「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第4部
琥珀暁・改国伝 5
神様たちの話、第173話。
あふれる「お気持ち」。
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5.
街で贈り物を受け取ったものの、ハンが「皆に内緒で私物化するわけには行かない」と主張したため、二人は王宮に戻った。
「どーするんです?」
「とりあえず倉庫だな」
「りょうかーい」
と、倉庫の入口で、二人はエリザに出くわす。
「あら、おかえり」
「ただいま戻りました」
ハンが敬礼したところで、エリザはマリアが芋を抱えているのに気付く。
「どないしたん? お芋さん、仰山抱えて」
「街の人からいただいたんですー」
「あら、アンタらもかいな」
そう返したエリザに、ハンは意外そうな顔を見せる。
「と言うことは、エリザさんも?」
「せやねん。何や、お魚さんやらカボチャさんやら、仰山な」
「自分でこっそり食べようとはしなかったんですね」
「いやいや、アタシ一人で食える量とちゃうねんよ。マリアちゃんやあらへんのやし」
「んもお、エリザさんまでそーゆーこと言うー」
むくれるマリアに、エリザはけらけらと笑って返す。
「アハハ……、ほんでな、とりあえず倉庫入れとこか思てな。ソレに、勝手にアタシがガメたら、ハンくん怒るやんか」
「ええ、全く以てその通りです」
「せやからこうしてな、後でみんなで食べれるよーに置いとこか思たんよ」
「なるほど」
うなずきつつ、ハンは倉庫の中をのぞく。
「……ふむ」
倉庫の中には、エリザがもらってきた食糧が4、5袋も積まれていた。
「これだけの量を、今日一日で?」
「昨日もやね」
「それでもかなり多いですね」
「みんなの『お気持ち』の現れやね」
「……どうしましょうか」
エリザも倉庫の中をのぞき、こう提案した。
「いっぺん、お祭りみたいなんしたらどないや?」
「お祭り?」
「防衛戦からこっち、公布するばっかりで、他には『国事行為』っちゅうか、ソレらしいコト何もしてへんやん? ええ機会やないの」
「なるほど。確かにこのまま倉庫に収めておくのも、誰かが独り占めするようなことも、できませんからね。皆に還元する形であれば、俺も納得できます」
「ほなすぐ準備しよか」
「え?」
ぎょっとするハンに、エリザが袋を指差して続ける。
「日持ちせえへんのんもあるからな。早いうちにさばかへんと、なんぼ寒いトコやっちゅうても腐らしてまうし」
「なるほど、言われてみれば。……エリザさん」
ハンは軽くエリザをにらみつつ、トゲのある口調で尋ねる。
「まさかもう既に告知しただとか、そう言うことは無いでしょうね?」
「せーへんて。毎度毎度アンタ怒らせてもしゃーないやん。そもそも今考えついたコトやし」
「それは大変助かりますね。……ん?」
と――先程のハンたちと同じように――遠征隊の兵士たちが何人か、袋を持って近付いて来る。
「失礼します、隊長」
「その袋は何だ?」
尋ねたハンに、兵士たちは異口同音に答える。
「街の方から、『贈り物』だと」
ハンとエリザは顔を見合わせ、耳打ちし合った。
「この調子やと、お祭り、3日はでけるんとちゃうか?」
「それはやりすぎでしょう。……市民のご厚意を考えれば心苦しいですが、何かしら制限を設けないといけませんね」
翌日、遠征隊は街の広場に会場を作り、街の皆に料理を振る舞っていた。
「どんどん食べて下さーい」
「全部無料ですよー」
元々の、エリザやハンを始めとする遠征隊の人気に加え、異国の料理が食べられると言うこともあってか、山ほどあった食糧も、夕方には半分以下に減っていた。
「一気に無くなりましたね」
空になった袋を折りたたむハンに、エリザは別の袋を広げつつ応じる。
「ソレはええねんけどなー」
「と言うと?」
「お祭り言うても今んトコ、ご飯もん出しとるだけやん? 何や、見世物でも欲しいなー思てな」
「と言っても、芸のできるような人間は隊にいませんし」
「アタシが魔術でチョイチョイしたろかなぁ」
「昔見せてもらった、蝶や花を空中に描くあれですか? 確かに素晴らしいですが、それ一つでは場が持たないでしょう」
「せやねんなぁ。うーん……」
と、二人であれこれと話していたところに、慌てた様子の遠征隊と王国兵数名が現れた。
「隊長! ここでしたか」
「どうした?」
「(大変、)……コホン、大変です! ノルド王国から国王陛下と家臣、そしてその従者らが、こちらを訪ねてきております!」
「ノルド……王国?」
状況が分からず、ハンもエリザも、揃ってけげんな表情を浮かべた。
琥珀暁・改国伝 終
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街で贈り物を受け取ったものの、ハンが「皆に内緒で私物化するわけには行かない」と主張したため、二人は王宮に戻った。
「どーするんです?」
「とりあえず倉庫だな」
「りょうかーい」
と、倉庫の入口で、二人はエリザに出くわす。
「あら、おかえり」
「ただいま戻りました」
ハンが敬礼したところで、エリザはマリアが芋を抱えているのに気付く。
「どないしたん? お芋さん、仰山抱えて」
「街の人からいただいたんですー」
「あら、アンタらもかいな」
そう返したエリザに、ハンは意外そうな顔を見せる。
「と言うことは、エリザさんも?」
「せやねん。何や、お魚さんやらカボチャさんやら、仰山な」
「自分でこっそり食べようとはしなかったんですね」
「いやいや、アタシ一人で食える量とちゃうねんよ。マリアちゃんやあらへんのやし」
「んもお、エリザさんまでそーゆーこと言うー」
むくれるマリアに、エリザはけらけらと笑って返す。
「アハハ……、ほんでな、とりあえず倉庫入れとこか思てな。ソレに、勝手にアタシがガメたら、ハンくん怒るやんか」
「ええ、全く以てその通りです」
「せやからこうしてな、後でみんなで食べれるよーに置いとこか思たんよ」
「なるほど」
うなずきつつ、ハンは倉庫の中をのぞく。
「……ふむ」
倉庫の中には、エリザがもらってきた食糧が4、5袋も積まれていた。
「これだけの量を、今日一日で?」
「昨日もやね」
「それでもかなり多いですね」
「みんなの『お気持ち』の現れやね」
「……どうしましょうか」
エリザも倉庫の中をのぞき、こう提案した。
「いっぺん、お祭りみたいなんしたらどないや?」
「お祭り?」
「防衛戦からこっち、公布するばっかりで、他には『国事行為』っちゅうか、ソレらしいコト何もしてへんやん? ええ機会やないの」
「なるほど。確かにこのまま倉庫に収めておくのも、誰かが独り占めするようなことも、できませんからね。皆に還元する形であれば、俺も納得できます」
「ほなすぐ準備しよか」
「え?」
ぎょっとするハンに、エリザが袋を指差して続ける。
「日持ちせえへんのんもあるからな。早いうちにさばかへんと、なんぼ寒いトコやっちゅうても腐らしてまうし」
「なるほど、言われてみれば。……エリザさん」
ハンは軽くエリザをにらみつつ、トゲのある口調で尋ねる。
「まさかもう既に告知しただとか、そう言うことは無いでしょうね?」
「せーへんて。毎度毎度アンタ怒らせてもしゃーないやん。そもそも今考えついたコトやし」
「それは大変助かりますね。……ん?」
と――先程のハンたちと同じように――遠征隊の兵士たちが何人か、袋を持って近付いて来る。
「失礼します、隊長」
「その袋は何だ?」
尋ねたハンに、兵士たちは異口同音に答える。
「街の方から、『贈り物』だと」
ハンとエリザは顔を見合わせ、耳打ちし合った。
「この調子やと、お祭り、3日はでけるんとちゃうか?」
「それはやりすぎでしょう。……市民のご厚意を考えれば心苦しいですが、何かしら制限を設けないといけませんね」
翌日、遠征隊は街の広場に会場を作り、街の皆に料理を振る舞っていた。
「どんどん食べて下さーい」
「全部無料ですよー」
元々の、エリザやハンを始めとする遠征隊の人気に加え、異国の料理が食べられると言うこともあってか、山ほどあった食糧も、夕方には半分以下に減っていた。
「一気に無くなりましたね」
空になった袋を折りたたむハンに、エリザは別の袋を広げつつ応じる。
「ソレはええねんけどなー」
「と言うと?」
「お祭り言うても今んトコ、ご飯もん出しとるだけやん? 何や、見世物でも欲しいなー思てな」
「と言っても、芸のできるような人間は隊にいませんし」
「アタシが魔術でチョイチョイしたろかなぁ」
「昔見せてもらった、蝶や花を空中に描くあれですか? 確かに素晴らしいですが、それ一つでは場が持たないでしょう」
「せやねんなぁ。うーん……」
と、二人であれこれと話していたところに、慌てた様子の遠征隊と王国兵数名が現れた。
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「どうした?」
「(大変、)……コホン、大変です! ノルド王国から国王陛下と家臣、そしてその従者らが、こちらを訪ねてきております!」
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