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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第4部

    琥珀暁・彼港伝 3

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    神様たちの話、第156話。
    傀儡王。

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    3.
     イサコたちの帰還が彼らの本隊、ユーグ王国軍に伝わってすぐ、ハンたち4人は王宮に招待された。
    「(よくぞ無事に戻ってきてくれた)」
     ハンたちの前に、兵士や将官らより比較的質の良さそうな服をまとった、しかし、どこか頼り無さそうな短耳の男が現れる。
    「(ええと……、トロコフ尉官で良かったかな。成果はあったようであるな)」
    「(はい。南方にて大陸を発見し、現地の人間と……)」
     イサコが説明しかけたところで、その短耳はさえぎるようにまくし立てる。
    「(そうか、現地人を捕まえてきたのだな? しかし皇帝陛下からは見付け次第殺せと命じられていたはずであろう? 何故生かして連れてきたのだ?)」
    「(誤解しておいでです、国王陛下。我々が彼らに勝利したのではなく、彼らが我々を下したのです。私は彼らに拘束され、ここまで連行された身に過ぎません)」
     イサコの言葉に、国王と呼ばれたその男はきょとんとした顔になる。
    「(う、うん? 聞き間違いか? 貴官が現地人を連行したのではないのか?)」
    「(聞き間違いではございませんわ、王様)」
     と、クーが口を挟む。
    「(自己紹介いたしますわね。わたくしたちはあなた方の仰る、南方にある国から参りました。
     わたくしはその国の統治者、ゼロ・タイムズの娘で、クラム・タイムズと申します。この国、いえ、この『ジーンの世界』へは、平和的な交流を求めて参りました)」
    「(え? え? ……つまりどう言うことなのだ、尉官?)」
    「(タイムズ殿下が仰られた通りです。南方の『タイムズの世界』は、争いを求めておりません。ただし我々のように侵略してくる者に対しては毅然と対抗措置を採り、迎撃・報復を行うとのことです。
     事実、彼らの港を占拠した我々に対し、彼らは我々を拿捕・拘束しております)」
    「(それは……しかし……その……)」
     明らかに困惑した様子の国王に、イサコは説得しようとする。
    「(陛下、ともかく彼らは友好的に接して欲しいと申しておるのです。戦わずに済むのであればそれで良いのでは……)」「ちょい待ち、イサコくん」
     と、今まできょろきょろと辺りをうかがっていたエリザが口を挟む。
    「初めて聞くような話をいきなりバンバン聞かされて、アタマがちゃんと回ってへんような状態で『さあどないするかさっさと決めてんか』言うて詰め寄っても、そんなん絶対、後で言うた言わへんて揉めるやん。
     そもそもや。この人はアタシらが本来、話しよう思てるジーンっちゅうヤツやあらへんねやろ?」
    「あ、はい。そうですね、紹介が遅れました。彼はこのユーグ王国の国王で……」「せやろ?」
     さえぎり気味にそう返し、エリザはイサコの襟をくい、と引き、熊耳を自分の口元まで引き寄せる。
    「ココで変な受け答えさせへん方がええで。『監視役』の目もあるやろからな」
    「なるほど、確かに」
     一方、エリザとイサコが耳打ちし合っている間にも、クーは国王にあれこれと質問をぶつけていた。
    「(ではこの街の東に、ジーン本軍の基地がございますのね)」
    「(うむ。本軍の兵士らはその基地より、ここや他の街など、我が領地全体を巡回しておるのだ)」
    「(規模や頻度はどの程度でしょうか?)」
    「(何故そんなことを……?)」
    「(彼らともお話いたせれば、と存じまして)」
    「(そう言うことであれば、私の方から彼らに話を通しておくこともできるが)」
    「(お心遣い、感謝いたしますわ。ではそちらもお願いするとして……)」
     と、そこにハンが口を挟む。
    「(失礼ながら、国王陛下。よろしいでしょうか)」
    「(うむ?)」
    「(先程トロコフ尉官より伝えられたように、我々の部隊が乗っている船は現在、港の沖合に留まっております。
     この船の港への停泊許可、そして我々の上陸と、この街に滞在する許可をいただけないでしょうか)」
    「(きょ、許可であるか。そ、その、御上に伝えなければ、私からはどうとも……)」
     その回答に、ハンは――表情こそ出さないものの――げんなりした様子をにじませる。
    「(失礼を重ねるようですが、陛下。あなたがこの国の主でしょう? この国の中における裁量や権限はあなたに帰属し、あなたが最高決定権を有するものではないのですか?)」
    「(名目上は、確かにそれはその通りなのだが、『この世界』全体の決定権は御上にある。私の独断で勝手に決めては、御上から後で何を言われるか……。
     ともかく、御上に話を通し、許可を得られなければ、私からは何とも……。すまないが、しばらく海の上で滞在してもらうしか)」
    「(……承知しました)」
     それ以上の問答を諦め、ハンたちは王宮を後にした。
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