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    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第4部

    琥珀暁・衝北伝 7

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    神様たちの話、第168話。
    北の大陸での初陣。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    7.
     寒々しい気候のためか、この北の地ではなかなか、空に晴れ間が見えない。この晩もどんよりと曇っており、月明かりが差す気配も、全く無い。
     そんな中、テプロイモア郊外に構えられた帝国軍の野営は、ひっそりと静まり返っていた。灯りは暖を取るための焚き火くらいであり、その番以外の者は完全に寝入っているのが、遠くで見ているハンたちにも、明らかに察せられた。
    「やはり夜明けを待って出撃するつもりらしい。
     俺たちをおびき寄せるために油断を装って、……とも考えていたが、それも無さそうだ。何かしら待ち構えてるなら、もっと緊張感があってもいいはずだが、……見ろよシェロ。焚き火番、居眠りしてる」
     街道沿いの森に潜み、単眼鏡で偵察していたハンたちは、その緊張の欠片も無い布陣に呆れていた。
    「気ぃ抜きすぎっスね。こないだエリザ先生にやられたクセして、何も反省してないんでしょうね」
    「だろうな。……何と言うかあいつら、俺たちが思っていた以上に油断しすぎてるな。
     恐らく『この世界に自分たちより強いものなど無い』と、頭から信じ切ってるんだろう。だから斥候も敵・味方双方、真正面から堂々とうろついて見付かるし、こんな杜撰極まりない布陣を敷いて呑気してるんだろう。
     反面、俺たちの――陛下自らが御出陣していらした時からの――戦いは、相手があまりにも強いバケモノばかりだった。油断なんてできるはずもない。綿密な計画と周到な準備無しの軍事行動なんて、有り得ないことだった。そうしなきゃ、確実に死ぬんだからな。
     その考え方、体制は、現役の俺たちにもしっかり引き継がれてる――敵一体の強さが俺たちの平均より上なのは確かだが、戦術・戦略に関しては、俺たちがはるかに練度を高めていると考えていいだろう」
     と、「魔術頭巾」をかぶっていたビートが、ハンに耳打ちする。
    「他の隊から連絡がありました。予定の位置に付いたそうです」
    「了解した。では、作戦開始だ」
     ハンの号令が伝えられ、間も無く森の中から魔術による火や土の槍が、敵陣に向かって飛んで行った。

     第一波が全弾命中してすぐ、敵陣からわめき声が響いてくる。
     だが間髪入れず第二波、第三波がねじ込まれ、敵陣はこの時点で原型を留めないほどに破壊された。
    「俺たちも行くぞ!」
     ハンが立ち上がり、先陣を切る。
     部下たちも追従し、20人の突撃部隊が、右往左往している敵たちに向かって行った。
    「(てっ、敵襲、敵襲~!)」
    「(武器は、武器はどこだ!?)」
    「(どこから攻撃されてる!?)」
     迫る内にハンは、敵が完全に混乱し、ほとんど棒立ちに近い状態にあることに気付き、号令をかける。
    「全速前進! このまま敵陣の真ん中を突っ切れ!」
    「了解!」
     そのまま敵陣に到着し、全員が言われた通りに、反対側にまで進攻する。
    「(ひ、ひいっ……!)」
    「(待て待て待て待て、まだ、準備……)」
    「(武器、武器どこ~……!?)」
     敵陣は完全に瓦解し、兵士たちがばらばらと逃げ始める。それを見て、ハンは追い打ちをかけさせた。
    「大声で威嚇(いかく)してやれ!」
    「うおおおおおッ!」
    「らあああああッ!」
     20人が鬨(とき)の声を挙げ、敵の背を追い回す。
    「深追いはするな! 追い払うだけでいい!」
     そうして5分もしない内に、敵は全員、その場から逃げ去った。
     それを確認し、ハンが締める。
    「作戦終了! 俺たちの勝ちだッ!」
     その言葉に、全員が歓声を上げた。



    「帝国軍が海の向こうからやって来た遠征隊に手も足も出せずに敗走した」と言う、北の民にとってあまりにも衝撃的なこの報せは――エリザがそれとなく人を使い、喧伝したこともあり――すぐに沿岸部全域に広まった。、

     エリザの予想通り、緒戦は「ゼロの世界」の完全勝利で幕を閉じた。

    琥珀暁・衝北伝 終
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