「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第4部
琥珀暁・歓虎伝 3
神様たちの話、第176話。
第一種目;弓射ち。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
《(まずは第一種目!)》
エリザが左手を挙げると共に、魔術による花火が空中へぱっと散り、2つの的が照らされる。
《(お二人が背負っとる弓、コレは城の武器庫ん中でも一番デカい、弦のめっちゃきっつーい剛弓! 並の人間では引こうにも引けず、素手で引こうものなら手の平にブチブチっと食い込み、指が血まみれになってしまうほどの代物です! コレを使い、両者には的当てをしてもらいます! 100歩離れたトコから10本射って何本当たるか!
さあ、まず第一矢、ミェーチ将軍から!)》
「(うむ)」
ミェーチ将軍が弓を構え、ハンに向かってニヤッと笑う。
(やはり俺を狙って? ……いや、違うな)
その笑みからは自信が満ち満ちており、ハンを見下している気配が伝わる。
(『お前にこの弓が引けるものか』、って感じの笑い方だな。やれやれ)
そうこうしている間に、ミェーチ将軍は的へ向き直り、両腕の筋肉をぼこぼこと盛り上がらせながら、弓を引く。
「(そりゃッ!)」
がんっ、と音を立て、弓から矢が放たれる。
一瞬の間を置いて、今度は的からばしっと音が響いた。
「(うむっ)」
若干外に流れたものの、見事に的を射抜き、ミェーチ将軍は拳を振り上げる。
《(まずは1点先取! さあ、今度はシモン隊長です!)》
エリザに促され、今度はハンが弓を手に取る。
「(さあて、若いの。引いて見せよ!)」
ミェーチ将軍が声をかけてくるが、ハンは無言のまま、弓を構える。
「(ほれ、どうした? 早く引け!)」
(……うるさいおっさんだな。どこぞの狼漁師かよ)
ハンは一言も発さぬまま、剛弓をぐい、と引く。その物静かな、しかし堂々たる姿勢を見て、観客から声が漏れる。
「(おぉ~……)」
「(事も無げって感じに、すっと引いた)」
「(将軍に比べたら、やっぱ隊長さんってオトナ感あるぅ)」
ひそひそとした声ながらも、どうやらミェーチ将軍の虎耳には伝わったらしい。
「(ぐ……ぬ)」
顔を真っ赤にして黙り込むミェーチ将軍を尻目に、ハンは矢を射る。
射手の性格を反映したかのように、弓はたん、と静かに鳴り、的からも、わずかに返ってくる程度の音しか聞こえてこなかった。
しかし――。
《(シモン隊長も1点獲得! いやいや、コレはド真ん中、3点です!)》
エリザの宣言に、観客たちは、今度は大きくどよめいた。
「(うわっ、隊長さんすごい)」
「(かっけー……)」
「(ってか、将軍いきなり2点差?)」
これもしっかり耳に入ったらしく、ミェーチ将軍の額にぴき、と青筋が走った。
「(うぬぬぬ……! ま、慢心するでないぞ、若造! 2点程度、すぐ取り返してくれるわ!)」
顔を真っ赤にしたまま、ミェーチ将軍は第二矢を放つ。
ところが――よほど興奮したのか、それとも少なからず狼狽していたのか――矢は的を反れ、後ろの壁に突き刺さった。
「(うがっ!?)」
ミェーチ将軍が自分の手と的、そしてハンの顔をくるくると見比べている間に、ハンも第二矢を放ち、そしてこれも、きっちりと命中させた。
結果――ミェーチ将軍の11点に対し、ハンは24点と大差を付け、勝利を収めた。
緒戦を獲り、ハンは観戦していたクーから称賛されていた。
「あなた、やっぱり敏腕ですのね。弓もお得意だなんて」
「一通り、武器は使えるように訓練されたからな。魔術だけはいまいちだが」
「あら、そうですの? でも魔術頭巾を使われていたと記憶しておりますけれど」
「攻撃魔術は全然ダメだった。火も点けられん。治療術とかもからきしだ。どうにか通信術と防御術くらいは、最低限度の奴くらいは使えるようにはなったが、学校の教官からは『親御さんから資質をもらえなかったのか』ってバカにされたよ」
「まあ」
一方のノルド陣営では、ミェーチ将軍がノルド王に叱咤されていた。
「(一体どうしたのだ、エリコ。普段のお主であれば、もっと達者であろう)」
「(面目ございません、殿。頭に血が上ってしまった故)」
「(終わったことは仕方あるまい。次の試合は落とすでないぞ)」
「(委細承知)」
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第一種目;弓射ち。
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《(まずは第一種目!)》
エリザが左手を挙げると共に、魔術による花火が空中へぱっと散り、2つの的が照らされる。
《(お二人が背負っとる弓、コレは城の武器庫ん中でも一番デカい、弦のめっちゃきっつーい剛弓! 並の人間では引こうにも引けず、素手で引こうものなら手の平にブチブチっと食い込み、指が血まみれになってしまうほどの代物です! コレを使い、両者には的当てをしてもらいます! 100歩離れたトコから10本射って何本当たるか!
さあ、まず第一矢、ミェーチ将軍から!)》
「(うむ)」
ミェーチ将軍が弓を構え、ハンに向かってニヤッと笑う。
(やはり俺を狙って? ……いや、違うな)
その笑みからは自信が満ち満ちており、ハンを見下している気配が伝わる。
(『お前にこの弓が引けるものか』、って感じの笑い方だな。やれやれ)
そうこうしている間に、ミェーチ将軍は的へ向き直り、両腕の筋肉をぼこぼこと盛り上がらせながら、弓を引く。
「(そりゃッ!)」
がんっ、と音を立て、弓から矢が放たれる。
一瞬の間を置いて、今度は的からばしっと音が響いた。
「(うむっ)」
若干外に流れたものの、見事に的を射抜き、ミェーチ将軍は拳を振り上げる。
《(まずは1点先取! さあ、今度はシモン隊長です!)》
エリザに促され、今度はハンが弓を手に取る。
「(さあて、若いの。引いて見せよ!)」
ミェーチ将軍が声をかけてくるが、ハンは無言のまま、弓を構える。
「(ほれ、どうした? 早く引け!)」
(……うるさいおっさんだな。どこぞの狼漁師かよ)
ハンは一言も発さぬまま、剛弓をぐい、と引く。その物静かな、しかし堂々たる姿勢を見て、観客から声が漏れる。
「(おぉ~……)」
「(事も無げって感じに、すっと引いた)」
「(将軍に比べたら、やっぱ隊長さんってオトナ感あるぅ)」
ひそひそとした声ながらも、どうやらミェーチ将軍の虎耳には伝わったらしい。
「(ぐ……ぬ)」
顔を真っ赤にして黙り込むミェーチ将軍を尻目に、ハンは矢を射る。
射手の性格を反映したかのように、弓はたん、と静かに鳴り、的からも、わずかに返ってくる程度の音しか聞こえてこなかった。
しかし――。
《(シモン隊長も1点獲得! いやいや、コレはド真ん中、3点です!)》
エリザの宣言に、観客たちは、今度は大きくどよめいた。
「(うわっ、隊長さんすごい)」
「(かっけー……)」
「(ってか、将軍いきなり2点差?)」
これもしっかり耳に入ったらしく、ミェーチ将軍の額にぴき、と青筋が走った。
「(うぬぬぬ……! ま、慢心するでないぞ、若造! 2点程度、すぐ取り返してくれるわ!)」
顔を真っ赤にしたまま、ミェーチ将軍は第二矢を放つ。
ところが――よほど興奮したのか、それとも少なからず狼狽していたのか――矢は的を反れ、後ろの壁に突き刺さった。
「(うがっ!?)」
ミェーチ将軍が自分の手と的、そしてハンの顔をくるくると見比べている間に、ハンも第二矢を放ち、そしてこれも、きっちりと命中させた。
結果――ミェーチ将軍の11点に対し、ハンは24点と大差を付け、勝利を収めた。
緒戦を獲り、ハンは観戦していたクーから称賛されていた。
「あなた、やっぱり敏腕ですのね。弓もお得意だなんて」
「一通り、武器は使えるように訓練されたからな。魔術だけはいまいちだが」
「あら、そうですの? でも魔術頭巾を使われていたと記憶しておりますけれど」
「攻撃魔術は全然ダメだった。火も点けられん。治療術とかもからきしだ。どうにか通信術と防御術くらいは、最低限度の奴くらいは使えるようにはなったが、学校の教官からは『親御さんから資質をもらえなかったのか』ってバカにされたよ」
「まあ」
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「(一体どうしたのだ、エリコ。普段のお主であれば、もっと達者であろう)」
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