんで」
倒れ込んだワットウッド翁に、DJは――まるで脚を怪我して動けない野兎を、子供がいたずら半分にいたぶるかのように――パン、パン、パンと弾を浴びせる。
「ひぎっ……ぎゃ……っう……」
1発、1発撃ち込む度に、ワットウッド翁はか細い悲鳴を上げるが、DJは薄い笑みを崩さず、淡々と言い渡した。
「今日がメルヴィン・ワットウッドの命日だってことにさせてもらうぜ」
「た……たす……け……」「やだよ」
パン、と最後の1発を頭に撃ち込み、DJは呆れた声でこう言った。
「あんた助けて、俺になんかいいことあんのか? 最期まで頭悪いな、あんた」
「……」
既に物言わぬワットウッド翁に背を向け、DJはその場を後にした。
地下を抜け、DJはゴキゴキと首を鳴らす。
「あー……っ、やっぱ地下はきついわ。息が詰まりそうになっちまう」
出入り口からある程度離れたところで、DJは待ち構えていた手下に命令する。
「発破オーケーだ。やれ」
「了解」
手下が導火線に火を点け、しゅるる……、と火が乾いた地面を走っていく。
「後は本営に連絡して、計画を次の段階に進めてもらうだけだな。……へへ、今回は結構楽だったぜ」
そう言って、DJは手下にニヤニヤと笑いかける。
「いつもなら死体、どこに埋めようかって話だが、今回は4人まとめて爆破だからな。手間が省けたってもんさ」
「4人? 俺たちが仕留めたのは、3人ですが」
尋ねた相手に、DJは「おいおい」と呆れた声を返す。
「ワットウッドのじいさんもついでに始末するって計画だったろ? 今回の計画で、結構大事なトコだぞ」
「あ、……あ、ああ、そ、そう、……でしたね」
「それで、ボス」
別の者が、DJに尋ねる。
「計画を次の段階にってのは?」
「んなことまで説明しなきゃなんねーのか? しっかりしてくれよ、まったく」
軽くなじりつつ、DJはペラペラと語り出す。
「去年1年かけて、ワットウッドの息子がいるって与太話を作ってたろ? そいつを財産の相続人に仕立て上げて、まずは財産をそっくりいただく。
で、財産の中にゃ勿論、W&Bの株式がある。全発行株式の、75%分がな。今んとこはワットウッドがその株式の、経営権についてのみを、会社役員の何人かに委任させてる状態だが、『息子』がその経営権の委任を別の人間に指名し直す。当然、指名された奴らは全員、俺たちの仲間だ。
後は残り25%のうち20%を持ってるスチュアート・ボールドロイドを消しちまえば、W&Bはもう、俺たちのものってわけだ」
「ああ、そんな話でやしたね。すいやせん、頭悪いもんでさ」
「ま、お前さんにゃ指一本だって頼りゃしないから、伝え終わったら忘れちまって構わないけどよ。
それより帰りの車、まだ来ないのか?」
「ゴーリーが今、電話してやす」
「何だよ、遅っせえな。俺がじいさん片付けてる間にやっとけっつの」
「へえ、すいやせん」
「じゃ、俺は街に戻ってサルーンでバーボン呑んで来っから、その間に手配済ましとけよ」
DJは若干苛立ちつつ、その場を去った。
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