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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第4部

    琥珀暁・虎交伝 2

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    神様たちの話、第186話。
    シェロとミェーチの邂逅。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
    「(とにかく、今日のところは帰った方がいいでしょう。このままココにいては、事情がややこしく……)」
     シェロが平静を装った声を出して、帰らせようとしたその時――。
    「(ぬ? そこにおるのは、もしやエリコではないか?)」
     二人の頭上から、声がかけられた。
    「(……! と、殿っ!?)」
     ミェーチ将軍が顔を上げ、慌てた声を漏らす。シェロも同じように上を見て、王宮の2階からシェロたちを眺めていたノルド王が、首を傾げているのを確認した。
    「(やはりエリコであったか。何故ここにおる? 病で伏せておると聞いていたが……?)」
    「(あ、あの、そのっ)」「(閣下より指導を受けておりました)」
     と、二人の会話をさえぎり、シェロが代わりに答える。
    「(先日の演舞にて閣下の腕前に感服し、その折に、指導してほしいと私の方から願い出て、こうして訓練場にて剣を交えておりました。
     ただ、本日友好条約を結んだ間柄とは言え、隣国の将軍を一兵士が勝手にこちらまでお呼びするのもはばかられるものと思い、こうして人に知られぬよう、こっそりと……)」「(ふむ、そうであったか)」
     まだ目を白黒させているミェーチ将軍を尻目に、シェロはノルド王に頼み込む。
    「(と言うわけでですね、この件はご内密に願えればと。特に隊長に知られると、後で色々と面倒なことになってしまうので)」
    「(うむ。運良く今は、あの隊長殿もエリザ女史も側におらぬ。そう言う事情であれば内緒にしておこう。大いに親交を深めるが良い。
     ではエリコ、わしはもう少々話してから帰る。お前も暗くなる前に帰途に就くが良い)」
    「(御意)」
     ノルド王が窓から顔を引っ込めたところで、ミェーチ将軍が深々と頭を下げた。
    「(すまぬ、助かった)」
    「(俺もなんだかんだと言い訳してココで修練してる身なので、陛下にバラされたくなかっただけです。感謝されるようなことはしてません)」
    「(いやいや、とんでもござらん)」
     ミェーチ将軍は再度礼を述べ、シェロの手を握った。
    「(貴君の機転、誠に感謝する。何かあれば吾輩のところに来ると良い)」
    「(はあ……?)」
    「(っと、これ以上ここにおるとまた何やら、面倒事に巻き込まれるやも知れん。早々に退散するとしよう。ときに貴君、名は何と申す?)」
    「(シェロ・ナイトマンです)」
    「(うむ、シェロ殿か。覚えておくぞ。では失敬!)」
     そう返し、ミェーチ将軍は慌ててその場を走り去ってしまった。
     シェロはその後ろ姿が見えなくなるまで眺めていたが、そこでミェーチ将軍が剣を忘れていったことに気付く。
    (おいおい、本当にバカなのか、あの『虎』? ……しょうがない、このまま置いてたら『なんだこれ?』って騒ぎになるだろうし、俺が預かっとくか)
     地面に転がった剣を取り、シェロも宿舎へと戻った。

    (って、よく考えたらコレ、どうすりゃいいんだ?
     届けに行くったって、まさか尉官に『隣国の将軍が剣落としてったから返しに行きます』なんて言えねーし、かと言って、俺が一人でこっそりノルド王国に行くのも変だし。って言うかそもそも、そう簡単に行けるトコじゃ無いしなぁ)
     と言うようなことを数日に渡って悶々と考えていたが、この問題は翌週に解決した。
    「あ」
     グリーンプールの往来を一人で巡回中、本人に出くわしたからである。
    「(おお、シェロ殿!)」
     前回とは打って変わって、平民風の格好をしたミェーチ将軍は、ほっとした顔でシェロの側に寄って来た。
    「(恥ずかしい話だが、剣をこちらに忘れてしまい、困っておったのだ。多分修練場に忘れていってしまったのだと思うが、貴君は存じておらんか?)」
    「(あ、はい。預かってます)」
    「(おお、さようであるか! いや、助かった!)」
     ミェーチ将軍はシェロの手をがっしり握り、ぶんぶんと上下に振る。
    「(いやいや、貴君には何度も助けられておるな)」
    「(気にしないで下さい。アレがあのまま置いてあったら、騒ぎになりますから。ソレじゃ一旦、取りに戻りますから……)」
     と、断りを入れかけたところで、シェロはミェーチ将軍の背後に一人、自分と同じくらいの虎獣人の女の子が立っていることに気付く。
    「(そちらは?)」
    「(うん? ああ)」
     ミェーチ将軍はその女の子の肩をポンと叩きつつ、紹介した。
    「(吾輩の娘だ。本日もこちらに向かうと伝えたら、一度行ってみたいと言われてな。こんなごつい男が一人で何度も隣国を訪ねるのも不自然かと思って、連れてきた次第だ)」
    「(あ、そうですか。……あ、と。こんにちは)」
     シェロがぺこりと頭を下げたところで、相手も会釈を返した。
    「(こんにちは。シェロさん、でしたっけ。わたし、リディア・ミェーチと言います。よろしくお願いします)」
    「(……ども)」
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