黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第4部

    琥珀暁・彼港伝 6

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    神様たちの話、第159話。
    街の声。

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    6.
     王宮を訪ねて数日後、ハンはエリザを船内の自室に招いていた。
    「エリザさん。あなたにはっきり、言うべきことがあります」
     そう切り出し、自分をにらんできたハンに、エリザは「あーら」と返す。
    「どないしたん、そんな怖いカオして」
    「とぼけないで下さい。分かってるはずでしょう?」
    「ま、そろそろ呼ぶんちゃうやろかなーとは思てたけど」
    「では、はっきり確認させてもらいますよ。
     エリザさん、……港で商売してたでしょう?」
     ハンの質問に、エリザはあっけらかんと答える。
    「してたで。ボチボチやけど」
    「何考えてるんですか?」
     のらりくらりとしたエリザの返答に、ハンは声を荒げる。
    「まだ相手から何の回答も得られてないですし、帝国兵を撃退したことで、心象はかなり悪くなっているはずです。
     常識的に考えればこれ以上、こちらからの干渉はすべきでないでしょう?」
    「ほんなら聞くけどな」
     が、エリザはいつものようにニヤニヤ笑いながら、こう尋ね返す。
    「3ヶ月弱の航海で、船ん中の食料やら飲み水やら、ほぼほぼ無くなっとるわな? ドコからご飯、確保するねんな? あるトコからもらわなアカンやろ?
     でもアンタが『心象悪なっとる』言うてる相手に、『タダで食わしてんかー』て言い寄って、『えーよ』言うワケ無いやん? ほんならカネ稼いで買わな、どないもならんやん」
    「我々は船上にいるんですから、海から魚を穫れば……」
    「アンタなぁ、街の人からモノ買うたらアカン言う割に、街の人が使てる漁場は勝手に使てええっちゅうんか? 自分勝手すぎひんか、ソレ?」
    「う……」
     ハンはたじろぎかけるが、なおも強情を張ろうとする。
    「し、しかしですね、商売となれば、元手がいるでしょう? 何を売ってるんです? まさか船の備品を横流ししてたり……」
    「アホか」
     エリザは笑い飛ばし、自分の左腕を、右手でぺちぺちと叩いて見せた。
    「アタシの本職忘れとるやろ」
    「本職……? 魔術師でしょう? 何か芸でも見せてるとか?」
    「ちゃうわ」
     エリザは首に下げていたネックレスをつかみ、ハンの鼻先に掲げる。
    「宝飾屋やで。そら金属熔かすのんとかには、魔術使てるけどな。
     港の端で拾た貝殻やら綺麗な石やらを加工して、ペンダントやら指輪やらにして売ってんねん。あっちの女の子にめっちゃ人気出とるでー」
    「はぁ……」
     ハンは頭を抱え、椅子にうなだれる。
     と、それを眺めていたエリザが、フンと鼻を鳴らす。
    「干渉せんようにしとこ、傍観しとこかっちゅうのんも、場合によっては有効策やけどもな。向こうの状況も探らな、ホンマに有効な策なんちゅうのんは打ち出されへんで」
    「と言うと?」
     顔を上げたハンに、エリザは依然として笑みを崩さず、こう続ける。
    「アクセサリ売ってる片手間に、向こうのうわさやら評判やらを聞いとったんや。そしたらおもろいコトになってるみたいやで」
    「おもろいコト、……ですって?」
    「まずな、帝国さんの評判やけども、思った通り最低な感じやったね。
     しょっちゅう暴力沙汰起こしてはるし、あっちこっちの飯屋やら店屋で、タダ飯食うてタダ酒呑んでしとるらしいわ。本気で『帝国民以外は全員奴隷じゃ』思とるみたいやな。
     で、そんな帝国兵に喧嘩売ったアタシら、っちゅうかアタシやな、えらい人気みたいでな。普通、店開いてすぐなんて、客が来おへんやろ? アンタの言うように、心象悪いっちゅうんなら尚更や。
     せやのに開いたその日、いや、開く前からな、老若男女問わず『今度は何しはるんですかー』言うて囲まれてしもたんよ。めっちゃ期待の目ぇで見つめられてな」
    「大層な自慢ですね」
     ハンが皮肉を挟むが、エリザは構わず続ける。
    「そう言う感じやから、正直アタシが聞かんでも、向こうからアレやコレや教えてくれるんよ。……ま、話戻すけどもな。
     今な、アタシらのコト、うわさになっとんねん。『帝国に反旗を翻す人らが来はった』言うてな」
    「反旗を翻す、……ですって?」
    「せや。さっき言うたようにな、帝国の人らはこの辺りの人らに、ごっつ評判悪いねん。
     アンタが言う『心象の悪さ』も、帝国の人はともかく、ココら辺の人らには当てはまらへんやろな」
    「ふむ……」
    「ソコでや」
     エリザはピン、と人差し指を立て、こんな提案をした。
    「もし今後、この国の人らがアタシたちに『助けてー』言うてきたら、全面的に乗っかってみたらどないや?」
    「乗っかる、……と言うと?」
    「アタシらが前面に立って、帝国とガチで戦うっちゅう話や」
    「そんなこと、できるはずが無いでしょう!?」
     ハンは顔をしかめ、再度声を荒げて否定した。
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