「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第1部
蒼天剣・手本録 4
晴奈の話、22話目。
小旅行のはじまり。
4.
翌朝、柊と晴奈は昨日の酒宴など無かったかのように、黙々と食事を取っていた。
「……」
「……」
一足先に柊が食べ終え、茶をゆっくりと飲み始める。そして晴奈が食べ終わったところで、柊が口を開いた。
「どこに行こっか?」
「え?」
何の話か分からず、晴奈が聞き返す。
「ほら、夕べ話してた、旅の話。さっと行って、さっと帰れるところがいいわよね」
「ああ……。えーと、その、どこがいいでしょうか」
地理に詳しくない晴奈は、そのまま聞き返す。
「んー、じゃあ央南東部の……、そうね、州都の青江辺りなんかどうかしら?
同じ央南だからこことそれほど勝手が違うことも無いし、途中に険しい山とかも無いから、万一何かあってもすぐ戻れるもの」
「ふむ……。では、それでお願いします」
「ふふ、楽しみね」
柊はうれしそうな顔で、茶を一息に飲み干した。
こんな感じで、晴奈は柊と共に央南東部へと旅に出た。
「青江とは、どのような場所なのですか?」
「あなたの故郷、黄海と同じ港町よ。昔話も豊富で、退屈しない場所ね」
「ほう……」
13の頃までほとんど、自分の住む街から出たことの無かった晴奈は、その話に心をときめかせていた。
(黄海とはまた別の港町、か。楽しみだ)
「ふふ……」
唐突に、柊が笑う。
「どうされました?」
「ん、ああ……」
柊は楽しそうに微笑みかける。
「あなたいつも、そんなに笑う方じゃないわよね、って」
「え?」
そう返されて、晴奈はいつの間にか自分が笑みを浮かべていたことに気が付く。
「そう、ですね。心が浮ついておりました」
「わたしもよ、うふふ……」
そう言ってはいるが、いつも笑顔でいるからか、晴奈には柊の様子がいつもと違うようには感じられない。
しかしやはり、柊は上機嫌になっているらしい。楽しそうな口ぶりで、晴奈に色々と話しかけている。
「わたしね、こうして旅をする度に思うんだけど」
「はい」
「やっぱり旅は、一人より二人の方がいいなって」
「はあ……?」
突然そんなことを言われ、晴奈はきょとんとする。
「そんなものでしょうか」
「そんなものよ。一人旅も楽しいと言えば楽しいけれど、こうして二人で、色んなこと話しながら歩くの、好きだから。
ね、覚えてる? わたしの友達の、小鈴」
「橘殿ですね」
「そう、そう。あの子ともね、何度か一緒に旅したことあったんだけどね」
クスクスと笑いながら、柊はこう続ける。
「あの子といると、なんでか騒動って言うか、事件みたいなのにいっつも巻き込まれるのよね」
「そうなのですか?」
晴奈が目を丸くするのを見て、柊はまた笑う。
「ええ。それはそれで退屈しなかったけど、でもやっぱり普段の倍は疲れちゃうのよね。まあ、晴奈となら、流石にそんなことにはならないと思うけど。
あなたとなら、楽しい旅になりそうね、って」
「ええ。楽しい旅にしましょう」
晴奈は力一杯うなずき、嬉しさと楽しさを表した。
蒼天剣・手本録 終
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小旅行のはじまり。
4.
翌朝、柊と晴奈は昨日の酒宴など無かったかのように、黙々と食事を取っていた。
「……」
「……」
一足先に柊が食べ終え、茶をゆっくりと飲み始める。そして晴奈が食べ終わったところで、柊が口を開いた。
「どこに行こっか?」
「え?」
何の話か分からず、晴奈が聞き返す。
「ほら、夕べ話してた、旅の話。さっと行って、さっと帰れるところがいいわよね」
「ああ……。えーと、その、どこがいいでしょうか」
地理に詳しくない晴奈は、そのまま聞き返す。
「んー、じゃあ央南東部の……、そうね、州都の青江辺りなんかどうかしら?
同じ央南だからこことそれほど勝手が違うことも無いし、途中に険しい山とかも無いから、万一何かあってもすぐ戻れるもの」
「ふむ……。では、それでお願いします」
「ふふ、楽しみね」
柊はうれしそうな顔で、茶を一息に飲み干した。
こんな感じで、晴奈は柊と共に央南東部へと旅に出た。
「青江とは、どのような場所なのですか?」
「あなたの故郷、黄海と同じ港町よ。昔話も豊富で、退屈しない場所ね」
「ほう……」
13の頃までほとんど、自分の住む街から出たことの無かった晴奈は、その話に心をときめかせていた。
(黄海とはまた別の港町、か。楽しみだ)
「ふふ……」
唐突に、柊が笑う。
「どうされました?」
「ん、ああ……」
柊は楽しそうに微笑みかける。
「あなたいつも、そんなに笑う方じゃないわよね、って」
「え?」
そう返されて、晴奈はいつの間にか自分が笑みを浮かべていたことに気が付く。
「そう、ですね。心が浮ついておりました」
「わたしもよ、うふふ……」
そう言ってはいるが、いつも笑顔でいるからか、晴奈には柊の様子がいつもと違うようには感じられない。
しかしやはり、柊は上機嫌になっているらしい。楽しそうな口ぶりで、晴奈に色々と話しかけている。
「わたしね、こうして旅をする度に思うんだけど」
「はい」
「やっぱり旅は、一人より二人の方がいいなって」
「はあ……?」
突然そんなことを言われ、晴奈はきょとんとする。
「そんなものでしょうか」
「そんなものよ。一人旅も楽しいと言えば楽しいけれど、こうして二人で、色んなこと話しながら歩くの、好きだから。
ね、覚えてる? わたしの友達の、小鈴」
「橘殿ですね」
「そう、そう。あの子ともね、何度か一緒に旅したことあったんだけどね」
クスクスと笑いながら、柊はこう続ける。
「あの子といると、なんでか騒動って言うか、事件みたいなのにいっつも巻き込まれるのよね」
「そうなのですか?」
晴奈が目を丸くするのを見て、柊はまた笑う。
「ええ。それはそれで退屈しなかったけど、でもやっぱり普段の倍は疲れちゃうのよね。まあ、晴奈となら、流石にそんなことにはならないと思うけど。
あなたとなら、楽しい旅になりそうね、って」
「ええ。楽しい旅にしましょう」
晴奈は力一杯うなずき、嬉しさと楽しさを表した。
蒼天剣・手本録 終



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今日の旅岡さん

~ Comment ~
NoTitle
まとめてお返事。
>尻尾をいじっている
>触り心地いいんだろうね
>でも、こういう獣の毛って高値で売られてたりしないんで?
例えば、ハリネズミさんがデパートに出かけ、そこで毛皮セールとかやってたとします。
キツネやミンク、チンチラなど、ふわふわもこもこの皮革製品が並んでいます。
そこへ、同じように並べられた、「人革」のコート。
……買います? 僕は買いません。
双月世界における皮革製品も、同じような扱いでしょうね。
獣人さんの毛皮で作ったコートとかが売られてたら、普通の人はドン引きするでしょう。
カツラくらいなら、あるかも知れませんが。
>貴重な獣の毛とか
>触られると獣の本能で気持ち良さげな表情になるのね
犬や猫は、撫でるところを撫でると本当に気持ちよさそうな素振りを見せますよね。
きっとそんな感じなんでしょうね。
>本当に言いワケから入って来たよ
>見ている方は面白いな
>お気になったよコイツ
>言いワケ大王だぬ
>男らしくないのぅ
>最後まで言いワケだった
>雑魚だったね
>でも、こういう奴って結構しぶといから生き残りそう
どうしようもない奴です、クラウン。
ちなみにしばらく後で再登場しますが、やっぱり最低のまま。
>酒に弱いのね師匠
>言われてみれば納得してしまうな
なんかお酒に弱そうなイメージがありますね、雪乃。
>宴会の帰りに刺客に出会えばどうなるか?
>危険だぬ
>飲ません方がいいな
本人も自覚してるんでしょうね。
なので、滅多に飲みません。
>何気に地名って中国系?
>そんな感じがするんですが
>気の所為?
央南の地名・人名は日本語+中国語な感じですね。
他の地域では、ヨーロッパとかその辺りの言語を参考にして名づけてます。
>昔話っていうと伝承や神話の?
>~を成し遂げた人物とか
そんな感じですね。
その辺りの詳しい話は「火紅狐」とかで紹介する予定です。
>というかもう旅に出たのね
>もう少し後かと思えば
>直ぐとはね
旅、と言っても今回は小旅行に近いですね。
本格的な旅は、物語の中ほどから始まります。
>尻尾をいじっている
>触り心地いいんだろうね
>でも、こういう獣の毛って高値で売られてたりしないんで?
例えば、ハリネズミさんがデパートに出かけ、そこで毛皮セールとかやってたとします。
キツネやミンク、チンチラなど、ふわふわもこもこの皮革製品が並んでいます。
そこへ、同じように並べられた、「人革」のコート。
……買います? 僕は買いません。
双月世界における皮革製品も、同じような扱いでしょうね。
獣人さんの毛皮で作ったコートとかが売られてたら、普通の人はドン引きするでしょう。
カツラくらいなら、あるかも知れませんが。
>貴重な獣の毛とか
>触られると獣の本能で気持ち良さげな表情になるのね
犬や猫は、撫でるところを撫でると本当に気持ちよさそうな素振りを見せますよね。
きっとそんな感じなんでしょうね。
>本当に言いワケから入って来たよ
>見ている方は面白いな
>お気になったよコイツ
>言いワケ大王だぬ
>男らしくないのぅ
>最後まで言いワケだった
>雑魚だったね
>でも、こういう奴って結構しぶといから生き残りそう
どうしようもない奴です、クラウン。
ちなみにしばらく後で再登場しますが、やっぱり最低のまま。
>酒に弱いのね師匠
>言われてみれば納得してしまうな
なんかお酒に弱そうなイメージがありますね、雪乃。
>宴会の帰りに刺客に出会えばどうなるか?
>危険だぬ
>飲ません方がいいな
本人も自覚してるんでしょうね。
なので、滅多に飲みません。
>何気に地名って中国系?
>そんな感じがするんですが
>気の所為?
央南の地名・人名は日本語+中国語な感じですね。
他の地域では、ヨーロッパとかその辺りの言語を参考にして名づけてます。
>昔話っていうと伝承や神話の?
>~を成し遂げた人物とか
そんな感じですね。
その辺りの詳しい話は「火紅狐」とかで紹介する予定です。
>というかもう旅に出たのね
>もう少し後かと思えば
>直ぐとはね
旅、と言っても今回は小旅行に近いですね。
本格的な旅は、物語の中ほどから始まります。
NoTitle
何気に地名って中国系?
そんな感じがするんですが
気の所為?
昔話っていうと伝承や神話の?
~を成し遂げた人物とか
というかもう旅に出たのね
もう少し後かと思えば
直ぐとはね
そんな感じがするんですが
気の所為?
昔話っていうと伝承や神話の?
~を成し遂げた人物とか
というかもう旅に出たのね
もう少し後かと思えば
直ぐとはね
いつもご愛読ありがとうございます。
一つの街、一つの国の中で繰り広げられるお話、
と言うのも個人的には好きです。
昔遊んだあるゲームがそんな感じの話で、強く影響を受けてます。
(ちなみに、獣耳が好きになったのもそのゲームの影響です)
女二人旅とは言え、腕に覚えのある人たちですからねぇ。きっと大丈夫w
でっかいなぁ……。
ウチの方は、晴奈(第2部以降):173センチ56キロ、雪乃:168センチ50キロくらいですね。
二人とも、ほぼ日本人体型。晴奈がちょっと大きいくらいですね。
一つの街、一つの国の中で繰り広げられるお話、
と言うのも個人的には好きです。
昔遊んだあるゲームがそんな感じの話で、強く影響を受けてます。
(ちなみに、獣耳が好きになったのもそのゲームの影響です)
女二人旅とは言え、腕に覚えのある人たちですからねぇ。きっと大丈夫w
でっかいなぁ……。
ウチの方は、晴奈(第2部以降):173センチ56キロ、雪乃:168センチ50キロくらいですね。
二人とも、ほぼ日本人体型。晴奈がちょっと大きいくらいですね。
いつもどおりLandMです。
これから旅に出るのですね。
世界観が広がって良いことですよね。世界の広さを感じることができるのもファンタジーの良さですからね。私の話はまだ一つの自治区しか出てないですからね。狭いところでお話が綴られておりますね。
女で旅をするのは大変なような気がしますが、頑張ってもらえるといいですねえ。
ウチのカレンも一人旅ですけどね。ちなみに設定上カレンは195センチの92キロで、一人旅しても全然大丈夫なお人ですね。
晴奈達はどれぐらいの体格なんでしょうかね~~。たぶん可愛らしい体型なんでしょうね。
これから旅に出るのですね。
世界観が広がって良いことですよね。世界の広さを感じることができるのもファンタジーの良さですからね。私の話はまだ一つの自治区しか出てないですからね。狭いところでお話が綴られておりますね。
女で旅をするのは大変なような気がしますが、頑張ってもらえるといいですねえ。
ウチのカレンも一人旅ですけどね。ちなみに設定上カレンは195センチの92キロで、一人旅しても全然大丈夫なお人ですね。
晴奈達はどれぐらいの体格なんでしょうかね~~。たぶん可愛らしい体型なんでしょうね。
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