「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第4部
琥珀暁・交誼伝 1
神様たちの話、第180話。
本音と建前、真意と誠意。
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1.
ノルド王国との友好関係を結ぶことに成功し、ハンとエリザは、ゼロに「魔術頭巾」で報告を行っていた。
《じゃあ、その後は順調に進んでいる、と考えていいのかな》
ゼロからの問いに、ハンは自信に満ちた声で答える。
「はい。現状、エリザさんの方から、商取引を軸としていくつか話し合いを進めており、いずれも双方円満な形で合意に達しています」
《そう》
「今後はクラム殿下も交え、政治面での……」《あー、と》
と、ゼロがさえぎる。
《それについてしっかり聞いておきたいことがあるんだけど》
「なんでしょうか」
《クーは本気で、そっちで女王として君臨し続けるつもりなのかなって。帰って来なきゃ困るし》
「それは……」
返答に詰まり、ハンは目で、隣のエリザに助けを求める。
それを受けて、エリザが応答する。
「あー、はいはい。ちょとクーちゃんとソコら辺のお話したんですけども、『他に王となるにふさわしい方がいらっしゃれば椅子をお譲りします』っちゅうてましたから、あくまで一時的、暫定的なもんやと思いますで」
《そう。なら、いいけど》
「心配せんでも、ちゃんと一緒に帰ってきますさかい。安心しとって下さい」
《あ、う、うん。そうだね、君も、……あー、うん。うん、……そうだね、無事に帰ってきてくれ、うん。
じゃあ、まあ、今回はこの辺でおしまいかな。次はいつも通り、月初めに。それじゃまた、何かあったらすぐ報告してね》
「はーい」
「失礼します」
そこで通信が切れ、ハンとエリザの視線がまた交錯する。
「……」
「どないしたん?」
尋ねられ、ハンはどうにか取り繕おうとする。
「いえ、特には。陛下も遠い地で娘御がどんな活動をしているかご心配でしょうから、お言葉もすっきりしないと言いますか、語弊があるように感じてしまうでしょうが、お気持ちは誠実なものであると……」「あのなー、ハンくん」
エリザは微笑みながらハンの背後に回り、彼の肩に右肘を乗せつつ、もう一方の手でちょいちょいとほおを突いてきた。
「な、何です?」
「アンタも立場があるし、アタシとゼロさんが相手のコトやから、そうそう明け透けに話がでけへんやろっちゅうのんはよお分かっとる。ホンマのコト言うんは難しいやろな。
せやけども、すぐバレるようなしょうもない嘘付いてごまかすくらいやったら、はっきりホンマのコト言うてしまいや? 結果的にな、そっちの方がなんぼでもマシになるで」
「……失礼しました」
肩に肘を置かれたまま、ハンは正直に話した。
「以前に陛下と会食した際、……その、陛下はエリザさんを疎んじるような発言をなさっておられました。それもはっきり、エリザさんのことを『悪人だ』と」
「アハハ……」
ハンの肩をばしばし叩きながら、エリザはケラケラ笑う。
「ひっどいコト言いよるなぁ、あのおっさん」
「俺も正直、言い過ぎではないかと思ってはいたんですが、その時、何の弁解もできず……」
「えーよえーよ、好きに言わしとき。
アタシにとったら、悪口なんか何でもあらへん。ソレこそ子供ん時から言われ倒しとるから、今更『悪人やー』『泥棒やー』言われたところで、『せやから何やねん?』『悔しいんやろアンタ』くらいにしか思わへんわ」
「……すみません」
「えーから」
エリザはハンから離れ、彼の前でくるんと一回転した。
「悪口はなんもでけへん能無しの、最後の武器や。ソレ言い出したらもう、『わしもうお手上げですわ』っちゅう降参の証やで」
「う……」
その言葉に、ハンは苦笑いを浮かべる。
「それはそれで、結構なお言葉と思いますがね」
「非礼には非礼や。コレでおあいこにしたるわ。
せやからな、ハンくん。もう気にせんとき。アタシは平気やし、ゼロさんも元々優しい性格や、多少は自分で反省しとるはずやから」
「……はい」
エリザは最後までニコニコと、笑顔を崩すことは無かった。
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本音と建前、真意と誠意。
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ノルド王国との友好関係を結ぶことに成功し、ハンとエリザは、ゼロに「魔術頭巾」で報告を行っていた。
《じゃあ、その後は順調に進んでいる、と考えていいのかな》
ゼロからの問いに、ハンは自信に満ちた声で答える。
「はい。現状、エリザさんの方から、商取引を軸としていくつか話し合いを進めており、いずれも双方円満な形で合意に達しています」
《そう》
「今後はクラム殿下も交え、政治面での……」《あー、と》
と、ゼロがさえぎる。
《それについてしっかり聞いておきたいことがあるんだけど》
「なんでしょうか」
《クーは本気で、そっちで女王として君臨し続けるつもりなのかなって。帰って来なきゃ困るし》
「それは……」
返答に詰まり、ハンは目で、隣のエリザに助けを求める。
それを受けて、エリザが応答する。
「あー、はいはい。ちょとクーちゃんとソコら辺のお話したんですけども、『他に王となるにふさわしい方がいらっしゃれば椅子をお譲りします』っちゅうてましたから、あくまで一時的、暫定的なもんやと思いますで」
《そう。なら、いいけど》
「心配せんでも、ちゃんと一緒に帰ってきますさかい。安心しとって下さい」
《あ、う、うん。そうだね、君も、……あー、うん。うん、……そうだね、無事に帰ってきてくれ、うん。
じゃあ、まあ、今回はこの辺でおしまいかな。次はいつも通り、月初めに。それじゃまた、何かあったらすぐ報告してね》
「はーい」
「失礼します」
そこで通信が切れ、ハンとエリザの視線がまた交錯する。
「……」
「どないしたん?」
尋ねられ、ハンはどうにか取り繕おうとする。
「いえ、特には。陛下も遠い地で娘御がどんな活動をしているかご心配でしょうから、お言葉もすっきりしないと言いますか、語弊があるように感じてしまうでしょうが、お気持ちは誠実なものであると……」「あのなー、ハンくん」
エリザは微笑みながらハンの背後に回り、彼の肩に右肘を乗せつつ、もう一方の手でちょいちょいとほおを突いてきた。
「な、何です?」
「アンタも立場があるし、アタシとゼロさんが相手のコトやから、そうそう明け透けに話がでけへんやろっちゅうのんはよお分かっとる。ホンマのコト言うんは難しいやろな。
せやけども、すぐバレるようなしょうもない嘘付いてごまかすくらいやったら、はっきりホンマのコト言うてしまいや? 結果的にな、そっちの方がなんぼでもマシになるで」
「……失礼しました」
肩に肘を置かれたまま、ハンは正直に話した。
「以前に陛下と会食した際、……その、陛下はエリザさんを疎んじるような発言をなさっておられました。それもはっきり、エリザさんのことを『悪人だ』と」
「アハハ……」
ハンの肩をばしばし叩きながら、エリザはケラケラ笑う。
「ひっどいコト言いよるなぁ、あのおっさん」
「俺も正直、言い過ぎではないかと思ってはいたんですが、その時、何の弁解もできず……」
「えーよえーよ、好きに言わしとき。
アタシにとったら、悪口なんか何でもあらへん。ソレこそ子供ん時から言われ倒しとるから、今更『悪人やー』『泥棒やー』言われたところで、『せやから何やねん?』『悔しいんやろアンタ』くらいにしか思わへんわ」
「……すみません」
「えーから」
エリザはハンから離れ、彼の前でくるんと一回転した。
「悪口はなんもでけへん能無しの、最後の武器や。ソレ言い出したらもう、『わしもうお手上げですわ』っちゅう降参の証やで」
「う……」
その言葉に、ハンは苦笑いを浮かべる。
「それはそれで、結構なお言葉と思いますがね」
「非礼には非礼や。コレでおあいこにしたるわ。
せやからな、ハンくん。もう気にせんとき。アタシは平気やし、ゼロさんも元々優しい性格や、多少は自分で反省しとるはずやから」
「……はい」
エリザは最後までニコニコと、笑顔を崩すことは無かった。
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