「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第4部
琥珀暁・奸智伝 4
神様たちの話、第202話。
ころころ号令。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
4.
エリザに徹底的に念を押されたシェロは、大急ぎで軍団の全兵士を集め、周知した。
「(みっ、……皆を混乱させるコトになるが、……現状、その、ノルド王国およびクラム王国は、俺たちと友好関係を結ぶコトになった)」
つい1時間前に、ミェーチ将軍からノルド王国を攻略すると命じられたばかりであり、当然皆は困惑する。
「(……は?)」
「(いや、待てって。なんだそれ?)」
「(さっきと言ってることが違うだろ!?)」
それをどうにかなだめようと、シェロは口から出任せとばかり、言葉をあれこれと並べる。
「(そ、その、えーと、……あっ、そうだ、真犯人! 真犯人が分かった! 先程、クラム王国からエリザ・ゴールドマン女史が我々の元を訪ねられて、えーと、ノルド王国に不信を抱く端緒となったあの事件の、アレだ、詳細が分かったと伝えられた! ソレによれば、やはり事件は帝国の仕業であり、かつ、沿岸部の人間同士に不信感を抱かせて結託しないよう、あの、ノルド王が主犯であると言う偽のうわさを流した、との、コトだ! で、えーと、先生の入念な調査によりその事実が判明したため、だからその、……あ、我々の攻撃目標は、帝国軍! 帝国軍となった! いいか、帝国軍だぞ!)」
まくし立てたシェロに、軍団兵の半分がぽかんとした顔をし、残り半分が胡散臭そうな目を向ける。
「(本当かよ……?)」
「(言うことコロコロ変わるよな、アイツ)」
「(本当にそれ、本当?)」
シェロは冷や汗をダラダラと垂らしながらも、周知を続ける。
「(そう言うワケだから、コレから帝国軍が俺たちのところに攻め込んでくる! あの、ほら、俺たち結託してるからな! そ、ソレにアレだ、さっき帝国兵を殺っちまったし! だからこっちに攻めてくるんだ! だが、さっきエリザ先生と約束して、その、ノルド王国とクラム王国から援軍が来るコトになった! だから彼らを攻撃したりせず、帝国軍のみを相手にするように! 絶対友軍を攻撃するなよ! 絶対だぞ! 分かったか!? 絶対の絶対に絶対だからな!? 以上だッ!)」
言うだけ言って、シェロは皆の前からそそくさと去ってしまった。
「(あいつ、なんかうろたえて無かったか……?)」
「(うんうん、ビクビクしてたねー)」
「(いつものペラペラした薄っぺらいしゃべりじゃなかったな。……マジっぽかった)」
残された皆は口々に、シェロがもたらした情報の真偽を探り合う。
「(だけど変だよなぁ。仮にあいつの話が本当だとしてもさ、なんで今更向こうと仲良くするんだ?)」
「(だよねぇ。アレだけ敵だ敵だって言ってたクセしてさ)」
「(……でも俺、エリザ先生? だっけ、それっぽい人が砦に来たの見たぜ)」
「(エリザ先生って、あの金髪でちょっと赤毛入った、耳がでっかくて尖っててさらさらっとした毛並みの、すんげえ美人だろ?)」
「(あ、僕も見た。狐の女将さん!)」
が、エリザの話が出てきた途端、場の空気が変わる。
「(正直、ナイトマンは信用できないけど、あの女将さんは信用しちゃうなー、俺)」
「(うんうん、分かる分かる)」
「(あの人来た途端にアイツの態度がコロっと変わったし、マジでマジなんじゃないか?)」
「(……かも)」
結局、シェロの話――と言うよりもエリザからの伝言だと言うこと――を信用した軍団兵は、帝国への迎撃態勢を採ることとなった。
「後は先生が言っていた通りに、皆さんに動いてもらえれば、ですね」
砦の守りを固める軍団兵を眼下に見ながら、リディアが心配そうにつぶやく。その隣りにいたシェロも、同じようにうなずく。
「ああ、そうだな。……ってかさ」
一転、シェロは頭を抱え、ため息をつく。
「なんか俺、すげえマヌケなヤツって気がしてきた」
「と言うと?」
「エリザ先生に言われるままって感じがさ、何て言うか、ガキの使いみたいだなって言うか、母親に叱られてる子供って言うか」
「そうかも知れませんね、……クス」
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4.
エリザに徹底的に念を押されたシェロは、大急ぎで軍団の全兵士を集め、周知した。
「(みっ、……皆を混乱させるコトになるが、……現状、その、ノルド王国およびクラム王国は、俺たちと友好関係を結ぶコトになった)」
つい1時間前に、ミェーチ将軍からノルド王国を攻略すると命じられたばかりであり、当然皆は困惑する。
「(……は?)」
「(いや、待てって。なんだそれ?)」
「(さっきと言ってることが違うだろ!?)」
それをどうにかなだめようと、シェロは口から出任せとばかり、言葉をあれこれと並べる。
「(そ、その、えーと、……あっ、そうだ、真犯人! 真犯人が分かった! 先程、クラム王国からエリザ・ゴールドマン女史が我々の元を訪ねられて、えーと、ノルド王国に不信を抱く端緒となったあの事件の、アレだ、詳細が分かったと伝えられた! ソレによれば、やはり事件は帝国の仕業であり、かつ、沿岸部の人間同士に不信感を抱かせて結託しないよう、あの、ノルド王が主犯であると言う偽のうわさを流した、との、コトだ! で、えーと、先生の入念な調査によりその事実が判明したため、だからその、……あ、我々の攻撃目標は、帝国軍! 帝国軍となった! いいか、帝国軍だぞ!)」
まくし立てたシェロに、軍団兵の半分がぽかんとした顔をし、残り半分が胡散臭そうな目を向ける。
「(本当かよ……?)」
「(言うことコロコロ変わるよな、アイツ)」
「(本当にそれ、本当?)」
シェロは冷や汗をダラダラと垂らしながらも、周知を続ける。
「(そう言うワケだから、コレから帝国軍が俺たちのところに攻め込んでくる! あの、ほら、俺たち結託してるからな! そ、ソレにアレだ、さっき帝国兵を殺っちまったし! だからこっちに攻めてくるんだ! だが、さっきエリザ先生と約束して、その、ノルド王国とクラム王国から援軍が来るコトになった! だから彼らを攻撃したりせず、帝国軍のみを相手にするように! 絶対友軍を攻撃するなよ! 絶対だぞ! 分かったか!? 絶対の絶対に絶対だからな!? 以上だッ!)」
言うだけ言って、シェロは皆の前からそそくさと去ってしまった。
「(あいつ、なんかうろたえて無かったか……?)」
「(うんうん、ビクビクしてたねー)」
「(いつものペラペラした薄っぺらいしゃべりじゃなかったな。……マジっぽかった)」
残された皆は口々に、シェロがもたらした情報の真偽を探り合う。
「(だけど変だよなぁ。仮にあいつの話が本当だとしてもさ、なんで今更向こうと仲良くするんだ?)」
「(だよねぇ。アレだけ敵だ敵だって言ってたクセしてさ)」
「(……でも俺、エリザ先生? だっけ、それっぽい人が砦に来たの見たぜ)」
「(エリザ先生って、あの金髪でちょっと赤毛入った、耳がでっかくて尖っててさらさらっとした毛並みの、すんげえ美人だろ?)」
「(あ、僕も見た。狐の女将さん!)」
が、エリザの話が出てきた途端、場の空気が変わる。
「(正直、ナイトマンは信用できないけど、あの女将さんは信用しちゃうなー、俺)」
「(うんうん、分かる分かる)」
「(あの人来た途端にアイツの態度がコロっと変わったし、マジでマジなんじゃないか?)」
「(……かも)」
結局、シェロの話――と言うよりもエリザからの伝言だと言うこと――を信用した軍団兵は、帝国への迎撃態勢を採ることとなった。
「後は先生が言っていた通りに、皆さんに動いてもらえれば、ですね」
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