黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第4部

    琥珀暁・信揺伝 2

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    神様たちの話、第193話。
    シモン隊長の炎上。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
     強襲騒ぎから1週間後――。
    「ハンくん、ハンくん。ちょと」
     エリザが眉をひそめつつ、ハンの元を訪ねてきた。
    「なんです? また何か突飛な思い付きでも実行して、大騒ぎになったんですか?」
    「大騒ぎは大騒ぎや。でもアタシちゃうねん。アンタや」
    「俺?」
     何のことか見当も付かず、ハンは首をかしげる。
    「俺が騒ぎを起こしたって言うんですか?」
    「そうやなくて、アンタのコトで騒ぎになっとるんや。アンタ、まだシェロくんに謝ってへんかったんか?」
    「ええ、まあ。強襲騒ぎでバタバタしてましたし、以降も会えてないんです。どうやら本気で、無許可離隊したみたいですね。まったく、何を考えているんだか」
     そう返したハンに、エリザは頭を抱えてしまった。
    「なーにが『何を考えているんだか』や。ソレはこっちのセリフやで。えらいコトになっとるんが、まったく分からへんのんか?」
    「どう言うことです?」
     エリザはハンの短い耳に顔を寄せ、こしょこしょと伝える。
    「アンタがシェロくんをムチャクチャな因縁付けてどつき回したコトになってんねん。あっちこっちでアンタのコト、『いきなり人を殴る蹴るしよる悪徳隊長や』ってうわさしてはるで」
    「なっ、……お、俺が?」
     思いもよらない話に、ハンはぎくりとする。
    「言うて回っとるんは間違い無くシェロくんや。アンタとアタシとシェロくんしか知らん話やし、アタシもアンタも、アンタを悪く言う理由が無いからな。ほんで、アタシの方でも人使て探して回っとるんやけど、全然姿見せよらへんのや。
     とにかく今は、シェロくんのコトは構わへんとき。ソレよりもアンタの弁解が先や。このまんまほっといたら、アンタは極悪人扱いされるで」
    「いや、しかし、俺は……」
     反論しかけたハンをさえぎり、エリザはぴしゃりと言い付ける。
    「そんなん嫌やっちゅうんやったら今からでも人集めて、説明と謝罪し。ソレで収まるかどうかは分からんけども、やらへんよりマシや」
    「はっ、はい」

     その日の昼になってようやく、ハンはシェロとの間に諍(いさか)いがあったこととその詳細、そして自分が軽率な振る舞いをしたことを公に説明し、謝罪したが、依然として街の声に、ハンをそしり、非難する空気は消えなかった。
     そしてこの日以降、シェロはクラム王国から姿を消し――遠征隊の中に、ハンに対する不満や反発を唱える者が現れ始めた。



    「(向こうではちょっとした騒動になっておるそうだ。曰く、『海の向こうからやって来た者はやはり、まともな人間では無かった。皇帝と変わらぬ、悪の手先だ』と)」
    「(それは痛快ですね)」
     ノルド王国、ミェーチ将軍の屋敷にて、ミェーチ将軍とシェロはテーブルを囲み、食事を楽しんでいた。
    「(しかし、このまま悪評が立っていて良いのか? お主も遠征隊の人間だろう? いや既に、だったと言うべきか)」
    「(悪く言われてるのは尉官、……いや、シモンであって、俺じゃありませんから。俺はコレから、英雄になる予定ですし)」
     そう言って悪辣(あくらつ)な笑みを浮かべて見せるシェロに、ミェーチ将軍は苦笑いを浮かべる。
    「(英雄になる予定、か。しかし本当に、上手く行くのか? 吾輩には不安でならぬよ)」
    「(『1つ目』と『2つ目』があの通りでしょう? 俺の目論んだ通りに。ソレなら『3つ目』も、バッチリですよ)」
    「(であれば良いが。……いや、既に手筈は整えておることだし、今更やめにしたりはせぬがな。
     とは言え、主君を裏切ることになるのはやはり、心苦しいのだ)」
    「(お気持ちは分かります。でも閣下も言ってたじゃないスか。『このままあの王様がノルド王国に君臨しているようでは、この国も先が見える』って。
     滅ぼしたくないなら、キッチリ糺(ただ)してやりましょうよ)」
    「(……うむ)」
     ミェーチ将軍は深々とうなずき、コップに注がれた酒を一気に飲み干した。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    恐れ入ります。

    批判や意見をいただくことに関しては吝かではありませんし、真摯に受け取るように努めています。
    これまでにいただいたご意見も少なからず参考にさせていただいています。
    その点に関しては、誠にありがたく思っています。

    今回僕が何を怒っていたかと言うと、
    自説に都合の良いメアリー・スーを作り上げ、好き勝手な異説を書かれたことです。
    不躾な言い方をあえてしますが、これは模倣に勤しむことで己の創作能力を研鑽しようとする中高生が行うならともかく、
    自分の作品発表の場を構えて何年も経つ人物のすべきことでは無いと思います。
    他者の粗や至らぬ点を気にかけ、丁寧なご意見をいただけることは大変ありがたく、意見をいただく側の糧、新たな創作の材料にもなることですが、
    二次創作で、元々の世界に存在しないキャラクタを創ってまで、自説を強引に主張するような行為は、みだりにすべきものではないと思います。
    どうかご自身の世界を大事にしてあげて下さい。

    この件はこれで話を切り上げます。
    ご意見とご献作、ありがとうございました。

    NoTitle 

    hンニバル・シモン隊長の轍を踏むのもなんなので、こないだの外伝で遊んだことについては謝罪しよう、思います。

    本筋に影響があったらまずい、と思ったので、「双月世界の歴史の中でさえも「史実をもとに後世に創作された、架空の人物の架空のエピソード」を紹介する」、という形にしたのですが、それでもまずかったようで……。

    誓っていいますがわたしには悪気はまったくなかったですし、ギスギスした状態でいるのも本意ではないので、ここで謝罪しておきます。

    失礼致しました。
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