DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 11 ~ 大閣下の逆襲 ~ 14
ウエスタン小説、第14話。
Do you know?
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14.
街に戻ったDJの目に、この数分ですっかり様子が一変したクリスタルピークの景色が映る。
(おーおー、派手に潰れちまったなぁ)
鉱山を爆破した影響により、地下でつながっていたワットウッド邸もまた、その被害を受けていた。
西部の荒野に似つかわしくない、ヴィクトリア調の荘厳な建物は既にその原型を留めておらず、ぽっかりとした穴に変わってしまっていた。
「誰か、誰か助けを!」
「ワットウッドさんがまだ中に……!」
街の者が騒ぐ様子を横目で眺めつつ、DJは無事に残っていたサルーンへと入る。
「マスター、バーボンだ」
「……」
顔面蒼白で外を見つめていたマスターに、DJは再度注文を怒鳴る。
「バーボンつってんだろ!? 外なんか見てねえでさっさと出すもん出せや、うすのろ!」
「え? あ、お酒? お酒頼むんですね?」
「サルーン来てコーヒー飲むマヌケがいんのかよ、あぁ!?」
「わ、分かりました。少々お待ちを」
慌てて店の奥に消えるマスターの背中をにらみつつ、DJはニヤニヤと笑いながらカウンターに着いた。
(これで俺は正式に、組織の上級幹部の仲間入りだ。へへへ……、今年はいい年になりそうだぜ)
自分のバラ色の未来を夢見つつ、カウンターに頬杖を突いて待っていると――。
「おい」
背後から突然、野太い男の声がかけられる。
DJが振り返ると、そこには軍服を着た、屈強な男が8人、二列に並んで立っていた。
「……あ?」
何が起こっているのか分からず、DJはぽかんとする。
と、軍服の一人がDJの腕をつかみ、強引に手錠をかけた。
「な、何すんだよ? 俺が何したって言うんだ?」
「本日、O州州軍本部に情報提供があった。
『O・K・N3州で武器の密造・密売を行っている人物、通称ダリウスと言う男が、クリスタルピークに現れる。人物の特徴としては、何かしら大事件が起こっている最中にもかかわらず、呑気に酒を呑もうとしている人間だ』と。
我々はこの情報を元に、このサルーン近辺に張り込んでいたが、まさか本当にそんな非常識な男が現れるとはな」
「ふ、ふざけんな! そんなあやふやなタレコミで、無実の人間を逮捕しようってのか!?」
「証拠は上がっている。前述の3州各地で違法な武器を押収し、さらにお前の手下と見られる男77名を、先程逮捕した」
「なっ……」
DJは絶句し、ぺたんと椅子に座り込む。
「座るな。立て」
軍服がそれを無理矢理に引き起こし、立たせたところで――サルーンの扉が開き、3人の男が入ってきた。

「な、何だと!? バカなッ!」
その男たちを見て、DJが声を荒げる。
「てめえら、死んだはずじゃ……!」
「知っているかね? 東洋の狐は、人をだますのが上手いそうだよ」
先頭に立っていた男が、ニヤッと不敵に笑う。
「わたしも同じ『狐』だ。君を手玉に取ることなど、造作も無いさ」
「……まさか、まさか貴様はっ」
DJの顔から、血の気が失せる。
「そうとも。このわたしがジェフ・パディントン――通称『ディテクティブ・フォックス』だ」
「……すり替えたのか。始末されたように見せてたのは、俺の手下だったってわけか」
「うむ。察しが良くて助かるよ。説明が省けていい。君の長所だな」
パディントン局長はDJのすぐ前に立ち、にこにこと笑みを浮かべながら、こう続ける。
「しかし君の欠点は、おしゃべりが過ぎるところだ。特に仲間内で話していると思っている時と、酒が入った時は、致命的なほどに饒舌(じょうぜつ)になる。
早急に直すことをお勧めするよ」
「……覚え……とくよ……畜生……」
DJはそのまま軍服に連行され、サルーンから消えた。
その2日後――W&B鉄道本社に現れた「ワットウッド翁の息子」を名乗る人物についてもまた、息子である証拠がいずれも偽のものであることを突き付けられた上で、その場で拘束・逮捕された。これにより組織の目論見は崩れ、W&Bが組織の手に堕ちる事態は回避された。
なお、ワットウッド翁の莫大な遺産については、そのすべてが恵まれない子供や貧しい家庭、その他西部開拓者などを支援するための各種団体に寄付された。
ちなみにスチュアート社長を始めとするW&B幹部陣は、ワットウッド翁が死亡したことについて、「関係者一同哀悼の意を表する」と言う一文を新聞に掲載しただけで済ませ、それ以上のことは一切、何も語らなかった。
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街に戻ったDJの目に、この数分ですっかり様子が一変したクリスタルピークの景色が映る。
(おーおー、派手に潰れちまったなぁ)
鉱山を爆破した影響により、地下でつながっていたワットウッド邸もまた、その被害を受けていた。
西部の荒野に似つかわしくない、ヴィクトリア調の荘厳な建物は既にその原型を留めておらず、ぽっかりとした穴に変わってしまっていた。
「誰か、誰か助けを!」
「ワットウッドさんがまだ中に……!」
街の者が騒ぐ様子を横目で眺めつつ、DJは無事に残っていたサルーンへと入る。
「マスター、バーボンだ」
「……」
顔面蒼白で外を見つめていたマスターに、DJは再度注文を怒鳴る。
「バーボンつってんだろ!? 外なんか見てねえでさっさと出すもん出せや、うすのろ!」
「え? あ、お酒? お酒頼むんですね?」
「サルーン来てコーヒー飲むマヌケがいんのかよ、あぁ!?」
「わ、分かりました。少々お待ちを」
慌てて店の奥に消えるマスターの背中をにらみつつ、DJはニヤニヤと笑いながらカウンターに着いた。
(これで俺は正式に、組織の上級幹部の仲間入りだ。へへへ……、今年はいい年になりそうだぜ)
自分のバラ色の未来を夢見つつ、カウンターに頬杖を突いて待っていると――。
「おい」
背後から突然、野太い男の声がかけられる。
DJが振り返ると、そこには軍服を着た、屈強な男が8人、二列に並んで立っていた。
「……あ?」
何が起こっているのか分からず、DJはぽかんとする。
と、軍服の一人がDJの腕をつかみ、強引に手錠をかけた。
「な、何すんだよ? 俺が何したって言うんだ?」
「本日、O州州軍本部に情報提供があった。
『O・K・N3州で武器の密造・密売を行っている人物、通称ダリウスと言う男が、クリスタルピークに現れる。人物の特徴としては、何かしら大事件が起こっている最中にもかかわらず、呑気に酒を呑もうとしている人間だ』と。
我々はこの情報を元に、このサルーン近辺に張り込んでいたが、まさか本当にそんな非常識な男が現れるとはな」
「ふ、ふざけんな! そんなあやふやなタレコミで、無実の人間を逮捕しようってのか!?」
「証拠は上がっている。前述の3州各地で違法な武器を押収し、さらにお前の手下と見られる男77名を、先程逮捕した」
「なっ……」
DJは絶句し、ぺたんと椅子に座り込む。
「座るな。立て」
軍服がそれを無理矢理に引き起こし、立たせたところで――サルーンの扉が開き、3人の男が入ってきた。

「な、何だと!? バカなッ!」
その男たちを見て、DJが声を荒げる。
「てめえら、死んだはずじゃ……!」
「知っているかね? 東洋の狐は、人をだますのが上手いそうだよ」
先頭に立っていた男が、ニヤッと不敵に笑う。
「わたしも同じ『狐』だ。君を手玉に取ることなど、造作も無いさ」
「……まさか、まさか貴様はっ」
DJの顔から、血の気が失せる。
「そうとも。このわたしがジェフ・パディントン――通称『ディテクティブ・フォックス』だ」
「……すり替えたのか。始末されたように見せてたのは、俺の手下だったってわけか」
「うむ。察しが良くて助かるよ。説明が省けていい。君の長所だな」
パディントン局長はDJのすぐ前に立ち、にこにこと笑みを浮かべながら、こう続ける。
「しかし君の欠点は、おしゃべりが過ぎるところだ。特に仲間内で話していると思っている時と、酒が入った時は、致命的なほどに饒舌(じょうぜつ)になる。
早急に直すことをお勧めするよ」
「……覚え……とくよ……畜生……」
DJはそのまま軍服に連行され、サルーンから消えた。
その2日後――W&B鉄道本社に現れた「ワットウッド翁の息子」を名乗る人物についてもまた、息子である証拠がいずれも偽のものであることを突き付けられた上で、その場で拘束・逮捕された。これにより組織の目論見は崩れ、W&Bが組織の手に堕ちる事態は回避された。
なお、ワットウッド翁の莫大な遺産については、そのすべてが恵まれない子供や貧しい家庭、その他西部開拓者などを支援するための各種団体に寄付された。
ちなみにスチュアート社長を始めとするW&B幹部陣は、ワットウッド翁が死亡したことについて、「関係者一同哀悼の意を表する」と言う一文を新聞に掲載しただけで済ませ、それ以上のことは一切、何も語らなかった。
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ブログ「妄想の荒野」の矢端想さんに挿絵を描いていただきました。
ありがとうございます!
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