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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第4部

    琥珀暁・往海伝 4

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    神様たちの話、第149話。
    北海の第1島。

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    4.
     ノースポートを出港して5日後、遠征隊の船は島に上陸した。
    「へーぇ、こんなトコに島があんのか……。街から見てた限りじゃ、全然気付かんかったぜ」
     エリザ専属の護衛として付いてきていたロウが、物珍しそうな様子で海岸をうろうろしている。
     それを眺めていたエリザが、クスクス笑いながら声をかけた。
    「アンタ、ホンマに歳不相応っちゅうヤツやな。いつまで経ってもコドモみたいなコトして」
    「ぅへ?」
     エリザにそう言われ、ロウは顔を真っ赤にして振り返る。
    「す、すいやせん、エリザさん」
    「えーよえーよ。ソコがアンタの魅力や」
    「ど、どもっス」
     ぺこぺこと頭を下げるロウをよそに、エリザも辺りを見回しつつ、こう続ける。
    「アタシもじっくり見て回りたいトコやけども、先にちょと、やりたいコトあるんよ」
    「何かやるんスか?」
     きょとんとした顔をするロウに、エリザは船を指差した。
    「そもそもハンくんがな、この島で2週間休み取ろかって提案したんよ。アタシもええな言うてな」
    「2週間も? そんなに休むんスか?」
     けげんな顔を向けてきたロウに、エリザは島の上方、小高い丘になっている場所を指し示す。
    「半分はハンくんらの本領、つまり測量が目的やな。土地があるんやったら調べとかなアカンやろっちゅうてな」
    「ふーん……。そりゃご苦労っスね」
    「ソレにな、そもそも何やかやでずーっと、船に揺られっぱなしやからな。ちょっと休憩しとかな、しんどいばっかりやし。
     今回はアタシとかクーちゃんとか、体力無いのんも結構おるから、無理無理進もう思てもでけへんやん?」
     ハンの話にはぼんやりした返答をしたロウも、エリザたちに関する事柄に対しては、積極的にうなずいて見せる。
    「あー、そうっスよね。そっちはばっちり納得っス」
    「ちゅうワケでや、コレから半月過ごすワケやし、寝床やらご飯食べれるトコやら、作ろかな思てな。手伝うてもろてええ?」
     エリザに頼まれ、ロウは満面の笑みを浮かべた。
    「うっス、承知っス」

     上陸から4時間ほどで、遠征隊は島に即席の宿泊所を造り終えた。
    「……にしては、えらいきっちり造ったもんやけどな」
     綺麗に揃えられた椅子と机を眺め、エリザは感心したような、半ば呆れたようなため息を漏らす。
    「リーダーの性格がめっちゃ出とるな。アホみたいに几帳面っちゅうか、カッチカチの杓子定規くんっちゅうか」
    「どんな時であっても、備えを怠らない方とも取れますわよ」
     いつの間にか横に来ていたクーに目をやりつつ、エリザはこう返す。
    「ソコら辺は捉え方やな。
     ま、こう言う行軍にとっては、一番ええ人材やろな。この先何があるか分からんワケやし、どんな時でも怠けずきっちり備えるっちゅうのんは、ええ性格やね。
     人によったら、何かにつけて一々大仰で面倒なコトしよる、トロ臭いヤツやと思われるかも知れへんけど」
    「あなたは常に、物事を両面で考える方ですのね」
     エリザの言葉に、クーはあからさまに不満な様子を見せる。
    「あなたのことを、両面で考えるとすれば――わたくしの父上などであれば理知的で冷静な人間だなどと称されるかも知れませんけれど、わたくしからすれば、どんな吉事の場でも一々、水を差してくるような方であるとも取れますわね」
    「あーらら、冷たいなぁ」
     エリザはニヤニヤ笑いながら、肩をすくめる。
    「もしアンタとハンくんが結婚したら、めっちゃつまらん夫婦生活になりそうやな。どっちも慇懃で、他人行儀に接しそうやん?」
    「あら」
     一方のクーも、クスッと微笑んで返す。
    「そう仰るほど、あの方は情緒に乏しくはございませんわ。単に、そうした感情を表に出すのが不得手なだけで、実際には人並みに備えていらっしゃいます。
     こうしてお側に付いておりますと、それが良く理解できますわ」
    「ほーぉ」
     クーの言葉に、エリザはまたニヤニヤと笑みを見せる。
    「『お側に』、なぁ? どんくらいのお側や?」
    「え? ……あっ、いえ」
     クーは顔を赤らめ、しどろもどろに答える。
    「あなたが思ってらっしゃるほどでは、その、ございませんと、存じますわ」
    「アタシが? どの程度やと思てんの?」
    「いえ、あの、そのー……」
    「ちなみにな」
     エリザはクーの長い耳に口を近付け、ぼそ、とつぶやく。
    「アタシ、知ってるでー? 出港した次の日、アンタ自分の船室にいてへんかったやろ」
    「なっ、何故それを、……い、いえ、その」
    「ま、あの堅物が何やしたとは考えにくいし、大方船酔いしてしもたんを口実にして、『背中を撫でていただければ』とか言うて押しかけて、ベッドに一緒に入って添い寝してもろたんやろ?」
    「へうにゃわっ!?」
     図星だったらしく、クーはよく分からない声を出し、耳の先まで真っ赤にしてうずくまってしまう。
     そんなクーの頭に手をやり、エリザは楽しそうに笑った。
    「地道な一歩やな。ま、ソレでもアンタにしたら大きな一歩やと思うけど」
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