「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第4部
琥珀暁・奸智伝 2
神様たちの話、第200話。
最悪の事態。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
2.
彼らと出会った瞬間、ミェーチ将軍は青ざめた。
「(う……うっ)」
「(どうしたんです? 彼らは一体……?)」
シェロが尋ねるが、ミェーチ将軍は何も答えず、困り果てた表情でシェロと、相手とを交互に見ているばかりである。
「(エリコ・ミェーチ将軍だな?)」
と、相手が威圧的な態度で声を掛けてくる。その瞬間、シェロも今、自分たちが非常にまずい状況に置かれたことを察知した。
(やべっ、帝国兵かコイツら!?)
シェロの予想を裏付けるように、彼らはミェーチ将軍を詰問し始めた。
「(現在、ノルド王国で取り沙汰されている諸問題に貴様が関わっていると聞き、こうして足を運んでやったのだ。
いつまでも間抜けな面を浮かべていないで、何か言ったらどうだ?)」
「(う、……そ、その、それはだな、何から話せば良いか、その)」
しどろもどろに答えつつ、ミェーチ将軍はシェロをチラチラと横目で見てくる。
(え、……助けろって? 今? 俺が? ……勘弁してくれよぉ)
辟易するが、ここで適当にやり過ごさなければ、自分にも面倒が降り掛かってくるのは明白である。
(コイツらに下手なコト言わせて、あの強襲事件が俺たちの嘘だったってバレたら、とんでもないコトになっちまうぜ。何しろアレを『ノルド王が帝国に日和って仕掛けた狂言』って言いふらして正義を騙って、こんだけ仲間集めしたんだからな。
もしバレたりなんかしたら、俺たちがその仲間に殺されちまう)
シェロは仕方無く、口を開く。
「(その諸問題と言うのは、何のことでしょうか)」
「(貴様には聞いていない。下がれ)」
突っぱねられるが、シェロは食い下がる。
「(答えて下さい)」
「(下がれと言っただろう! 貴様の如き僻地の一兵卒が、我々に口を利けると思うのか!?)」
相手が高圧的な態度に出たところで、シェロは打開策を閃く。
「(……みんな!)」
シェロはくるっと振り返り、背後にいた兵士たちに号令をかける。
「(帝国が事実の隠蔽に乗り出したぞ! 今回の件に関わってる証拠だ! 袋叩きにしろ!)」
「(お、……おうッ!)」
シェロに従い、軍団の兵士たちが一斉に、帝国兵に向かって駆け出す。
「(な、……なんだ!? な、何をする貴様ら……)」
反撃する機も与えず、軍団兵たちは帝国兵を囲む。
「(オラぁ!)」
「(なめんなよ!)」
「(死ね、死ねっ、死ねえッ!)」
殺気立ち、帝国兵らに得物を振り下ろす軍団兵を見て、シェロは慌てて止めようとする。
「あっ、ま、待て! 殺すな……」
だが止める間も無く、軍団兵は寄ってたかって、帝国兵たちを嬲り殺しにしてしまった。
「あ、ああ……、なんてコトすんだ……」
「(よ、……よし! こ、これで、……これで、万事、問題無く、……なったので、……あるな、シェロ?)」
「……」
恐る恐る尋ねたミェーチ将軍に、シェロは答えることができなかった。
(問題、大有り、……だ)
この事件を受け、ミェーチ軍団はノルド王国への侵攻を中止し、帝国軍への対策を講じることとなった。
いや、「対策を講じる」とはほとんど言い訳、口実に過ぎず――。
「(どうする、シェロ?)」
「(どうするったって……)」
やってきた帝国兵は――態度こそ高圧的であったとは言え――あくまで調査に来た者たちである。それをろくに応対もせず、一方的に囲んで殺してしまったとあっては、ただでさえ冷酷な帝国軍が許すはずも、ましてやシェロたちの弁解に応じるはずも無い。
このまま放っておけば、やがて帝国軍は事実を把握し、ミェーチ軍団に向けて大量の兵を放ってくるのは明白である。かと言って、辛うじてノルド王国に対抗可能な程度の軍勢しか集まっていない上、参謀役がシェロ一人しかいないようなミェーチ軍団が、帝国軍が動く前に機先を制して襲撃するなどと言う離れ業を成功させられるわけも無い。
稚拙な判断により早々に打つ手が無くなり、シェロも、ミェーチ将軍も、互いに互いを困った目で見つめながら、固まっていることしかできないでいた。
と――二人のところに、リディアが慌てた顔で飛び込んできた。
「(あ、あのっ)」
「(どうした!? もう帝国が……!?)」
強張った顔で尋ねたミェーチ将軍に、リディアはぷるぷると首を横に振り、こう返す。
「(あ、いえ、そうじゃなくて、……えっと、シェロ。あなたに会いたいと言う人が来てます)」
「(俺に?)」
思いもよらない話に、シェロは面食らった。
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彼らと出会った瞬間、ミェーチ将軍は青ざめた。
「(う……うっ)」
「(どうしたんです? 彼らは一体……?)」
シェロが尋ねるが、ミェーチ将軍は何も答えず、困り果てた表情でシェロと、相手とを交互に見ているばかりである。
「(エリコ・ミェーチ将軍だな?)」
と、相手が威圧的な態度で声を掛けてくる。その瞬間、シェロも今、自分たちが非常にまずい状況に置かれたことを察知した。
(やべっ、帝国兵かコイツら!?)
シェロの予想を裏付けるように、彼らはミェーチ将軍を詰問し始めた。
「(現在、ノルド王国で取り沙汰されている諸問題に貴様が関わっていると聞き、こうして足を運んでやったのだ。
いつまでも間抜けな面を浮かべていないで、何か言ったらどうだ?)」
「(う、……そ、その、それはだな、何から話せば良いか、その)」
しどろもどろに答えつつ、ミェーチ将軍はシェロをチラチラと横目で見てくる。
(え、……助けろって? 今? 俺が? ……勘弁してくれよぉ)
辟易するが、ここで適当にやり過ごさなければ、自分にも面倒が降り掛かってくるのは明白である。
(コイツらに下手なコト言わせて、あの強襲事件が俺たちの嘘だったってバレたら、とんでもないコトになっちまうぜ。何しろアレを『ノルド王が帝国に日和って仕掛けた狂言』って言いふらして正義を騙って、こんだけ仲間集めしたんだからな。
もしバレたりなんかしたら、俺たちがその仲間に殺されちまう)
シェロは仕方無く、口を開く。
「(その諸問題と言うのは、何のことでしょうか)」
「(貴様には聞いていない。下がれ)」
突っぱねられるが、シェロは食い下がる。
「(答えて下さい)」
「(下がれと言っただろう! 貴様の如き僻地の一兵卒が、我々に口を利けると思うのか!?)」
相手が高圧的な態度に出たところで、シェロは打開策を閃く。
「(……みんな!)」
シェロはくるっと振り返り、背後にいた兵士たちに号令をかける。
「(帝国が事実の隠蔽に乗り出したぞ! 今回の件に関わってる証拠だ! 袋叩きにしろ!)」
「(お、……おうッ!)」
シェロに従い、軍団の兵士たちが一斉に、帝国兵に向かって駆け出す。
「(な、……なんだ!? な、何をする貴様ら……)」
反撃する機も与えず、軍団兵たちは帝国兵を囲む。
「(オラぁ!)」
「(なめんなよ!)」
「(死ね、死ねっ、死ねえッ!)」
殺気立ち、帝国兵らに得物を振り下ろす軍団兵を見て、シェロは慌てて止めようとする。
「あっ、ま、待て! 殺すな……」
だが止める間も無く、軍団兵は寄ってたかって、帝国兵たちを嬲り殺しにしてしまった。
「あ、ああ……、なんてコトすんだ……」
「(よ、……よし! こ、これで、……これで、万事、問題無く、……なったので、……あるな、シェロ?)」
「……」
恐る恐る尋ねたミェーチ将軍に、シェロは答えることができなかった。
(問題、大有り、……だ)
この事件を受け、ミェーチ軍団はノルド王国への侵攻を中止し、帝国軍への対策を講じることとなった。
いや、「対策を講じる」とはほとんど言い訳、口実に過ぎず――。
「(どうする、シェロ?)」
「(どうするったって……)」
やってきた帝国兵は――態度こそ高圧的であったとは言え――あくまで調査に来た者たちである。それをろくに応対もせず、一方的に囲んで殺してしまったとあっては、ただでさえ冷酷な帝国軍が許すはずも、ましてやシェロたちの弁解に応じるはずも無い。
このまま放っておけば、やがて帝国軍は事実を把握し、ミェーチ軍団に向けて大量の兵を放ってくるのは明白である。かと言って、辛うじてノルド王国に対抗可能な程度の軍勢しか集まっていない上、参謀役がシェロ一人しかいないようなミェーチ軍団が、帝国軍が動く前に機先を制して襲撃するなどと言う離れ業を成功させられるわけも無い。
稚拙な判断により早々に打つ手が無くなり、シェロも、ミェーチ将軍も、互いに互いを困った目で見つめながら、固まっていることしかできないでいた。
と――二人のところに、リディアが慌てた顔で飛び込んできた。
「(あ、あのっ)」
「(どうした!? もう帝国が……!?)」
強張った顔で尋ねたミェーチ将軍に、リディアはぷるぷると首を横に振り、こう返す。
「(あ、いえ、そうじゃなくて、……えっと、シェロ。あなたに会いたいと言う人が来てます)」
「(俺に?)」
思いもよらない話に、シェロは面食らった。
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200話到達。
「琥珀暁」もどんどん話数が伸びてきてますね。
第1部掲載時は(頭が)どうなるかと思いましたが、今の職を得て以降は元通り、
いや、今まで以上に創作意欲がガンガン湧いてきています。
2016年、2017年ともに、1年に1部と言うスローペースでしたが、
今年は2部掲載の上に「DW」まで3編+特別編1編。
(特別編の方は諸事情によりこちらに掲載できませんが)
来年はさらに活躍していきます。かれこれもう10ね
……10年……やんな? いつからだっけ。
10月6日がブログの開設記念日で……記念日?
記念日ッ!?
よりにもよって……10周年の記念日を……2ヶ月も忘れていたとは……。
近日中に何かやります。それ以上過ぎると新年の挨拶になっちゃうので。
200話到達。
「琥珀暁」もどんどん話数が伸びてきてますね。
第1部掲載時は(頭が)どうなるかと思いましたが、今の職を得て以降は元通り、
いや、今まで以上に創作意欲がガンガン湧いてきています。
2016年、2017年ともに、1年に1部と言うスローペースでしたが、
今年は2部掲載の上に「DW」まで3編+特別編1編。
(特別編の方は諸事情によりこちらに掲載できませんが)
来年はさらに活躍していきます。かれこれもう10ね
……10年……やんな? いつからだっけ。
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近日中に何かやります。それ以上過ぎると新年の挨拶になっちゃうので。



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