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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第4部

    琥珀暁・奸智伝 6

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    神様たちの話、第204話。
    エリザの予測。

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    6.
     戦闘後、赤い満月が真上に昇る頃になって、エリザとロウ、そしてマリアの3人が、砦を訪ねてきた。
    「ちゃんとアタシの言い付け守ったみたいやな。おつかれさん」
    「ど、ども」
     シェロはエリザに深々と頭を下げ、それから恐る恐る尋ねた。
    「先生も戦いに参加されてたんですか?」
    「せえへん、せえへん。安全なトコで状況報告聞いとったんや。今回、こっちの戦いで指揮官やっとったからな。
     実際に戦っとったんは後ろのロウくんとマリアちゃんや。いや、ごっつ戦果挙げてくれたんよ。なー?」
    「えへへ……」「へへっ」
     揃って笑顔を見せるロウとマリアを眺めながら、シェロは相槌を打つ。
    「あ、そうなんスか。……ん?」
     と、エリザの言葉が引っかかり、聞き返す。
    「指揮官って? 尉官はこっちにいないんですか?」
    「別の作戦を担当してもろてるからな。もうじき、そっちからの報告が来るやろ」
    「ど、どう言うコトっスか? 別の作戦って……!?」
     初めて聞かされた情報に、シェロは当惑する。
    「簡単なこっちゃ」
     そう言って、エリザはにやあっと、悪辣な笑みを浮かべてきた。
    「アンタを利用した。ソレだけのコトや」



     半月前、どうにかハンに降って湧いた悪評を払拭し、体制の立て直しが進みつつあった頃――。
    「ちょとお願いしたいコトあるねんけどええかな? もうボチボチみんな、ハンくんの言うコト聞いてくれるやろし」
    「なんです?」
    「言うたら、今まで『防戦』やったやん? 今から『攻撃』しよかっちゅう話やねん」
    「攻撃? 一体何をすると?」
     尋ねたハンに、エリザはニヤニヤ笑いながら説明し始めた。
    「ま、結論言う前にな、いっぺんコレまでに起こったコト、整理しとこか。
     まず第一にな、帝国兵さんらがウチらの方に攻め込もうとしてはったトコからや。ま、この出来事自体は今更、特に語るコトもあらへんのやけど、問題になるんは『数』や」
    「数と言うと?」
     何を指すのか分からず、ハンは首をかしげる。
    「兵力や。あん時、相手さんは何人くらいやった?」
    「150名程度だったとの報告がありましたね」
    「せやね。で、コレが敵さん……、こっちに駐屯してはる帝国軍の全軍やと思うか?」
    「それは有り得ないでしょう。仮に全軍を突撃させておいて、それを俺たちが撃破してしまったら、帝国の打つ手が無くなりますからね。大多数を温存させるでしょう」
     ハンの回答にうんうんとうなずきつつ、エリザは話を続ける。
    「そう、駐屯してはる基地の方にはまだ兵隊さんがおるはずや。で、ハンくん。この基地には何人くらいおると思う?」
     エリザの問いに、ハンは思案しつつ答える。
    「そうですね……、こちらに向かわせた数の3倍か、4倍と言うところでしょうか」
    「大体そんなトコやろけど、もいっこ、判断材料があるんよ」
    「判断材料?」
    「ハンくんらが勝ってからずっと、向こうさん何もせえへんかったやろ? 何でやと思う?」
    「戦意を喪失したか、あるいは勝ち目がかなり低いと踏み、警戒したんでしょう」
    「多分後者やね。前者としたら、アレからもう何ヶ月も経っとんのに未だにヘコんどんのかいっちゅう話になるし、兵士やっちゅう人間が、ソコまで臆病者だらけのワケが無いからな。
     後者の可能性が高いとしたら、何を警戒しとんのやろな」
    「俺たちの魔術、いや、相手にとっては『良く分からない戦闘技術』にでしょう」
    「ソレもあるやろな。でももっと目に見えるもんがあるやないの。つまりコレも『数』の問題や」
    「兵力、……そうか、遠征隊600名とクラム王国軍400名、この兵力の合計が、帝国軍よりはるかに多い、と言うことですね?」
     答えたハンに、エリザは満足げにうなずく。
    「そう言うコトや。ソレもうかつに手出しでけへんくらいの差、多分2倍くらいになっとったんやろ」
    「2倍となると……」
    「相手さん、おおよそ500っちゅうトコやろな。このくらいやったらクラム王国の前身、ユーグ王国におった兵力よりも、ミェーチ将軍が引き抜く前のノルド王国の兵力よりも多いし、帝国が圧力かけたろと思えば十分な数や。万が一反乱が起こって全面対決せなアカンとなったとしても、500対400で帝国が全滅する危険は少ないやろしな。
     ところがアタシらがブイブイ言わしてからは500対1000や。こらまともに当たったら全滅も有り得る。その上ノルド王国と友好条約まで結んでしもて、もし両方相手する羽目になったら、ノルド王国の400とも戦わなアカンくなる。500対1400なんてもう、負け戦が目に見えとるからな。
     せやから、今の今まで動くに動けへんかったんや」
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