「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第4部
琥珀暁・衝北伝 2
神様たちの話、第163話。
凸凹問答。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
2.
その日も小袋一杯にデニーを稼ぎ、エリザが戻ってきたところで、ハンが彼女のところへ詰め寄ってきた。
「お話があります」
「なんや?」
「ここでは何ですから、俺の部屋に」
「ココでええやろ? アンタがしたい話ちゅうのんはどうせ、2つしかあらへんからな」
「何ですって?」
「『遠征隊の規律がどうのこうの』か、『迎撃策はどないや』のどっちかやろ? どっちも陰でコソコソ言う必要は無いと思うけどな」
剣呑じみたエリザの言葉に、ハンのまなじりが尖ってくる。
「そんなに皆の面前で、俺に怒られたいんですか?」
「そんなコトあるかいな」
エリザは辺りを見回し、遠巻きに見守っている兵士たちに声をかける。
「みんな、ちょとこっち来ー」
「え?」
面食らった様子のハンをよそに、皆が集まってくる。
「アタシから、ちょと周知あるから」
「周知?」
尋ねるハンには答えず、エリザはこう続けた。
「明日辺りな、帝国軍さんら攻めてきはるで」
「は!?」
エリザからの突然の報告に、ハンはぎょっとしている。
「待って下さい、エリザさん。一体……」「とりあえず続き聞き」
そんなハンを制して、エリザは話し始めた。
「今日、街の人らがうわさしとったんやけどもな。街の外れでちょいちょい、帝国兵さんらが目撃されとるらしいんよ。どうも斥候(せっこう:敵や地形などの状況を確認・監視する兵士のこと)やろな。
ちゅうコトは近い内、攻めて来はるっちゅうコトや」
「対策は済んだんですか? 『5日で国王を説得する』と言っていましたが」
「そんなん言うてへんよ」
そう返され、ハンは唖然とした表情を浮かべる。
「何ですって? エリザさん、はっきり言っていたじゃないですか!?」
「人の話はちゃんと聞かなアカンで」
エリザはフン、と鼻を鳴らし、ハンの鼻に人差し指をちょこんと当てる。
「アタシが言うたんは『5日あればどうとでもでける』や。あんなしょぼくれたおっさんと話する気ぃなんか、ハナっから無いわ」
「国王と話さず、どうやってこの国の軍を動かすんです?」
「軍も放っとき」
「……わけが分かりません」
ハンはエリザに詰め寄り、苛立たしげに尋ねる。
「まさか俺たちだけで勝手に防衛するなんて言いませんよね!? そんなことをすればどうなるか、話し合ったはずですよね!?」
「分かっとるよ。ちゃんとみんなに助けてもらうつもりしとる」
「みんなですって? たった今、軍には助けを求めないと言ったばかりじゃないですか!?」
「言うたよ?」
「めちゃくちゃだ!」
ハンは顔を真っ赤にし、いよいよ怒鳴り出す。
「こんな数秒の間に、言うことがコロコロと変わるなんて! いい加減にも程があります! あなたは頭が、……頭がおかしいとしか思えない!」
続いて剣を抜き、エリザに向けた。
「あなたの権限をこの場で奪わせてもらいます! あなたは狂ってる! 到底、副隊長の任を全うできる状態じゃない!」
「言いたいコトはソレで全部か? 人の話聞かんと、よーもまあ、そんな人を罵りよって」
一方、エリザはいつも通りの、ひょうひょうとした態度を崩さない。
「アタシは何にも、矛盾したコトは一つも言うてへんで? アンタがカタいアタマで勝手な推察立てて、物事を変な方向に決め込んどるだけや」
「黙れ、狂人ッ!」
ハンは一歩間合いを詰め、エリザの鼻先に剣の先を付ける。
「もう一言もしゃべるな!」
「アホ」
次の瞬間――ぱちん、と何かが破裂したような音と共に、ハンは剣を放り出し、その場に尻餅を付いていた。
「な……な?」
「ぎゃーぎゃーうるさいわ。ちょと黙っとき」
「い……った……い、なに……を?」
その場で伸びたままのハンに、エリザは優しく声をかける。
「ちょとしびれさせたんや。黙れ黙れ言うてる割にアンタ、めっちゃうるさかったし」
「う……ぐ……」
その言葉に抗おうとしているらしく、ハンはぶるぶると手や足を震わせているが、立ち上がれそうな様子は全く見られない。
そんなハンに構わず、エリザは話を始めた。
「ほな、アタシの策についてちゃんと説明するからな。大人しく聞いときや」
@au_ringさんをフォロー
凸凹問答。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
2.
その日も小袋一杯にデニーを稼ぎ、エリザが戻ってきたところで、ハンが彼女のところへ詰め寄ってきた。
「お話があります」
「なんや?」
「ここでは何ですから、俺の部屋に」
「ココでええやろ? アンタがしたい話ちゅうのんはどうせ、2つしかあらへんからな」
「何ですって?」
「『遠征隊の規律がどうのこうの』か、『迎撃策はどないや』のどっちかやろ? どっちも陰でコソコソ言う必要は無いと思うけどな」
剣呑じみたエリザの言葉に、ハンのまなじりが尖ってくる。
「そんなに皆の面前で、俺に怒られたいんですか?」
「そんなコトあるかいな」
エリザは辺りを見回し、遠巻きに見守っている兵士たちに声をかける。
「みんな、ちょとこっち来ー」
「え?」
面食らった様子のハンをよそに、皆が集まってくる。
「アタシから、ちょと周知あるから」
「周知?」
尋ねるハンには答えず、エリザはこう続けた。
「明日辺りな、帝国軍さんら攻めてきはるで」
「は!?」
エリザからの突然の報告に、ハンはぎょっとしている。
「待って下さい、エリザさん。一体……」「とりあえず続き聞き」
そんなハンを制して、エリザは話し始めた。
「今日、街の人らがうわさしとったんやけどもな。街の外れでちょいちょい、帝国兵さんらが目撃されとるらしいんよ。どうも斥候(せっこう:敵や地形などの状況を確認・監視する兵士のこと)やろな。
ちゅうコトは近い内、攻めて来はるっちゅうコトや」
「対策は済んだんですか? 『5日で国王を説得する』と言っていましたが」
「そんなん言うてへんよ」
そう返され、ハンは唖然とした表情を浮かべる。
「何ですって? エリザさん、はっきり言っていたじゃないですか!?」
「人の話はちゃんと聞かなアカンで」
エリザはフン、と鼻を鳴らし、ハンの鼻に人差し指をちょこんと当てる。
「アタシが言うたんは『5日あればどうとでもでける』や。あんなしょぼくれたおっさんと話する気ぃなんか、ハナっから無いわ」
「国王と話さず、どうやってこの国の軍を動かすんです?」
「軍も放っとき」
「……わけが分かりません」
ハンはエリザに詰め寄り、苛立たしげに尋ねる。
「まさか俺たちだけで勝手に防衛するなんて言いませんよね!? そんなことをすればどうなるか、話し合ったはずですよね!?」
「分かっとるよ。ちゃんとみんなに助けてもらうつもりしとる」
「みんなですって? たった今、軍には助けを求めないと言ったばかりじゃないですか!?」
「言うたよ?」
「めちゃくちゃだ!」
ハンは顔を真っ赤にし、いよいよ怒鳴り出す。
「こんな数秒の間に、言うことがコロコロと変わるなんて! いい加減にも程があります! あなたは頭が、……頭がおかしいとしか思えない!」
続いて剣を抜き、エリザに向けた。
「あなたの権限をこの場で奪わせてもらいます! あなたは狂ってる! 到底、副隊長の任を全うできる状態じゃない!」
「言いたいコトはソレで全部か? 人の話聞かんと、よーもまあ、そんな人を罵りよって」
一方、エリザはいつも通りの、ひょうひょうとした態度を崩さない。
「アタシは何にも、矛盾したコトは一つも言うてへんで? アンタがカタいアタマで勝手な推察立てて、物事を変な方向に決め込んどるだけや」
「黙れ、狂人ッ!」
ハンは一歩間合いを詰め、エリザの鼻先に剣の先を付ける。
「もう一言もしゃべるな!」
「アホ」
次の瞬間――ぱちん、と何かが破裂したような音と共に、ハンは剣を放り出し、その場に尻餅を付いていた。
「な……な?」
「ぎゃーぎゃーうるさいわ。ちょと黙っとき」
「い……った……い、なに……を?」
その場で伸びたままのハンに、エリザは優しく声をかける。
「ちょとしびれさせたんや。黙れ黙れ言うてる割にアンタ、めっちゃうるさかったし」
「う……ぐ……」
その言葉に抗おうとしているらしく、ハンはぶるぶると手や足を震わせているが、立ち上がれそうな様子は全く見られない。
そんなハンに構わず、エリザは話を始めた。
「ほな、アタシの策についてちゃんと説明するからな。大人しく聞いときや」
- 関連記事



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~