黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第4部

    琥珀暁・彼港伝 7

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    神様たちの話、第160話。
    戦争宣伝戦略・クラシック。

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    7.
     ハンに提案を真っ向から否定されるが、エリザは声を荒げたりせず、やんわり尋ねる。
    「そないがーがーわめいてアカンアカン言わんときいや。なんでやな?」
    「確かに帝国兵の態度は横柄そのものでしたし、俺自身も少なからず、不快な思いをしました。エリザさんがうかがったと言うこの国の情況も、十分に納得行くものがありますし、かつ、同情すべき点があることは、大いに認めます。
     ですが、我々はそもそも話し合いに来たんです。侵略をしに来たわけじゃありません」
    「そう言うたかて、向こうが攻めに来るかも知れへんやろ。何せ、『心象が悪い』やからな」
    「それは……、確かに考慮すべき点ではあります。好戦的なことを考えれば、十分に有り得るでしょう。
     それに関しては、積極的に迎撃した方がいいと言うことは認めます。ノースポートでのこともありますからね」
    「せやな」
    「ただ、勝つにせよ負けるにせよ、その後の関係はどうしようも無く悪化するでしょうね。所期の目的は達成できそうにありません」
    「その点はしゃあないな」
     そう返したエリザを、ハンがにらみつけた。
    「関係悪化の初手を打ったのは誰なんですか」
    「アタシやね」
     一方のエリザも、姿勢を崩さない。
    「せやけどな、あの状況で他にやりようあったか? 仮にハンくんが相手したとて、結果は一緒やったやろ?」
    「……否定し切れませんね。あの時は俺もかなりムッと来てましたし、乱暴な手段に出ていたかも知れません」
    「他の二人は、そもそも手ぇ出されへんかったやろしな。結局、ああなるしか無かったんや」
    「そうですね。……すみません」
     ハンが素直に頭を下げ、エリザも肩をすくめて返す。
    「ほんならや、アタシが提案した策はどないや? ユーグ王国の人らの期待を背負って立つんやったらソレが大義名分にもなるし、少なくともこの国とアタシらとで友好関係を結べるやろ?」
    「だからそれは駄目です」
     話が振り出しに戻り、ハンもエリザも互いににらみ合う。
    「なんでやねん」
    「大義名分であるとか正当性だとか、そう言う点については納得できる面はあります。
     ですが物理的、物量的な問題があります。現状で戦闘に入ったら、我々の側が圧倒的に不利です」
    「つまり正面切って戦うには、兵隊も軍事物資もあらへんて言いたいワケやな」
    「何度も言いますが、俺たちは元々、話し合いをするためにやって来た遠征隊ですからね。勿論、相手が好戦的であることを考慮して、最低限の応戦ができる程度の人員と装備は揃えていますが、本格的に事を構えるとなると、すぐ底を突くでしょう」
    「せやな。ただ――多少甘めの予測やけども――緒戦はそんなに苦戦もせえへんのちゃうやろか」
     エリザの意見に、ハンは首を傾げた。
    「何故です?」
    「アタシらは600人で海越えて来たけども、相手さんはどないやった?」
    「50人、いや、出港時は100人だったと聞いてますね。……ふむ」
     一瞬考える様子を見せ、ハンはこう続ける。
    「つまり戦力の逐次投入、小出しに兵を送ってくる可能性が高いと?」
    「言うてはったやろ、イサコくんらは『海に流された』って。
     つまり帝国さんにとって死んでもええような人間を、杜撰(ずさん)で無茶な計画にぽいっと放り込みよったっちゅう話やん?
     ソコに、帝国さんの性格が出とると思わへんか?」
    「なるほど、仮に投入した部隊が全滅するほどの被害が出たとしても、帝国本軍にまでは被害が及ばないような編成にするだろう、と言うことですか」
    「そう言うコトや。多分2、3回送り込んで、その都度アタシらが全滅させたとしても、帝国さんはまともに兵員を送りよらんやろな。
     せやけども、事情を知らん人らからしたら、中身がどんなんでも、ソレは『帝国軍』や思て一まとめにされるわな?」
    「でしょうね」
    「ほんで、ココからがアタシの策になるんやけどな」
     そう前置きして、エリザはハンに詰め寄った。
    「イサコくんから聞いたやろ、『この世界』には帝国を除いて、9つの国があるって」
    「ええ、そう言ってましたね」
    「アタシらとユーグ王国が結託したとして、ほんで帝国の人らを二度も三度もボッコボコにしたったとして、そして更に、その評判がソコら辺の国に広まったとしたら?」
    「かなりの衝撃を与えるでしょうね。元々帝国によって虐げられていた人たちでしょうから、今のユーグ王国のように、我々に何かしら期待を抱くかも知れません。
     つまりエリザさんの目論見は、ユーグ王国と結託した上で、相手が本気を出そうとしていない緒戦で勝利し、それを近隣に喧伝。こちらが有利であるように見せた上で、共に戦う者をこの地で募り、集めることで、最終的に帝国を圧倒しよう、……と言うことですね?」
    「大正解。コレなら序盤は600人で事足りるし、勝てば勝つだけ人が集まる。帝国さんはジリ貧になるっちゅうワケや。
     ま、コレは相当楽観的な話になるけどな。そもそも帝国さんがどんだけけしかけて来るかで話が変わってくるしな」
    「寡兵であることを願うしかないですね」
     ハンはため息交じりに、ぼそ、とつぶやいた。
    「戦うしか無い、か。陛下が嘆かれるな……」
    「ま、アタシが話するさかい、心配せんで」
    「……説得力があると思ってるんですか、その言葉?」
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