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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第4部

    琥珀暁・往海伝 2

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    神様たちの話、第147話。
    ハンニバル隊、海を往く。

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    2.
     双月暦23年、ゼロの軍はハンを隊長、エリザを副隊長とする600名の遠征隊を組織し、ノースポートより出発させた。目的地は昨年の春頃に襲撃してきた軍隊――ジーン軍の本拠があるとされる、北方の大陸である。
     その案内役として、拘留していたジーン軍調査隊の捕虜から数名、この航海に連れて来られており――。
    「あの島が1つ目だ。後4つ、島を中継地点として渡ることになる」
    「ありがとう、トロコフ尉官」
     調査隊のリーダーであった熊獣人のイサコ・トロコフをはじめとするジーン軍籍の人間の姿が、甲板にあった。
     と言っても手枷などの拘束具は無く、服装も他の兵士たちと変わりの無い、同様のものがゼロ軍より支給されている。
    「誠に貴君らの厚遇、感謝している。意思疎通が行えるようになった後、砦内において自由に行動させてくれたばかりか、こうして祖国への旅に随行させていただけるとは。
     我々の行動を顧みれば到底、これほど手厚い待遇など受けるべくも無いと言うのに」
     イサコの感謝の言葉に、ハンが応じる。
    「そこが、タイムズ陛下が臣民に広く慕われている所以だ。あの方は誰に対しても優しく、かつ、思慮深く接して下さる方だ。
     例え別の者を主君と仰ぐ、貴官らであってもだ」
    「いやはや……、我が主君とは大違いだ。我々のところであれば、そんな者たちは一日と言えど、生かされはせん。即刻首を刎(は)ねられるが落ちだ。
     正直な感想を言うならば、私も貴君らの土地に住まい、タイムズ陛下を主君と仰ぎたいくらいだ」
    「最大級の賛辞と受け取ろう」
     そんな風に堅い言葉を交わし合っていたところに、いつもの如くエリザが近寄ってきた。
    「ちょとええかな」
    「何でしょう?」
     答えたハンに、エリザは「ちゃうねん」と手を振る。
    「ごめんな。話聞きたいのんは、こっちの『熊』さんやねん。
     砦でも港でも、アレやコレやでバタバタしとったから、じっくり話でける機会無かったしな」
    「あ、はい」
     ハンが引き、イサコが応じる。
    「私から何を聞きたいと?」
    「色々な。まず第一に、『おカネ』ってある?」
    「カネ? ああ、持っている」
     そう言ってイサコは、腰に提げていた袋に手を入れ、中から板状の金属片を見せる。
    「貴君らの土地で使えるはずも無いのだが、持っていなくてはやはり不安でな」
    「へぇ、ウチらのんと同じような感じやね」
     エリザはその貨幣を手に取り、じっくり観察する。
    「模様みたいなん付いとるな。のっぺりしとる。彫ったっちゅう感じやなく、ちっちゃい金槌みたいなん打ち込んで刻印したっちゅう感じか。
     あと、平べったいのんは一緒やけど、四角いんやな」
    「うん? その口ぶりだと、そちらのカネは四角くないようであるように聞こえるが」
    「せやねん」
     そう返し、エリザは自分の胸元から袋を出し、同じように銀貨を取り出した。
    「ほれ、こっちのんはこんなやねん。刻印式なんは一緒やけど、打ち込む前に縁んトコぎゅっと押して固めとるから、しっかり意匠が残るんよ」
    「そ、……そうか、ふむ、左様であるか」
     が、イサコはエリザの掌に乗った銀貨ではなく、その奥を見つめている。
     当然、エリザもその視線の行き先に気付き、ニヤニヤ笑っている。
    「なんや? ええもんでも見とったんか?」
    「いっ、いやっ? お、オホン、オホン」
    「えーで、えーで。オトコやもんな、しゃあないよな。こんなおばちゃんのんで悪いけどなー」
    「そっ、そんなことは! ……あっ、い、いや、し、失敬」
     イサコは顔を真っ赤にし、くるんと背を向けてしまう。
     その様子を依然、ニヤニヤと眺めつつ、エリザはこう続けた。
    「歳当てたろか? アンタ、割りとおっさん顔しとるけど、まだ22、3っちゅうトコやろ? しかも女の子と付き合うたコトも無し、と」
    「なっ」
     もう一度ぐるんと振り返り、イサコは驚いた顔を向けた。
    「何故それを?」
    「伊達にアンタより長生きしてへんっちゅうコトや」
     エリザは笑いながら肩をすくめ――途中で、「んっ?」と首を傾げた。
    「アンタんトコ、暦(こよみ)あるん?」
    「無いわけが無いでしょう」
     けげんな顔でイサコにそう返され、エリザは「ふーん……」と答えつつ、うなずいた。
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