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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第4部

    琥珀暁・歓虎伝 2

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    神様たちの話、第175話。
    催し物。

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    2.
     塩焼きを皿に置き、ノルド王は声を潜めて話し始めた。
    「(先王が国民および兵士らから背かれて処刑され、異国の者より新たな王が立てられたと伺っておったが、こうして祭りを催し、民が楽しんでいるところから察するに、混乱や反発と言ったようなことは無いようであるな。うむ、平和であれば何より。
     ああ、そうそう。実を申せば、我々の方にも帝国より討伐命令が下ってはおるのだが、その帝国直属軍が貴君らによって蹴散らされたこともあってな。正直、真正面から乗り込んで勝てるような相手ではなかろうと話し合っておったのだ。
     それ故、何かしらの機会あれば貴君らと一度、平和的に話ができればと思っておったのだ。……決して食物が目当てでは無いぞ)」
    「(ええ、承知しとります)」
    「(それでだな、先程も申したが、帝国より討伐命令が下っており、本来であれば貴君らとは敵対せねばならん状況にある。だがわし個人としても、家臣団の総意にしても、無闇やたらに戦うことは本意では無い。貴君らと戦えば、相当の痛手を負うことは確実であろう。それでは兵士らに死んで来いと命ずるのと同義だ)」
    「(では、帝国ではなく我々の側に付く、と?)」
     そう尋ねたハンに、ノルド王は辺りをうかがいつつ、小さくうなずいた。
    「(現時点ではまだ、公然と申せぬことではあるが、その意はある。帝国に与して、ただでさえ少ない禄を搾り取られる日々を送るより、貴君らと手を取り、こうして食い物にありつける方が、どこをどう考えても得であろう?)」
    「(アハハ……、そらそうですな)」
     エリザも辺りを見回し、自分たちに注目する者がいないことを確認した上で、話に応じる。
    「(家臣団の方にもまだ内緒です?)」
    「(うむ。親帝国派の者も若干名おるからな。うかつなことを申せば、帝国に告げ口でもされかねん)」
    「(ほな、ソコら辺から説得してかなあきませんな。
     ま、ともかく今日のところは、そう言うキナ臭い話は抜きにして、気楽に楽しんでって下さい。催しもんはありませんが、ご飯だけならいくらでもありますし)」
    「(ふむ……? 祭りと言うのに催事が無くては、興も何もあったものではあるまい)」
     一転、ノルド王は不満そうな顔になる。
    「(では、……そうだな、演武などはどうだ?)」
    「(演武っちゅうと?)」
     尋ねたエリザに、ノルド王は得意満面と言いたげの笑みを返してくる。
    「(貴君らの中から一番の腕利きを出し、わしの擁する一番の将と腕くらべをするのだ。
     いや、何も殺し合いをさせよと言うのではない。弓のうまさであるとか、棒の打ち合いであるとか、そう言う競い方だ)」
    「(なるほど)」
     すかさず、ハンが手を挙げた。
    「(卒爾ながら、私が隊の中で一番と自負しております。私が相手を務めさせていただきます)」
     と、これを横で聞いていたエリザが止めようとする。
    「アンタ、いきなり何言い出すねんな? 隊長が出てどないすんねん。そう言うのんは部下にやらせな」
    「親父がこう言ってました。『どんなに安全と思っても一割は警戒しとけ』と。
     確かにノルド王に敵意らしいものが無いことは感じていますが、我々が見抜けないほど高度な演技かも知れません。油断したまま一番強い人間を出したところで隙を突かれ、その人間が殺される可能性もあります。そうなれば我々にとって相当の被害ですし、何より敵を懐に招き入れてむざむざと被害を被るなど、我々全員にとって屈辱でしょう。隊全体の士気が著しく落ちることは明白です。
     それを防ぐ一番の手段は、俺が出ることです。異議がありますか?」
    「……まあ、うん、確かにそやけどな」
     結局、エリザの制止も聞かず、ハンが演武に立つこととなった。

     弓を背負って現れたハンの前に、同様の出で立ちの虎獣人が対峙する。
    「(名乗っておこう。我が名はエリコ・ミェーチ。ノルド家臣団の百人将の一人である)」
     応じて、ハンも名乗りを上げる。
    「(自己紹介、痛み入る。俺の名前はハンニバル・シモン。シモン遠征隊隊長、階級は尉官だ)」
    「(若く見えるな。歳はいくつだ?)」
    「(21だ)」
    「(なんだ、若造ではないか。吾輩に勝てる気でいるのか?)」
    「(俺は口より腕に自信がある。言葉で言うより、結果で示すよ)」
    「(抜かしよる)」
     一通り応酬したところで、周囲に集まっていた街の者たち、王国兵、そして遠征隊の皆が騒ぎ始める。
    「(どっちが勝つと思う?)」
    「(そりゃミェーチ将軍だろ。こっちでも有名な武人だし)」
    「(でもこないだの戦い、隊長さんが先陣切って帝国を蹴散らしたって話だし、意外と隊長さんが勝つんじゃない?)」
    「(まあ、どっちにしても……)」
    「(楽しくなってきたねー)」
     周囲から期待の目で見つめられ、ハンは内心、居心地の悪さを覚える。
    (エリザさんにああは言ったものの、……マリアでも出せば良かったかな)
     が、正面に立つミェーチ将軍を見据えると、その気持ち悪さもどこかへ飛んで行ってしまう。
    (ま、やるって言ったしな。やるっきゃないか)
     と、いつの間にか司会役になっていたエリザが、魔術を使って広場中に声を響かせる。
    《(ほな、ミェーチ将軍対シモン隊長の三番勝負、いよいよ開始です!)》
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