「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第4部
琥珀暁・往海伝 7
神様たちの話、第152話。
堅物尉官。
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7.
翌日朝早く、マリアを除くハンたち3人とクーは、丘の上に立っていた。
「昨晩も通達したが、本日の測量調査には、マリアの代わりにクーが参加する。とは言えマリアの役をそのままやらせるのは大変だから、その役は俺がやることにする。
クーには俺の歩数集計と距離の換算、各ポイント毎の角度計算、天体観測、その他普段は俺がやってることを行ってもらう。
それじゃ早速、ビートはここに竿を打ってくれ。シェロは、……そうだな、向こうに」
「了解っス」
ハンがてきぱきと指示を送るのを、クーはにこにこと微笑みながら眺めている。
と、ハンがそれに気付き、苦い表情を浮かべてくる。
「何だ? 何かおかしいか?」
「お気になさらず。仕事はきちんといたしますので」
「……ああ」
会話を切り上げ、ハンはすたすたと、シェロのいるところへ歩いて行く。
その間に、クーはビートにあれこれと話しかける。
「ビート、あなたはいつお休みになるのかしら?」
「明日になりました。シェロは明後日」
「ハンはいつお休みを?」
「聞いてません。休む気、無いんじゃないでしょうか」
「あら」
クーは眉をひそめ、ハンの背中をにらむ。
「わたくしの進言、理解してらっしゃらないのね」
「と言うより、自分自身のことは除外して考えてるものと」
「まったく……。エリザさんにも釘を差していただこうかしら」
そうつぶやいたクーに、ビートは苦笑いを見せる。
「そんなことすると、あの人は却って聞き入れないと思いますよ」
「そうかしら」
「尉官との付き合いは、殿下より僕の方が2年は長いですから。……っと、戻って来ますよ」
ビートの言う通り、ハンがいつものように仏頂面で、二人のところに戻って来る。
「行きが62歩、帰りが61歩だ」
「承知いたしました」
「後2回、往復するからな」
「ええ、行ってらっしゃいませ」
ハンが離れたところで、今度はビートの方から声をかけてきた。
「殿下が参加するのであれば、尉官を休ませることは可能なんですよね」
「そうですわね。後はどうやって休ませるか、ですけれど……」
「押して駄目なら、引いてみるのも手ですよ」
「引いてみる? と申しますと」
「あの人は周りがやっていることに倣(なら)う性格ですから、皆が休もうとすれば……」
「その場合は恐らく、『自分は上官なのだから、模範となるべく働く』などとお考えになりますわね」
「うーん……、ありそうですね」
再び、ハンが戻って来る。
「今度は行き、帰り共に61歩だ」
「承知いたしました」
もう一度ハンが離れ、会話を続ける。
「やっぱりエリザ先生に知恵を借りた方が良さそうですね。僕たちよりずっと、尉官との付き合いが長いみたいですし」
「そうですわ、……ね?」
クーは目を丸くし、ビートに尋ねる。
「あなた、ハンとエリザさんとのご関係をご存知なのかしら?」
「関係? どう言う意味です?」
「……あっ」
クーは口を押さえ、しどろもどろに応じる。
「いえ、その、変な意味では無くですね、あの、何と申しますか、その、わたくしもそれほど、詳しいと言うわけではございませんけれど」
「……? あの、落ち着いて下さい、殿下」
「えっ、あっ、はい」
「僕が知っているのは、尉官と先生が懇意にしていると言うことくらいです。付き合い云々は、僕の推理でしかありません。
それより、殿下?」
「はっ、はい?」
目を白黒させているクーに、ビートは落ち着いた声色で尋ねてきた。
「殿下は何か、尉官と先生について、公に明かせないような情報を持っていると考えていいんでしょうか?」
「なっ」
「殿下の態度から、そのような事実があるように見受けられるんですが。無論、答えたく無いと言うのであれば、無理に聞きはしません」
「そ、……そうですわね。詮索しないでいただけると、非常に助かります。わたくしも、ハンも」
「そして先生も、ですか?」
「……ええ」
そうこうしている間にハンが3往復目を終え、会話はここで途切れた。
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堅物尉官。
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翌日朝早く、マリアを除くハンたち3人とクーは、丘の上に立っていた。
「昨晩も通達したが、本日の測量調査には、マリアの代わりにクーが参加する。とは言えマリアの役をそのままやらせるのは大変だから、その役は俺がやることにする。
クーには俺の歩数集計と距離の換算、各ポイント毎の角度計算、天体観測、その他普段は俺がやってることを行ってもらう。
それじゃ早速、ビートはここに竿を打ってくれ。シェロは、……そうだな、向こうに」
「了解っス」
ハンがてきぱきと指示を送るのを、クーはにこにこと微笑みながら眺めている。
と、ハンがそれに気付き、苦い表情を浮かべてくる。
「何だ? 何かおかしいか?」
「お気になさらず。仕事はきちんといたしますので」
「……ああ」
会話を切り上げ、ハンはすたすたと、シェロのいるところへ歩いて行く。
その間に、クーはビートにあれこれと話しかける。
「ビート、あなたはいつお休みになるのかしら?」
「明日になりました。シェロは明後日」
「ハンはいつお休みを?」
「聞いてません。休む気、無いんじゃないでしょうか」
「あら」
クーは眉をひそめ、ハンの背中をにらむ。
「わたくしの進言、理解してらっしゃらないのね」
「と言うより、自分自身のことは除外して考えてるものと」
「まったく……。エリザさんにも釘を差していただこうかしら」
そうつぶやいたクーに、ビートは苦笑いを見せる。
「そんなことすると、あの人は却って聞き入れないと思いますよ」
「そうかしら」
「尉官との付き合いは、殿下より僕の方が2年は長いですから。……っと、戻って来ますよ」
ビートの言う通り、ハンがいつものように仏頂面で、二人のところに戻って来る。
「行きが62歩、帰りが61歩だ」
「承知いたしました」
「後2回、往復するからな」
「ええ、行ってらっしゃいませ」
ハンが離れたところで、今度はビートの方から声をかけてきた。
「殿下が参加するのであれば、尉官を休ませることは可能なんですよね」
「そうですわね。後はどうやって休ませるか、ですけれど……」
「押して駄目なら、引いてみるのも手ですよ」
「引いてみる? と申しますと」
「あの人は周りがやっていることに倣(なら)う性格ですから、皆が休もうとすれば……」
「その場合は恐らく、『自分は上官なのだから、模範となるべく働く』などとお考えになりますわね」
「うーん……、ありそうですね」
再び、ハンが戻って来る。
「今度は行き、帰り共に61歩だ」
「承知いたしました」
もう一度ハンが離れ、会話を続ける。
「やっぱりエリザ先生に知恵を借りた方が良さそうですね。僕たちよりずっと、尉官との付き合いが長いみたいですし」
「そうですわ、……ね?」
クーは目を丸くし、ビートに尋ねる。
「あなた、ハンとエリザさんとのご関係をご存知なのかしら?」
「関係? どう言う意味です?」
「……あっ」
クーは口を押さえ、しどろもどろに応じる。
「いえ、その、変な意味では無くですね、あの、何と申しますか、その、わたくしもそれほど、詳しいと言うわけではございませんけれど」
「……? あの、落ち着いて下さい、殿下」
「えっ、あっ、はい」
「僕が知っているのは、尉官と先生が懇意にしていると言うことくらいです。付き合い云々は、僕の推理でしかありません。
それより、殿下?」
「はっ、はい?」
目を白黒させているクーに、ビートは落ち着いた声色で尋ねてきた。
「殿下は何か、尉官と先生について、公に明かせないような情報を持っていると考えていいんでしょうか?」
「なっ」
「殿下の態度から、そのような事実があるように見受けられるんですが。無論、答えたく無いと言うのであれば、無理に聞きはしません」
「そ、……そうですわね。詮索しないでいただけると、非常に助かります。わたくしも、ハンも」
「そして先生も、ですか?」
「……ええ」
そうこうしている間にハンが3往復目を終え、会話はここで途切れた。
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