「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第4部
琥珀暁・信揺伝 6
神様たちの話、第197話。
シェロの陰謀。
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6.
「帝国との関係を解消したはずのノルド王が密かに彼らと結託している」と言う、シェロが撒いたこの嘘は、瞬く間に「本当らしいうわさ」として、沿岸部全域に広まった。
そして「どっち付かずの態度を取る恥知らずの王に反逆した」ミェーチ将軍のうわさも同じくらいの速度で伝播し、彼の元には大勢の者が集まってきていた。
「(兵士だけでも、優に200名は集まった。と言っても、半分が元々吾輩の率いていた部下であるが)」
「(では残り半分は、純粋に閣下を慕って集まった者と言うワケですね)」
シェロはニヤッと笑い、ミェーチ将軍をおだてる。
「(流石は閣下。もし俺の工作が無かったとしても、この結果から考えれば、単に挙兵したとしても、十分な人数が集まっていたコトでしょう)」
「(う、うむ。そうであるか)」
まんざらでも無さそうな表情を浮かべたミェーチ将軍にニコニコと笑顔を浮かべて見せつつ、シェロはこう続けた。
「(では閣下、計画を次に進めましょう)」
「(うむ。次は、……えーと)」
「(クラム王国へ赴き、今度はシモンを非難して兵を集めるんです)」
「(おう、そうであったな)」
「(友好条約を結んだ王の『不実』が明らかになったコトで、シモンもさらに評判を落としているはずです。ソコへ『英雄』である閣下が現れ、『腐敗した現状を糺すべく人民を集める』とでも吹聴すれば、多くの者がやって来るでしょう。コレは俺の予想ですが、恐らく兵士100人、いや、200人は堅いでしょう。
400人も集まれば、ノルド王国の軍勢400名と同等、……いや、今回の件で抜けた人数を引いて300名ですから、こちらが優勢になります。後は王宮を攻め、王を討つばかりです。
そしてノルド王国を落とし次第、今度はクラム王国を……)」
そこまで語ったところで、ミェーチ将軍が浮かない顔になる。
「(本当に良いのか? お主の本隊であろう)」
「(構いやしませんよ)」
にべもなくそう返し、シェロは悪辣に笑う。
「(隊のヤツらだって、いずれ俺に感謝するでしょう)」
「(どう言う意味だ?)」
「(クラム王国を陥落させれば、シモンは間違い無く更迭されます。本国へ強制送還されるのは確実でしょう。クラム殿下だって、陥落した国に残されるなんてコトは有り得ません。彼女のお父上から呼び戻されるコトは、想像に難くありません。
となると、彼らを本国まで護送する人間が必要でしょう? もう半年近く故郷を離れて仕事してるヤツらにとったら、帰郷する絶好のチャンスってワケです。ソコら辺も織り交ぜて説得したら、みんなコロっと乗っかってきますよ)」
「(うーむ……。何とも悪知恵の働く奴め)」
「(おほめに預かり、光栄です)」
こうしてミェーチ将軍とシェロは意気揚々とクラム王国を訪れ、ノルド王国で仕掛けたように、グリーンプールで喧伝を行った。
「(……であるように、正義を思う心に邦の違いは無いはずである! 憂える者よ、吾輩の元に集え!)」
ミェーチ将軍はノルド王国でやったのと同じようにとうとうと語り、民衆を煽(あお)る。さらにはシェロも、ハンを悪し様に罵りつつ、自分たちに協力すれば帰郷の機会がある可能性も提示し、しきりに勧誘する。
ところが――ノルド王国の時とは打って変わって、どう言うわけか皆、二人を冷ややかな目で眺めている。いや、正確にはシェロ一人に、その視線が向けられていた。
「……え?」
その視線に気付き、シェロはたじろぐ。
「ナイトマン。何でお前がここにいるんだ?」
と、遠征隊の一人が声を掛けられ、シェロは薄ら笑いを浮かべつつ、ぺらぺらと話し始めた。
「ソレはほら、ミェーチ将軍の男気に感動してって言うかさ。いやさ、前のアレあっただろ? 隊長が俺をボコボコにした件。あんなひどいコト許しておけるかって相談に乗ってもらってたらさ、将軍から『一緒に戦わないか』って誘われたんだよ。お前らもさ、いつまでもあんなクズのトコにいないで……」「クズはてめーのことだろうが」「……えっ?」
元同僚から冷淡に罵られ、シェロは絶句した。
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シェロの陰謀。
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「帝国との関係を解消したはずのノルド王が密かに彼らと結託している」と言う、シェロが撒いたこの嘘は、瞬く間に「本当らしいうわさ」として、沿岸部全域に広まった。
そして「どっち付かずの態度を取る恥知らずの王に反逆した」ミェーチ将軍のうわさも同じくらいの速度で伝播し、彼の元には大勢の者が集まってきていた。
「(兵士だけでも、優に200名は集まった。と言っても、半分が元々吾輩の率いていた部下であるが)」
「(では残り半分は、純粋に閣下を慕って集まった者と言うワケですね)」
シェロはニヤッと笑い、ミェーチ将軍をおだてる。
「(流石は閣下。もし俺の工作が無かったとしても、この結果から考えれば、単に挙兵したとしても、十分な人数が集まっていたコトでしょう)」
「(う、うむ。そうであるか)」
まんざらでも無さそうな表情を浮かべたミェーチ将軍にニコニコと笑顔を浮かべて見せつつ、シェロはこう続けた。
「(では閣下、計画を次に進めましょう)」
「(うむ。次は、……えーと)」
「(クラム王国へ赴き、今度はシモンを非難して兵を集めるんです)」
「(おう、そうであったな)」
「(友好条約を結んだ王の『不実』が明らかになったコトで、シモンもさらに評判を落としているはずです。ソコへ『英雄』である閣下が現れ、『腐敗した現状を糺すべく人民を集める』とでも吹聴すれば、多くの者がやって来るでしょう。コレは俺の予想ですが、恐らく兵士100人、いや、200人は堅いでしょう。
400人も集まれば、ノルド王国の軍勢400名と同等、……いや、今回の件で抜けた人数を引いて300名ですから、こちらが優勢になります。後は王宮を攻め、王を討つばかりです。
そしてノルド王国を落とし次第、今度はクラム王国を……)」
そこまで語ったところで、ミェーチ将軍が浮かない顔になる。
「(本当に良いのか? お主の本隊であろう)」
「(構いやしませんよ)」
にべもなくそう返し、シェロは悪辣に笑う。
「(隊のヤツらだって、いずれ俺に感謝するでしょう)」
「(どう言う意味だ?)」
「(クラム王国を陥落させれば、シモンは間違い無く更迭されます。本国へ強制送還されるのは確実でしょう。クラム殿下だって、陥落した国に残されるなんてコトは有り得ません。彼女のお父上から呼び戻されるコトは、想像に難くありません。
となると、彼らを本国まで護送する人間が必要でしょう? もう半年近く故郷を離れて仕事してるヤツらにとったら、帰郷する絶好のチャンスってワケです。ソコら辺も織り交ぜて説得したら、みんなコロっと乗っかってきますよ)」
「(うーむ……。何とも悪知恵の働く奴め)」
「(おほめに預かり、光栄です)」
こうしてミェーチ将軍とシェロは意気揚々とクラム王国を訪れ、ノルド王国で仕掛けたように、グリーンプールで喧伝を行った。
「(……であるように、正義を思う心に邦の違いは無いはずである! 憂える者よ、吾輩の元に集え!)」
ミェーチ将軍はノルド王国でやったのと同じようにとうとうと語り、民衆を煽(あお)る。さらにはシェロも、ハンを悪し様に罵りつつ、自分たちに協力すれば帰郷の機会がある可能性も提示し、しきりに勧誘する。
ところが――ノルド王国の時とは打って変わって、どう言うわけか皆、二人を冷ややかな目で眺めている。いや、正確にはシェロ一人に、その視線が向けられていた。
「……え?」
その視線に気付き、シェロはたじろぐ。
「ナイトマン。何でお前がここにいるんだ?」
と、遠征隊の一人が声を掛けられ、シェロは薄ら笑いを浮かべつつ、ぺらぺらと話し始めた。
「ソレはほら、ミェーチ将軍の男気に感動してって言うかさ。いやさ、前のアレあっただろ? 隊長が俺をボコボコにした件。あんなひどいコト許しておけるかって相談に乗ってもらってたらさ、将軍から『一緒に戦わないか』って誘われたんだよ。お前らもさ、いつまでもあんなクズのトコにいないで……」「クズはてめーのことだろうが」「……えっ?」
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