「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第4部
琥珀暁・彼港伝 4
神様たちの話、第157話。
押すべきか、引くべきか。
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4.
王宮を後にし、ハンたち4人は船へ戻る道中、今後について話し合っていた。
「上陸許可が出ないことにはどうしようも無いですね。しばらくの間、海上で留まるしか無いでしょう」
そう切り出したハンに、エリザが反論する。
「なんでやねんな? 許可なんか、あっちの内々での話やないの。ここに入れへんっちゅうんやったら、別のトコに上陸して陣取ったらええだけやん」
「しかし、それでは角が立つでしょう。我々は友好的にと……」
「こっちが『仲良うしよなー』言うて手ぶらで近寄ったら、向こうが『ほんならこっちも』言うて気ぃ許すと思うんか? 向こうがめっちゃ好戦的なんははっきりしとるやろ。ボッコボコに殴られるんがオチや。
そう言う相手やと最初っから分かっとるんや、こっちかて遠慮はいらんねん。あっちの許す、許さへんを基準にして行動する理由は無いし、こっちにはこっちの都合があるねんで?」
「それは確かにそうですが……」
ハンが渋る一方、クーは同意する。
「わたくしは、エリザさんの仰る通りだと存じますわね。ハンの物の仰り方、まるで既に相手の配下にあるかのように感じました。
わたくしたちの上に立つ者は父上、ゼロ・タイムズであって、ジーンではございませんわ」
「俺は何も、そんなつもりで話していたわけじゃない。あくまで相手の立場をだな……」
「そちらについても、エリザさんの仰る通りですわ。相手がわたくしたちを軽んじていると言うのに、こちらが尊重する理由がございますか?」
「相手が尊重しないからと言って自分も尊重しないなんて理屈は、俺は採りたくない。
出会った相手が野盗だったら、俺も士官であることを辞め、野盗になれって言うのか? それこそバカバカしい、幼稚な理屈だろう。相手がどんな人間であったにせよ、俺は一定以上の理解と敬意を示すつもりだ。
とにかくこの遠征隊のリーダーは俺だ。相手の許可や寛容無しに、こっちの都合と利益だけで身勝手な行動を執ることは、俺が断じて許さない。よって現状はこの街から離れ、船上で相手の回答を待つことにする。
それで問題ありますか、エリザさん?」
「アンタがどーしてもそーしたいっちゅうんやったら、何も言わへんわな。イサコくんにしても、揉め事なんか起きて欲しくないやろしな」
「ええ、そうしていただけると、大変助かります」
イサコがうなずいたところで、ハンは話を切り上げようとする。
「じゃあ、一旦船に戻ろう。相手から沙汰があるまでは……」「一応聞くけどもな」
が、エリザが手を挙げ、こう尋ねてきた。
「あっちが『上陸許可でけへんから帰ってー』言うてきたら、『あいよー』言うて引き返すんか? アホやろ、そんなん」
「ええ、流石にそれは無いです」
ハンはかぶりを振り、北の方に見える山々を指差す。
「帰ったところで、問題は何も解決してないですからね。
我々の本懐はこの地を訪れることではなく、ジーンに会い、平和的な関係を築くことですから」
「ソレ聞いて安心したわ。ホンマにこのまんま帰ったら、ガキの使いも同然やからな」
「大人ですからね。自分がなすべきことは、しっかり把握しています」
そう言って、ハンはニヤ、と笑う。
対するエリザも、「せやったね」と答えながら笑った。
「何でやろな、アンタのコトを子供扱いしてまうんよ。ゴメンな」
「構いませんよ。昔からの付き合いですし。それこそ、俺が小さい時から」
「せやねぇ、アハハ……」
二人して笑い合ったところで――突然ハンが表情を変え、「ん?」とうなった。
「エリザさん」
「どないした?」
「前から兵士らしき人間が来ます。しかしユーグ王宮で見た兵士とは、装備が違います」
「うん?」
言われてエリザもクーたちも、ハンの向く方に目をやる。
程無く、その兵士たちがハンたちの前で立ち止まった。
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押すべきか、引くべきか。
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4.
王宮を後にし、ハンたち4人は船へ戻る道中、今後について話し合っていた。
「上陸許可が出ないことにはどうしようも無いですね。しばらくの間、海上で留まるしか無いでしょう」
そう切り出したハンに、エリザが反論する。
「なんでやねんな? 許可なんか、あっちの内々での話やないの。ここに入れへんっちゅうんやったら、別のトコに上陸して陣取ったらええだけやん」
「しかし、それでは角が立つでしょう。我々は友好的にと……」
「こっちが『仲良うしよなー』言うて手ぶらで近寄ったら、向こうが『ほんならこっちも』言うて気ぃ許すと思うんか? 向こうがめっちゃ好戦的なんははっきりしとるやろ。ボッコボコに殴られるんがオチや。
そう言う相手やと最初っから分かっとるんや、こっちかて遠慮はいらんねん。あっちの許す、許さへんを基準にして行動する理由は無いし、こっちにはこっちの都合があるねんで?」
「それは確かにそうですが……」
ハンが渋る一方、クーは同意する。
「わたくしは、エリザさんの仰る通りだと存じますわね。ハンの物の仰り方、まるで既に相手の配下にあるかのように感じました。
わたくしたちの上に立つ者は父上、ゼロ・タイムズであって、ジーンではございませんわ」
「俺は何も、そんなつもりで話していたわけじゃない。あくまで相手の立場をだな……」
「そちらについても、エリザさんの仰る通りですわ。相手がわたくしたちを軽んじていると言うのに、こちらが尊重する理由がございますか?」
「相手が尊重しないからと言って自分も尊重しないなんて理屈は、俺は採りたくない。
出会った相手が野盗だったら、俺も士官であることを辞め、野盗になれって言うのか? それこそバカバカしい、幼稚な理屈だろう。相手がどんな人間であったにせよ、俺は一定以上の理解と敬意を示すつもりだ。
とにかくこの遠征隊のリーダーは俺だ。相手の許可や寛容無しに、こっちの都合と利益だけで身勝手な行動を執ることは、俺が断じて許さない。よって現状はこの街から離れ、船上で相手の回答を待つことにする。
それで問題ありますか、エリザさん?」
「アンタがどーしてもそーしたいっちゅうんやったら、何も言わへんわな。イサコくんにしても、揉め事なんか起きて欲しくないやろしな」
「ええ、そうしていただけると、大変助かります」
イサコがうなずいたところで、ハンは話を切り上げようとする。
「じゃあ、一旦船に戻ろう。相手から沙汰があるまでは……」「一応聞くけどもな」
が、エリザが手を挙げ、こう尋ねてきた。
「あっちが『上陸許可でけへんから帰ってー』言うてきたら、『あいよー』言うて引き返すんか? アホやろ、そんなん」
「ええ、流石にそれは無いです」
ハンはかぶりを振り、北の方に見える山々を指差す。
「帰ったところで、問題は何も解決してないですからね。
我々の本懐はこの地を訪れることではなく、ジーンに会い、平和的な関係を築くことですから」
「ソレ聞いて安心したわ。ホンマにこのまんま帰ったら、ガキの使いも同然やからな」
「大人ですからね。自分がなすべきことは、しっかり把握しています」
そう言って、ハンはニヤ、と笑う。
対するエリザも、「せやったね」と答えながら笑った。
「何でやろな、アンタのコトを子供扱いしてまうんよ。ゴメンな」
「構いませんよ。昔からの付き合いですし。それこそ、俺が小さい時から」
「せやねぇ、アハハ……」
二人して笑い合ったところで――突然ハンが表情を変え、「ん?」とうなった。
「エリザさん」
「どないした?」
「前から兵士らしき人間が来ます。しかしユーグ王宮で見た兵士とは、装備が違います」
「うん?」
言われてエリザもクーたちも、ハンの向く方に目をやる。
程無く、その兵士たちがハンたちの前で立ち止まった。
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