「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第4部
琥珀暁・平岸伝 1
神様たちの話、第206話。
シェロの措置。
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1.
帝国の沿岸方面軍が壊滅したことで、事実上、沿岸部全域が帝国から解放され、クラム王国とノルド王国の実効支配地域となった。
「以上のことから、沿岸部における帝国の影響および脅威は無くなったと見ていいでしょう。今後はノルド王国以北、西山間部との交流を標榜に入れ、活動を行う予定です」
ハンとエリザはその経緯を、「頭巾」でゼロに報告していた。
《ありがとう。状況は分かった。でも非常に残念だね》
対するゼロの声には、少なからず落胆した色が混じっている。
《セザの息子が、まさか反乱を企てるだなんて。正直、信じられないと言う気持ちで一杯だよ》
「申し訳ありません。私の監督不行き届きです」
謝るハンに、ゼロは《いや》と返す。
《私にしても、父親の犠牲と貢献を、必要以上にシェロに重大視させてしまったんだろう。それがきっと、彼にとっては重荷だったはずだ。
彼の反乱は、私にも責任がある。不名誉除隊にしたと言ったが、彼がもし管轄内に踏み込んだとしても、処分しないようにしてくれないだろうか。そこまでしてしまっては、いくら何でも彼が不憫すぎる》
「しかし陛下、原則として不名誉除隊処分となった者は、厳罰に処すべきであると……」
《いいんだ。彼に関しては、セザが私に貢献してくれた分だけ処罰を軽くする、としておいてくれ。これは――あまりこう言う言い方は好きじゃないけど――私の命令だ》
「承知しました。シェロ・ナイトマンに関しては、そのように処置いたします」
《うん、よろしく。……しかし》
一瞬間を置いて、ゼロの憂鬱そうな声が続く。
《最初は出来る限り友好的に、と思っていたんだけど、帝国軍を撃破しちゃったかー……》
「しゃあないですな」
その憂う声に、エリザが答える。
「アタシらとしては最大限、親しくしようと努めとりますし、実際、アタシの管轄――商売関係は良好な関係をあっちこっちで築いとります。その方面においては、十二分に友好関係を結べていると言うてええでしょう。
国家間の友好関係っちゅう話でも、国民全員の支持を得た上でクラム王国が建ち、ノルド王国とも友好条約を締結したワケですから、こちらの面でも、非友好的やっちゅうような評価をされる謂れはありまへんわ」
《うん……うん、まあ、そうだね。それは確かだろう。どことの関係が悪くなったかと言えば、最初から強い敵対姿勢を見せていた帝国だけだものね。確かに君たちは、十分によくやってくれている。ありがとう。本当に、ありがたく思っている。今後も引き続き、現地での活動を行ってくれ。
……っと、それで、ハン、エリザ。確認したいことがあるんだけど》
「何でしょうか?」
《現時点で、一度故郷に帰りたいと言うような人間はいるかな》
「いえ、特には……」「チラホラいてますな」
否定しかけたハンをさえぎり、エリザが答える。
「そらまあ、そう言う話は隊長や副隊長には、面と向かってよお言えんっちゅうところはありますからな。その点、アタシは直接聞かんでも、間接的に聞く方法はいくらでもありますさかい」
《う、うん。そう言う点、とても良く助かるよ。……えっと、そうか、うん、やっぱりいるよね、半年以上も滞在してると。じゃあ、希望する人たちに順次、長期休暇を与えてやって欲しい。無論、一時帰還の許可も与える。
あと、ハン。君も多少は休むようにね。クーから聞いたけど、半年以上、一度も休み無しって言うのは、ちょっと、どうかと思うんだ》
「色々と忙しいものですから」
《忙しいからこそ、定期的に休みは取るようにね。君が倒れたら、遠征隊全員が困るんだから》
「留意しておきます」
《……エリザ。ハンの休日に関しては、君に裁量を任せるよ。君の方から、いついつが休みと決めておいてくれ。多分、現地にいる君から命令しないと、彼、休みそうに無いし》
「そうしますわ」
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シェロの措置。
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1.
帝国の沿岸方面軍が壊滅したことで、事実上、沿岸部全域が帝国から解放され、クラム王国とノルド王国の実効支配地域となった。
「以上のことから、沿岸部における帝国の影響および脅威は無くなったと見ていいでしょう。今後はノルド王国以北、西山間部との交流を標榜に入れ、活動を行う予定です」
ハンとエリザはその経緯を、「頭巾」でゼロに報告していた。
《ありがとう。状況は分かった。でも非常に残念だね》
対するゼロの声には、少なからず落胆した色が混じっている。
《セザの息子が、まさか反乱を企てるだなんて。正直、信じられないと言う気持ちで一杯だよ》
「申し訳ありません。私の監督不行き届きです」
謝るハンに、ゼロは《いや》と返す。
《私にしても、父親の犠牲と貢献を、必要以上にシェロに重大視させてしまったんだろう。それがきっと、彼にとっては重荷だったはずだ。
彼の反乱は、私にも責任がある。不名誉除隊にしたと言ったが、彼がもし管轄内に踏み込んだとしても、処分しないようにしてくれないだろうか。そこまでしてしまっては、いくら何でも彼が不憫すぎる》
「しかし陛下、原則として不名誉除隊処分となった者は、厳罰に処すべきであると……」
《いいんだ。彼に関しては、セザが私に貢献してくれた分だけ処罰を軽くする、としておいてくれ。これは――あまりこう言う言い方は好きじゃないけど――私の命令だ》
「承知しました。シェロ・ナイトマンに関しては、そのように処置いたします」
《うん、よろしく。……しかし》
一瞬間を置いて、ゼロの憂鬱そうな声が続く。
《最初は出来る限り友好的に、と思っていたんだけど、帝国軍を撃破しちゃったかー……》
「しゃあないですな」
その憂う声に、エリザが答える。
「アタシらとしては最大限、親しくしようと努めとりますし、実際、アタシの管轄――商売関係は良好な関係をあっちこっちで築いとります。その方面においては、十二分に友好関係を結べていると言うてええでしょう。
国家間の友好関係っちゅう話でも、国民全員の支持を得た上でクラム王国が建ち、ノルド王国とも友好条約を締結したワケですから、こちらの面でも、非友好的やっちゅうような評価をされる謂れはありまへんわ」
《うん……うん、まあ、そうだね。それは確かだろう。どことの関係が悪くなったかと言えば、最初から強い敵対姿勢を見せていた帝国だけだものね。確かに君たちは、十分によくやってくれている。ありがとう。本当に、ありがたく思っている。今後も引き続き、現地での活動を行ってくれ。
……っと、それで、ハン、エリザ。確認したいことがあるんだけど》
「何でしょうか?」
《現時点で、一度故郷に帰りたいと言うような人間はいるかな》
「いえ、特には……」「チラホラいてますな」
否定しかけたハンをさえぎり、エリザが答える。
「そらまあ、そう言う話は隊長や副隊長には、面と向かってよお言えんっちゅうところはありますからな。その点、アタシは直接聞かんでも、間接的に聞く方法はいくらでもありますさかい」
《う、うん。そう言う点、とても良く助かるよ。……えっと、そうか、うん、やっぱりいるよね、半年以上も滞在してると。じゃあ、希望する人たちに順次、長期休暇を与えてやって欲しい。無論、一時帰還の許可も与える。
あと、ハン。君も多少は休むようにね。クーから聞いたけど、半年以上、一度も休み無しって言うのは、ちょっと、どうかと思うんだ》
「色々と忙しいものですから」
《忙しいからこそ、定期的に休みは取るようにね。君が倒れたら、遠征隊全員が困るんだから》
「留意しておきます」
《……エリザ。ハンの休日に関しては、君に裁量を任せるよ。君の方から、いついつが休みと決めておいてくれ。多分、現地にいる君から命令しないと、彼、休みそうに無いし》
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