「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第4部
琥珀暁・彼港伝 5
神様たちの話、第158話。
あしらい。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
5.
「(我々は帝国軍沿岸方面監視基地の者だ! お前らが南方から戻ってきた奴らだな!?)」
兵士たちにいきなりまくし立てられ、流石のハンもむっとした表情を浮かべる。
「(自分から名乗る礼儀は多少評価するが、一体何なんだ? 確かに俺たちは、あんたたちの言う南方からやって来たが)」
「(うん? 言葉が分かるのか。案外、文明的なようだな。まあいい。我々に投降してもらおうか)」
「(投降だと? まるで俺たちが犯罪者のような物言いだな。何の権限がある?)」
「(権限? 奴隷が何を偉そうに!)」
奴隷と聞き、イサコが顔を青くする一方、残る3人は一様に怒りをあらわにしていた。
「(ち、違います! 彼らは……)」「黙っとき、イサコくん」「……は、はい」
イサコとハンを押しのけ、エリザが前に出る。
「(アンタら、港におった兵士から事情聞いてこっち駆けつけたクチか?)」
「(そうだ。強行上陸を試みた痴れ者がいると聞いてな)」
「(強行上陸? アタシらは『上がってええかー』てちゃんと聞いたし、ユーグ王国の人らから許可ももろたで。人の話はちゃんと聞かなアカンで)」
「(はあ? 王国の許可だと? バカめ! この国の民にそんな権限があるものか!)」
兵士は馬鹿にしたような目で、エリザをにらむ。
「(全権限は我々帝国民にあるのだ! お前らも周りの奴らも、我々にとっては単なる奴隷に過ぎん!)」
「(ほーぉ。そうかそうか、よぉ分かったわ)」
エリザは魔杖を構えながら、その兵士に尋ねる。
「(つまりこう言うワケやな、アンタら帝国の人間はアタシらの上陸許可も与えへんし、平和的な話し合いもする気無い。帝国人以外は人間扱いしたらへんぞ、と)」
「(だったら何だ!?)」
今度は兵士には答えず、ハンに尋ねる。
「ハンくん、コイツらこんなコト言うてるけど、ソレでも大人しく従うか?
連れてかれたら多分武器やら何やら全部取り上げられて裸にされて、めっちゃひどい目に遭うやろけど」
ハンは渋るような顔をしていたが、やがて諦め気味に答えた。
「……致し方無いですね。でも殺すのだけは、絶対にやめて下さいよ」
「分かっとる。コイツら死んでもーたら、誰が戻って報告するんやっちゅう話やんか」
「(おい、何をごちゃごちゃと……)」
またも怒鳴ろうとしてきた兵士に向き直り、エリザは諭すようにこう返す。
「(あのな? アンタらんトコには後で、改めてお邪魔する予定やさかい、今日のところは大人しく帰りいや)」
「(何を言うかと思えば。バカも休み休み言え!)」
「(帰りって)」
「(くどい!)」
「(こんだけ言うても分からへんか?)」
「(分からんのは貴様らの方だ!)」
「(言うて分からへん人には痛い目遭うてもらうで?)」
「(はっ、そんなに言うなら見せてもらおうか!?)」
「(言うたな)」
次の瞬間、居丈高に怒鳴っていたその兵士が、3メートルほど後方に吹き飛ばされた。
「(わあっ!?)」
「(お、おい!?)」
他の兵士が目を丸くし、飛んで行った兵士の方に振り向く。
「ほら、アンタらもよそ見せんと」
その隙にエリザが次弾を放ち、残った兵士たちも弾き飛ばす。
「ひえっ……」「おわあっ……」「ぎゃ……」
10人以上いた兵士たちが残らず転がされたところで、エリザが再度声をかける。
「(何べんも言わすな。早よ帰れや)」
「(……てっ、撤退~!)」
先程までエリザを見下していた兵士たちは、慌ててその場から逃げ去っていった。
「やれやれ」
成り行きを眺めていたハンが、肩をすくめる。
「これで我々に対する彼らの心象は、かなり悪いものになったでしょうね」
「そしたら何や? あのまんま連れてかれた方が良かったか?」
「そうは言ってません。ただ、この後のことを考えると」
「なったもんはしゃあないやろ。なったらなったで、それに応じて考えたらええだけや。臨機応変やね」
「……ま、そうですね」
一行は街を後にし、再び船に戻った。
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あしらい。
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「(我々は帝国軍沿岸方面監視基地の者だ! お前らが南方から戻ってきた奴らだな!?)」
兵士たちにいきなりまくし立てられ、流石のハンもむっとした表情を浮かべる。
「(自分から名乗る礼儀は多少評価するが、一体何なんだ? 確かに俺たちは、あんたたちの言う南方からやって来たが)」
「(うん? 言葉が分かるのか。案外、文明的なようだな。まあいい。我々に投降してもらおうか)」
「(投降だと? まるで俺たちが犯罪者のような物言いだな。何の権限がある?)」
「(権限? 奴隷が何を偉そうに!)」
奴隷と聞き、イサコが顔を青くする一方、残る3人は一様に怒りをあらわにしていた。
「(ち、違います! 彼らは……)」「黙っとき、イサコくん」「……は、はい」
イサコとハンを押しのけ、エリザが前に出る。
「(アンタら、港におった兵士から事情聞いてこっち駆けつけたクチか?)」
「(そうだ。強行上陸を試みた痴れ者がいると聞いてな)」
「(強行上陸? アタシらは『上がってええかー』てちゃんと聞いたし、ユーグ王国の人らから許可ももろたで。人の話はちゃんと聞かなアカンで)」
「(はあ? 王国の許可だと? バカめ! この国の民にそんな権限があるものか!)」
兵士は馬鹿にしたような目で、エリザをにらむ。
「(全権限は我々帝国民にあるのだ! お前らも周りの奴らも、我々にとっては単なる奴隷に過ぎん!)」
「(ほーぉ。そうかそうか、よぉ分かったわ)」
エリザは魔杖を構えながら、その兵士に尋ねる。
「(つまりこう言うワケやな、アンタら帝国の人間はアタシらの上陸許可も与えへんし、平和的な話し合いもする気無い。帝国人以外は人間扱いしたらへんぞ、と)」
「(だったら何だ!?)」
今度は兵士には答えず、ハンに尋ねる。
「ハンくん、コイツらこんなコト言うてるけど、ソレでも大人しく従うか?
連れてかれたら多分武器やら何やら全部取り上げられて裸にされて、めっちゃひどい目に遭うやろけど」
ハンは渋るような顔をしていたが、やがて諦め気味に答えた。
「……致し方無いですね。でも殺すのだけは、絶対にやめて下さいよ」
「分かっとる。コイツら死んでもーたら、誰が戻って報告するんやっちゅう話やんか」
「(おい、何をごちゃごちゃと……)」
またも怒鳴ろうとしてきた兵士に向き直り、エリザは諭すようにこう返す。
「(あのな? アンタらんトコには後で、改めてお邪魔する予定やさかい、今日のところは大人しく帰りいや)」
「(何を言うかと思えば。バカも休み休み言え!)」
「(帰りって)」
「(くどい!)」
「(こんだけ言うても分からへんか?)」
「(分からんのは貴様らの方だ!)」
「(言うて分からへん人には痛い目遭うてもらうで?)」
「(はっ、そんなに言うなら見せてもらおうか!?)」
「(言うたな)」
次の瞬間、居丈高に怒鳴っていたその兵士が、3メートルほど後方に吹き飛ばされた。
「(わあっ!?)」
「(お、おい!?)」
他の兵士が目を丸くし、飛んで行った兵士の方に振り向く。
「ほら、アンタらもよそ見せんと」
その隙にエリザが次弾を放ち、残った兵士たちも弾き飛ばす。
「ひえっ……」「おわあっ……」「ぎゃ……」
10人以上いた兵士たちが残らず転がされたところで、エリザが再度声をかける。
「(何べんも言わすな。早よ帰れや)」
「(……てっ、撤退~!)」
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「そうは言ってません。ただ、この後のことを考えると」
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「……ま、そうですね」
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