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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第4部

    琥珀暁・衝北伝 5

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    神様たちの話、第166話。
    王国掌握。

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    5.
     ホープ島でハンが予想していた通り、北の大陸における日没は早く、クロスセントラルでは昼下がりに当たる時刻だった。
     その日没時になって、王宮のバルコニーからハンたち4人が姿を現した。
    「(みんな、集まっとるかー?)」
     まず、エリザが口を開き、眼下に広がる民衆を見渡す。
    「(集まっとるな。ほな今から、色々伝えるさかい。よー聞いてな)」
     エリザが一歩引き、代わってクーが話し始めた。
    「(本日の昼、先王がわたくしたちハンニバル・シモン遠征隊に対し、討伐命令を下しました。ですが民意に沿わない命令であったため、国王軍全軍が不服従。反旗を翻し、先王を討伐いたしました)」
     既にこの事実は知れ渡っているらしく、これについては、民衆の反応は無かった。
     しかし次のことが伝えられた途端、ざわざわと騒ぐ声が、あちこちから響いてくる。
    「(そのため、新たな指導者を選出する必要が生じました。これについてわたくしたちは、帝国外洋調査隊隊長、イサコ・トロコフ尉官を推挙いたします。
     現在、情況は差し迫っております。早ければ今晩、ないし明日には、帝国軍がわたくしたち遠征隊に向けて兵を差し向けるとの情報を得ており、まずは可及的速やかに、その対策を定めねばなりません。それ故の独断です)」
     続いて、騒然とする民衆を制するように、エリザが発言する。
    「(びっくりするんは分かるけども、もうちょい聞いてな。
     戦い自体はアタシらが引き受けるつもりやさかい、安心してな。何ちゅうても、アタシらが原因やからね。みんなにそんな迷惑かけられへんもん。せやからアタシら遠征隊を一旦、船から街の方に移らせてほしいんよ。準備やら何やらせなアカンからな。
     誓って言うけども、街には被害を出させへん。アタシらに任せてもらう限りは)」
     エリザの言葉を、ハンは懐疑的に聞いていた。
    (『任せてもらう限りは』? 色々解釈できるが……、恐らく『任せる』の範囲がとてつもなく広いんだろう。さっきクーに言わせた『トロコフ尉官を指導者にする』も、その『任せる』の範囲だろうな。任命権も含めて。
     だが、それでいいのか、街の皆は? トロコフ尉官は確かにこの街の人間ではあるが、既に今現在、俺たちの側と言える立場にある。彼に指導者を任せるとなれば、それは実質、俺たちの支配下に置かれることと同義だ。
     分からないわけじゃない、……よな?)
     考えている間に、エリザがあれこれと言葉を重ね、民衆を説得していた。
     いや、それは相手の同意を得る「説得」と言うよりも、むしろ相手を心の底から惹き込む「洗脳」に近いものだった。
    「(……ちゅうワケで、アタシらに任せてほしいねん。みんな、ええかな?)」
     そして魅了されきったらしく――民衆は素直に従った。

     民衆の同意を得た上で、遠征隊は街中へと本拠を移した。
    「色々と言いたいことがありますが情況が差し迫っている現時点では言い切れないので大変心苦しいですが一旦保留とします」
    「さよか」
     あからさまに不満げな様子のハンに構う様子も無く、エリザはいつも通り、ひょうひょうとした態度でいる。
    「ともかく交渉事やら政治やらの領分はアタシやクーちゃんが頑張ったし、ココからは軍事の領分、つまりアンタが頑張る番や。
     準備は進んどるんか?」
    「ええ、その点は抜かり無く。
     王国軍と協調し、街の周辺に斥候を配置させて、状況を探らせています。戦闘態勢に入った際には、王国軍にはそのまま後方に待機してもらい、街の守りに徹してもらおうと考えています。
     武器や戦術等に関しては、やはり我々の方が優れているようですが、残念ながら王国軍全体に行き渡らせるには数も時間もありません。出撃は我々のみにすべきでしょう。
     俺個人の意見としては、あくまで専守防衛、こちらからの攻撃は行わず、相手の攻撃を防ぐことのみに努めたいと考えていますが、恐らくそれは難しいでしょう」
    「同感である」
     ハンの意見に、イサコがうなずいて返す。
    「帝国軍もそこまであなた方を侮ってはいないだろう。斥候によって兵力は割り出されているだろうし、相応の数を用意するはず。となれば、守りだけでは押し切られるだろう」
    「ああ。ある程度はこちらからも打って出る必要がある。遠征隊の中から戦闘に長けた人材を集め、迎撃部隊を組織しよう。
     ここまでで何か意見はありますか、エリザさん?」
     そう言ってにらみつけてくるハンに、エリザは肩をすくめて返した。
    「その作戦、50点やね」
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